395話「永遠に続く亡霊の時代に幕を!」
シャーブルは疲れたように「はぁ……」とため息をついた。
「……手続きは終わりました。これで君たちは自由です」
「シャーブルさん、手間取らせて済まねぇ」
「いえいえ」
一気呵成と三闘神を一緒くたに倒した後、二日くらい尋問とか検査とかそういうのやってた。
思考を見透かすシャーブルのおかげで異例の早さで解放されたのは助かる。
手配された大きなホテルで、オレは闘神へ向かい合う。
闇闘神シュージン、雷闘神ラッピスと風闘神ラズーリ。そして地闘神グランドルフと水闘神ゴリアテ。
彼らはオレのナノマギア・ワクチンにより下僕となったもの。
「闇闘神のおかげで新しい情報を聞けた」
「うん」
「まさか、散ったナノマギア・オリジンが自律行動して長い時間かけて元通りに復活するなんて聞いてねぇ……」
マジンガたちも集合してきて、そんな話をしていた。
グランドルフ討伐後にナノマギア・オリジンを受け継いだオレに廃棄権があるのは都合が良すぎると思った。
欠陥を抱えた性能やデメリットを知って捨てたくなるのは心理的に普通だろう。
「もし捨てていたらヤバかったな。結果論だがナッセの判断は正しかったというワケか」
「そうね……」
マジンガの言う通りだった……。ヤマミも頷く。
確かに所有者は自由に捨てる事はできる。しかしそれこそ罠だった。
自分は無事に済むけど、長い時間をかけて横暴だった頃の地闘神グランドルフが復活し、更に言えばオレの死後にナッセが複製されて光闘神として活動を始めていただろう。
なにしろナノマギア・オリジンには所有者の遺伝子データが記録されるのだからな。
「ミズミール女王は捨てよ、とか言ってたけど断って良かった……」
「ホントにそうね」
ただ単にグランドルフを無碍に殺したくなかっただけだったが、まさかのセーフ。
「ってか、ワタシが寝ている間、なーに勝手に解決しているのですかッ!?」
宇宙帝Zはプンスカプンと激おこのようだぞ。
オレたちはジト目で呆れるしかない。
それもそのはず、彼女がず────っと爆睡してて起きる頃にはとっくに終わっていたという。
「ってかさー、闇闘神はなすすべがないから封印したって事でしょー?」
「うん。当時はどうしようもなくてね……」
「シュージン……!」
リョーコにも肯定して頷くシュージン。ふとマシュと目が合う。
「また会えた……けど…………」
「うん。残念ながら僕は四万年前に死んでいる亡霊なんだよ」
「そんなのって……」
恋心を抱いていたっぽくてマシュは項垂れる。
「でも、こうして希望のナッセに出会えたのは喜ばしい限りだ。ワクチンによってナノマギア・オリジンに記憶されたデータは除外された。これで本当に死ねるんだ」
「そうだよね……。永遠にずっとそのままは酷だもんね」
マシュは諦めたのか、和んだ笑みを見せてきた。
シュージンの言う通り、ワクチンを注入されて復活した場合はナノマギア・オリジンにとっては廃棄すべきデータ扱いとなる。
別のところで復活させたとしても、ワクチンまで再現される仕組みのようだ。どういう理屈か分からんが、対ナノマギア・オリジンとして有効打過ぎる。
故に属性関係なく共通化されている記憶媒体から遺伝子データが除外されたらしい。
「ってか宇宙帝Zのワクチンすげぇ強いのな……」
「幾千年も研究され尽くしたから当然なのです! そうそう簡単に攻略されてたまるかです!」
へっへーん、と胸を張る宇宙帝Z。
さっきまで激おこだったのに現金なやつであるぞ。
自分で作ったっけ……?
