392話「テンペストドラゴンGの猛威!!」
立ち込める暗雲に稲光がバチバチッとあちこち煌き、稲妻が迸り、凄まじい振動を伴って烈風が吹き荒れていく。
その中から巨大な長い身を蛇行させて蠢く影。ズズズ……!
誰もがその威圧感に戦慄を感じて萎縮しそうになる。
「なっ、なんだと……!!?」
「これは四首領クラスの……威圧ッ!!」
マジンガもフクダリウスも顔を青くするほどで、誰もが絶望に覆われていく。
ついに天空より巨大な龍が威圧感漲らせて降臨してきたぞ。
「グワオオオオオオオオオオオオ!!!!」
その凄まじい咆哮で全てが震撼したぞ。ビリビリッ!!
「見たか!! これが我らの切り札!!!」
「我ら二人で特殊召喚が可能なアーティファクト・テンペストドラゴンGよ!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!
雷闘神ラッピスと風闘神ラズーリに余裕が戻り、誇らしげに笑む。
「こうなったら、オレも行くしかねぇッ!!」
「ええ! 予知夢のようになっちゃう!」
オレとヤマミはボウッと妖精王化して、普通に出入り口へ向かおうとする。
すると《待てッ!!》と通信が飛んできた。思わず足を止める。
「マジンガ!?」
《心配するな! ここは任せておけ!!》
《……こちらも同様だ。おまえはそこで機会を覗え!》
「フクダリウスも!? なんとかなる算段があるって言うの?」
ヤマミは切羽詰って落ち着かない。
ここで仲間たちが全滅したら、自分たちが生き残っても仕方がない。
だが二人の隊長であるマジンガとフクダリウスは覚悟を決めた顔で、吹きすさぶ烈風に踏ん張っている。
目の前には雷闘神ラッピスと風闘神ラズーリ、そして脅威のテンペスト天空龍が巨大な長い身をくねらしている。
こうなってしまってはグランドルフの予知夢と同じような結末が容易に想像できる。
「本物の四首領であったら、まず勝ち目はない!」
「うむ! 直に見て分かった事がある」
耐えない地響きと通り抜けていく烈風。
それでもマジンガとフクダリウスは鋭い視線でテンペスト天空龍へ仁王立ちしている。
《どういう事だぞ!? 説明してくれ!》
ナッセの焦りが伝わる。
「こちらにはおまえの特攻ワクチンがある。それに……」
「グランドルフ殿から話を聞いた。あれはパワーのみを突き詰めたアーティファクト。実戦経験を積んだ歴戦じゃない。威力値が一〇〇万オーバーでも四首領には及ばんッ!」
ナノマギア・オリジンによって生成されるアーティファクトの自律行動ロボットみたいなものといっていい。
ラッピスとラズーリの意思に従って殺戮を行う兵器。
それにより多くの人々の命を散らし、数多の国を滅ぼしてきた。
「フハハハハハハハッ!! さすがは四万年後の戦士!! ナッセとその仲間はそれに恐れる事なく勇猛に挑むか!!」
グランドルフは満足気だ。
ジャオウも悠然と歩みを止めない。
「フン! 予備知識がなければ絶望的な状況だったんだろうがな……」
「こちらはもうナノマギア・オリジンを熟知しているし! いまやデカブツでしかないっしょ」
マイシも毅然とした面構えで宙に浮いている。
思った以上にビビらず立ち向かおうとしている彼らに、ラッピスとラズーリは怪訝な顔になっていく。
大抵の場合は逃げ惑う事がほとんどで、例え立ち向かうとしても一瞬にして絶望に染まる。
四万年前はそんな反応ばかりで飽きるほど見てきた。
「……火闘神マルスども以外に、こんな奴らが……!?」
「いいえ! 思い知らせましょう! これまでのように絶望に染まる烏合の衆になるだけよ!」
「ああ! ならば、殲滅あるのみッ!!」
「そして、今度は闇闘神の番になるのよ! 震えて待ってなさい!」
キッと闇闘神シュージンへ一瞥し、最初の獲物としてマジンガたちへ向き合い、手を下した。
「やれ!! こいつらを完膚なきまで叩き潰せッ!!」
