403話「ついに地上へ帰還……!」
四首領エレサがジュウピンタ王国へ降りてきて、元凶である光闘神ソロモォーンを難なく撃破してしまった。
そして同時にゾンビになっていた人々は糸が切れた人形のように、ただの死骸として転がる。
各地の地底境域界で、その現象が確認された。
プレートスライドで進み続ける浮船で、オレはヤマミと怪訝な顔をしていた。
「ジュウピンタ王国へ向かう途中の小国で、なんかゾンビが横たわっていたんだが……?」
「マケケマ国ね。とりあえずワクチンを撒いて浄化しておいたけど」
「マジンガやフクダリウスに連絡してみたけど、同じ状況になっててビックリしてたみたいだし、一体誰が……??」
三組に分かれて各国を回っているので、情報を共有して確認していた。
最初は熱心な信者を装ったゾンビが襲ってきてたが、途中から死屍累々と動かずに横たわってしまってた。
オレも誰もボスをやったわけじゃないので不思議に思った。
「そろそろ着くわよ」
プレートスライドが終わり、地底境域界が視界に広がった。
あちこちピラミッドや柱みたいなものが建つ。
そして、中心に大きく広がる王国が見える。
「……ジュウピンタ王国」
「うん」
浮船を港に寄せて、下船した。
不気味に静まり返っていて人はおろか影さえも見当たらない。完全な無人だ。
他に浮船がたくさん並んでいるが、誰もいない。
さっきまでの国にはゾンビが大量に横たわっていたのに、ここではただの一体すら見かけない。
「ゾンビの死骸なくなってる……??」
「え? 誰かが片付けちゃったのー??」
リョーコは戸惑いながらもキョロキョロする。
「ホントは賑やかな国だったと思うけど、やっぱ全部ゾンビだったのかな?」
「にゃあ」
マシュとニーアンも戸惑いながら見渡していた。
オレはハッと気配を感じ取った。思わず駆け出して都市へ踏み込む。後からヤマミとリョーコたちが追いかけてきた。
「一体何が……?」
「あ!」
なんと噴水がある広い公園で金髪ロングの白いローブを纏う大女が立っていて、こちらへ振り向いた。
「よ、四首領……エレサ!」
「遅かったわね。随分待ったわよ」
冷淡そうな笑みを浮かべてきたぞ。
四メートルもの身長だからってのもあるが、威圧感で割増にデカく見える。
「犯人はソロモォーン王がナノマギア・オリジンとやらで分不相応な野望を持っていたわ。もうやっつけたけどね」
オレは息を呑んだ。
ソロモォーン王がどんな人かも見た事もないが、恐らく粉々に消し飛んだんだろう。
やはり四首領は圧倒的すぎる。
初めて見たマシュとニーアンは「あわわ……」とビビる。
エガラは、ナッセが彼女と知り合いだというのもドキドキしてきた。
「こちらも状況を教えるけど、そちらも教えてくれない? 貴方がたが私たちに協力を要請してたでしょう?」
「あ、ああ……。分かったぞ」
オレはここに来てから起きた事を事細かに説明した。
最初はプラネンタ王国へ降りて、地闘神グランドルフと戦ってナノマギア・オリジンを受け継いだ。
その後、宇宙帝Zからワクチンを貰う。
ヒーローたちと交戦中の水闘神へ挑もうとしたら、急にスペースが宇闘神を名乗ってきて殺されかけたがワクチンを取り込んで自滅した。
その瞬間からワクチンが進化してナノマギア・ワクチンになった。
残るは闇闘神、雷闘神、風闘神だけになったが、ワクチンのおかげで難なく撃破できた。
「ナノマギア・オリジンは永遠の命を騙る致命的な欠陥システムだから、オレたちはそれを全て消したいんだ」
「なるほどね……。亡霊システムとは的を射ている」
「火星にいる火闘神も五領主もナノマギア・オリジンの亡霊かもしんねぇ」
「そこで、あなたたち四首領の力を借りて火星を制圧したいわ」
オレとヤマミの話を聞いてエレサは相づちを打つ。
「ソロモォーン王が地上を攻めようと口にしてたから、ナノマギア・オリジンが地上にばらまかれるのはごめん被りたいわね」
「だよな……。地上でもゾンビだらけにされると嫌だし」
「でもエレサさんが宗教移民団を殲滅させてくれたおかげね」
オレは隊長として歩みだす。
「エレサさん頼みます! 火星へ攻め込む為に力を貸してくれ!」
エレサは冷淡にオレを見据える。
しばし不穏そうな気配が漂う。断られるかもしれないと、ほおに一筋の汗が伝う。
仮に四首領が何人か断ってくるのも覚悟してる。
「私にリターンはないわ」
「しかしハイリスクが地球に及ぶ。それを避けたい」
オレとエレサは互いに見据え合う。緊迫して時間が止まったかのように感じる。
それでも毅然と意志を貫き通す心構えだ。
例え、断られてもオレたちは火星へ向かう。もはや決定事項……。
「いい眼しているわね。例え私が断ったとしても、火星へ行くんでしょう?」
「ああ、もちろんだ」
「突っぱねても私に得はない。まぁ答えは決まっているんでしょうけどね、四首領全員で火星へ向かうのはとっくに決定事項ね」
「え?」
実は試されていた……?