ともかくナノマギア・オリジンでさえも攻略できぬ天敵のワクチン。これこそが最先端なのかもしれない。
そういった意味では宇宙帝Zは救世主ともいえるか。
「……ナノマギア・オリジンに侵入して内部から食い潰すワクチンだったのが、オレのナノマギア・オリジンによって新たな形態になったせいかもな」
「じゃあ、宇宙帝Zのワクチンだけではムリだったのね……」
「ど、ど、ど、どーいうことですかああああっ!!?」
グランドルフが「ハハハッ」と笑いながら説明を始める。こいつナノマギアの代弁だしな。
ナッセの命令でナノマギア・オリジンにワクチンを取り込ませている内に、徐々に変化をもたらしていた。
宇闘神のバカが一気に大半を吸い寄せたおかげで、新しく更新しやすくなった。
ナノマギア・オリジンの記憶媒体をそのままにワクチンへ変質してしまったので、共通化のデータにもワクチンのデータも混ぜてきたのだ。
我々闘神はワクチンの化身になったようなもので、一から復活させてもワクチンの性質も一緒に再現される事になる。
だからナノマギア・オリジンとしてはたまったものではない。
「──って事で、地闘神の我を含めて水闘神ゴリアテ、闇闘神シュージン、雷闘神ラッピス、風闘神ラズーリはワクチンの化身となり二度とナノマギア・オリジンによって復活ができなくなった。ようやく“永遠の亡霊”が終われるのだ」
「うん。そうだね……。この新時代には感謝したいね」
「俺だって亡霊なんかまっぴらだからな」
「あたしも」
ラッピスとラズーリの事情も分かってる。
元々、永遠の命が欲しいワケではなくて、両親を殺した火闘神マルスへ復讐したいが為にナノマギア・オリジンを取り込んだのだ。
闇闘神も元々は火闘神マルスへ反逆する意志でやってるんだよな。
「ってか、ここの地底境域界にいた闘神全員が仲間になるとは思ってなかったぞ……」
オレはガックリ肩を落とした。
するとシュージンが肩に手を置いてくれた。
「君のおかげだよ。これで亡霊の時代に幕を下ろせるんだ……」
「分かった。望み通り終わらせてやる」
「うん」
シュージンは微笑んだ。
地闘神グランドルフと戦って分かる不死身の闘神のヤバさ。
そして忌むべき欠陥システムによる亡霊化。
「なんだか救世主を横取りされた感じで煮え切らねーのですっ!!」
「そうは言うなよ。ワクチン入れてくれなかったらオレも詰んでたところだしさ」
「むー……」
不貞腐れる宇宙帝Zことファルスタ姫。
「そうね。ナッセが死後に光闘神としてナッセそっくりの亡霊が出てくるのは勘弁したいもの」
フクダリウスは汗を垂らしてナノマギア・オリジンを改めて恐ろしく思った。
極微細のナノマギアは天文学的な数に増殖を繰り返して、データを共有し、いくらでも永遠に闘神を再現し続ける。
体内から排出されても、それらは自律行動を起こして機を窺っているのだ。
まるでウイルスとしか言えない……。
「むう……、ナッセがいなければ闘神をやっつけてもキリがないところだったのか……」
「それヤバすぎッ!!」
エレナも首を振ってイヤーンしてる。
確かに木っ端微塵にすれば倒せるレベルじゃねーな。一時的に収まるだけで、長い時間かければ復活するんだから厄介この上にない。
あの時、普通に地闘神グランドルフを倒したとしても、放っておけばまた復活して大虐殺が繰り返される。
倒したと思ってオレたちが引き上げてただろうから、後でプラネンタ王国が虐殺されるのは目に見えている。
寧ろナノマギア・オリジンを注入されて良かったとも言えるか。
そんでワクチンを混ぜてこの現状に至った。
「シュージンの封印のおかげっていうか」
「うん」
そうと決まれば……火星へ攻めるのみだぞ。
オレは気を引き締めた。
「ちょっと待って! 他の地底境域界の国へ回りましょう!」
「えっ!? これから火星へ行こうと思ってたが……??」
「まだ早い!」
ヤマミがオレの裾を引っ張って言い出してきて戸惑う。
「宇宙帝Zからもらったワクチン完成したでしょ? まだ何も知らない国もあるんだろうから、知らせて回らなきゃね。火星攻略はその後で!」
ハッとした。
まだ闘神をどうしようもない大人災と捉えたままの国もあるだろう。
オレのナノマギア・ワクチンによってそれらは覆される。ネアンデル人にとっても希望なのだ。
宇宙帝Zはジト目で「あげたわけじゃねーのです……」とブツクサ言ってるが無視。
「そうだな。よし、次の国へ向かおう!! 安心させる為に!」
オレたちは新たな道を定めて、進み始めた。
ちなみにアフロとジャマはキレン総帥とキシリア女王の後釜として据えられ、シーコが大佐になったぞ。
王宮の王座にアフロが納得いかない顔で鎮座していた。
そばでジャマが佇む。
「フッ、アフロ総帥か……。似合っているぞ」
「敢えて言おう! 俺は総帥など望んでいないと! なぜなんだっ!?」
「坊やだからさ……」
「歯ぁ食いしばれっ!! そんな大人修正してやる!!」
「それ違う人のセリh」
キザったらしいジャマにアフロが飛びかかってケンカに発展。ドッタンバッタン!
シーコ大佐は呆れて踵を返して去っていく……。
「付き合ってられんわ……!」




