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381話「火星を支配する火闘神勢力の動き!」

 未だ沈黙を保つ火星……。

 プレートスライド理論か、地球からは月のように大きく見えている。

 赤く錆び付いたような惑星で不気味に静かだ。ズズ……!


《……宇闘神(ユーニバゼル)はやられたようだな》


 その火星に建てられた神々しい宝石をちりばめた王宮。

 地底境域界(サブタレニアン)のよりも豪勢で傲慢さを表すかのように聳えていた。

 ──その中の広間で何体か黒いシルエットが揺らめく。


《フム、地球とは遠すぎて接続ができぬが確かだな》

《例のワクチンか……?》

《表の下僕候補をまとめるプロパガンダ用の火星姫(マーズセス)ファルスタが脱走した……》

《密かに研究していたが、我らに暴かれたのが事前に知られていたな》

《で、すんなり逃げられた失態……》


 ウニョウニョ巨大な五つの影が大きく揺らめいていたぞ。


《落ち着け……五領主(ゴロード)ども!》

《《《はっ!! 火闘神(カヴァリン)マルスさま!》》》


 高台の王座に佇む一人の影が窘めてきて、五人の巨大な影はシュンと大人しくなった。


《ワクチンはそれ相応の実力者でなければ、我らを倒せるに及ばず! ファルスタ姫ていどではタカがしれている! 宇闘神(ユーニバゼル)スペースは優秀な男だったが、妙に幼児性があるきらいがあった……裏をかかれたのだろう》

《《《ははははっ! まさにその通りですな!!》》》


 火闘神(カヴァリン)五領主(ゴロード)もスペースを見下していた。

 定期的に地球の情勢を報告させる為に遣わした刺客。


《新しく候補としてナノマギア・オリジンを注入して何人か熾烈な競争をさせてひとり勝ち抜いたヤツだ》

《スペックも高く、どんな訓練もやり遂げ、評価が高かった。それを地球に侵入させていたのだが……》

《所詮は今世代のネアンデル人》

《とはいえ、ゾンビとして操るタイプだと地球が遠すぎて接続が切れて動かなくなる制約があるからこそだ》

《威力値七万そこそこのファルスタ姫ていどでは、スペースに遠く及ばないはずだったがな……》


 五領主(ゴロード)は訝しげな様子で話し合っていた。

 それを静かに火闘神(カヴァリン)は両目だけ鋭く見据えている。


《ともかく、地底境域界(サブタレニアン)に協力を申し出て、実力者にワクチンを渡した可能性がある》

《地球人のクロマ人どもに渡ったのでは……?》

《それはありえない! そもそもナノマギアはワクチンを含め、クロマ人の中へ注入しても死滅するだけだ!》

《唯一はナノマギア・オリジンでのみクロマ人を支配できる!!》

《そうだ!! だがそんな事があれば、地球情勢はもっと慌ただしいものとなっていた!》

《四万年前……かつてそうだったようにな!》

《ナノマギア・オリジン同士の抗争で不毛な争いになり、最終的に臨界を迎えて滅亡兵器クラスの大人災となり、我らネアンデル人が絶滅寸前に陥った!》


 忌々しいと、かつての昔話で気分が高揚している。

 五領主(ゴロード)は凄まじい威圧を漏らし、周囲が震憾していく。

 ドス黒いオーラがズズズズッと膨れ上がってくるぞ。


《だからこそ、我が主は火闘神(カヴァリン)マルスさまのみに定めたッ!!》

《他の闘神(バトキア)などそもそも要らぬ!!》

宇闘神(ユーニバゼル)スペースが地球の闘神(バトキア)を片付けたら、最後に難癖をつけて処刑するつもりだったがな!》

《そして最終的に地球もまるごと支配するつもりであったッ!!》


 ウオオオオオオオオオオ……ッ!!!


 五領主(ゴロード)がウニョウニョ巨大化して不気味に吠えている。

 いずれも黒いシルエットだが、それぞれ大きな化物へと変貌を遂げていく。


五領主(ゴロード)ども! 先走るな!!》

《《《ははっ!》》》


 シュンと五領主(ゴロード)は跪くように大人しくなった。

 そして火闘神(カヴァリン)へ向き直る。


《……火星姫(マーズセス)ファルスタは大勢のネアンデル人を連れてくるはずだ。この火星の平和を取り戻すという身勝手な正義でな》

《は!》

《確かに!》

《行き当たりばったりの性格でしたな》


 それぞれ五領主(ゴロード)は呆れ呆れと口にする。


地底境域界(サブタレニアン)として生息しているネアンデル人はそれほど大したヤツはいないが、地上のクロマ人には注意が必要だ。こちらが攻め込めば、その動きを妖精王や四首領(ヨンドン)どもが察知してくる。地球上では我らに不利だ》


 これはスペースの報告で地上の猛者はあらかた熟知していた。

 ナッセたちがヤミザキと世界大戦した事はもちろん、インドのダウートとの激戦もスペースが情報収集していたのだ。


《我らは不死身のナノマギア・オリジンを所有している》

《そうだ! クロマ人とて対抗する術は持たぬ!》

《いかに妖精王ナッセやヤマミでさえも対抗する術は持たぬ!》

《所詮はクロマ人風情! 踏み潰されるだけのアリでしかないわ!!》


 五領主(ゴロード)はふんぞり返って完全に見下しているようだ。

 確かにナッセの予知夢がそうだったように、全く対抗できていなかった。

 唯一無二の無敵システムとしてのナノマギア・オリジン同士でもない限り……。

 それかワクチン。


五領主(ゴロード)!! 奴らを侮るな!! しぶとく食らいついてきて我らを脅かす存在にもなりうる!! わざわざ地球へ侵略して、ヤツらの土俵に挑む必要はない! 四首領(ヨンドン)同士が組みかねん!》

《ははっ! それはごもっともです!》

《確かにヤミザキやダウートでも、例の妖精王のガキが関わっておりましたな!》

《どうしようもない戦況を覆したとも聞いている! 油断はできぬぞ!》

《……して、どうなさいます?》


 火闘神(カヴァリン)マルスは頷く。


《ここで迎え撃つ! 磐石の布陣で反乱分子を駆除し、その後は地球を侵略しよう!》

《《《……御意!!》》》


 こうして火星で待ち構える事になった……。

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