「よ、四首領が全員……!?」
ヤマミもあんぐりする。
日本の総統ヤミザキ、アメリカの皇帝ヘイン、ローマの教皇エレサ、インドの英雄ダウートが力を貸してくれるのだ。
あっちでとっくに話を済ませてて、決定は下されていた。
「フッ! いじけたダウートがタダをこねてたぐらいだったかね」
「ヘインさんは……?」
「案外、あっさりしたものよ。面白くなりそうだと笑っていたわ。ダウートは終始不機嫌そうだったけどね」
オレは乾いた笑いをする。はは……。
去年、アクト絡みでドンパチしてたもんなぁ。さっきまで敵だったもん。
とはいえアクトやコンドリオンとは関係ないオレに協力するってのもおかしいぐらいだもんな。
「とりあえずあなたたちに知らせたわ。後は火星へ向かう準備だけね。出発の時刻と場所は追って知らせる」
「「エレサさん、ありがとうございます」」
オレとヤマミはお辞儀し、気をよくしたエレサは踵を返していく。
この後、ジュウピンタ王国にワクチンを撒き散らして浄化作業を行った。これで自律行動するナノマギア・オリジンが復活の機会を待つ事はなくなる。
従って光闘神ソロモォーン王や他の闘士のデータも削除されたろう。
数時間後にマジンガ部隊とフクダリウス部隊が下船してきて、合流したぞ。
「おお!! そういう事があったか!?」
「なるほど……。それは頼もしいな」
「ああ。これでいつでも火星へ行けるぞ」
なんやかんやあってプラネンタ王国へ久しぶりに帰還し、色々報告した。
「さすがギョヌ将軍が連れてきただけの事はある。よくぞ地底境域界の平和を取り戻してくれた!」
「はい。後は火星です」
ミズミール女王は上機嫌そうだ。
ただ、世界の地底境域界では大半がゾンビになっていた為に人口は半分以下に激減しているのは痛い。
さすがにナノマギア・ワクチンでも生き返らすのはムリなのだ。
それでも致命的な亡霊システムを排除できただけでも大きい。
「ちょっと早ければ、もっと救えたかもしれませんが……」
「気に病むな。我々まで虐殺されたりゾンビにされたりしないだけでもマシじゃろう」
「そうね……」
グランドルフの大虐殺か、ソロモォーンの支配か、いずれにせよ避けられない大人災だったと言える。
オレたちはプレートスライドで地上へと上昇していった。
ガコン、とマンホールのフタが浮いてようやく地上へ足をつけた。見上げれば夜空が広がっている。
久しぶりの星々が懐かしく思える。
そしてオレはヤマミと一緒に気を引き締めた。
「……いよいよだな」
「火星!」
くっきり大きく映える赤き火星が夜空に荘厳としていた。
月よりも大きくなって見える事から、徐々に侵略の手が迫ってきているのをヒシヒシと感じたぞ。
ズズ……!