「もはや滅びしか運命がないって事を悟る事ね! その時はもう終わってるけど!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ラッピスとラズーリに応え、テンペスト天空龍は獰猛な咆哮を上げた。
ビリビリと周囲に凄まじい震撼をもたらし、恐怖を植え付けんとするが、マジンガとフクダリウスはドンと地面に埋めるほど一歩踏みしめた。
「では、遠慮なく行かせてもらうぞッ!!!」
「うむ!!」
戦意を昂ぶらせて、マジンガは大剣をかざして幾重もの三日月を密集させていく。
カッと眼光を漲らせて大剣を振り下ろした。
「サウザンド・エターナルプラズマッ!!」
幾千もの三日月の嵐が超高速で数多の軌跡を交錯させて、テンペスト天空龍を完膚なきまで切り刻んでいく。
数百数千もの剣閃を受けてさえテンペスト天空龍は掠り傷しかならない。
「さぁ、フクダリウス殿! 遠慮なく行けッ!!」
「おお!! むうんっ!! フクダリウス・サイクロンッ!!!」
ビュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ────────ッッ!!!
フクダリウスがスピン回転する事で戦斧を振り回して、台風レベルの大渦でテンペスト天空龍を包んでいく。
若干、テンペスト天空龍が「グゥオオ……」と呻いてたじろいでいる。
そのまま大渦に乗って上昇したフクダリウスとエレナとスミレがテンペスト天空龍にガッキィインと組み付いた。
巨大な首をフクダリウスが極め、エレナのヒールキックが頭上へ極め、スミレが両翼を縛るように極め、大渦に従うままに急降下────!
「ムーンサルト・ツイスター・トリプルドッキング────ッ!!!」
エレナの描いた巨大な三日月が頭上を押し、フクダリウスが首を絞めたまま地面へ向けるように固定し、スミレが両翼で逃れられないように両腕でロックし、キリモミ回転しながら大地へ叩きつけたァ────ッ!!!
ズガガガァンッ!!!!
スリープラトンの大技が炸裂し、テンペスト天空龍は大地に頭から叩きつけられて大規模な噴火レベルの土砂を巻き上げた。
大地が大きく揺らぎ、衝撃波の津波が波紋状に広がっていく。
そして飛び退いたフクダリウスとエレナとスミレが弧を描きながら着地。
「だが、そんなもの効くかッ!!!」
「あなたたちがいくら無駄に抵抗しようとも、決して撃破できないのよッ!!」
もうもうと立ち込める煙幕を一気に吹き飛ばし、烈風が吹き荒れて巨体が姿を現した。
テンペスト天空龍は一切の苦痛など感じず怒りを漲らせた形相をあらわにした。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……ッ!!!」
それでもマジンガとフクダリウスは動揺するどころか、不気味に冷静だ。
エレナもスミレも澄ました顔で身構えている。
さっきのスリープラトンさえ通用しなかったのに、それに焦る事も驚く事もしない。
そんな面々に、ラッピスとラズーリは不審を抱いた。
「ほう、強がっているつもりか?」
「フフッ、バカね……。見栄を張って死にたいのなら、望み通りにしてあげる」
「「いけっ!!!」」
再び手をかざして攻撃宣言する。
テンペスト天空龍は「グオオオオオ!!!」と高らかに吠えた。上空に立ち込める暗雲から凄まじい稲妻の嵐が降り注いだ。
絶え間のない稲妻により、大地を抉り、森林を薙ぎ払い、あちこちで噴火のような飛沫が噴き上げられた。
容赦のない大規模な攻撃で大地は煙幕に包まれた。シュウウウ……!!
「フッ! 終わったな……!」
「バカな奴らよね」
煙幕が晴れれば、死屍累々と転がっていると想像できる。
ラッピスとラズーリは悪辣に笑んでいく。
「へぇ。すごいな……」
闇闘神シュージンは感嘆をもらした。




