379話「最初登場したきりの一発屋スペースさん乙!」
浮船はスムーズに飛行して、断崖絶壁に突っ込んでプレートスライドして北アメリカ大陸に相当する地底境域界へとたどり着いた。
あの豪華客船の飛空艇と違ってスパッといけたぞ。
「妙に静かだな……」
「アメリカのヒーローと拮抗してる状態だとは聞いたけど……」
広い空間、見渡す限りの海のような湖を過ぎると平地が見えてきた。
これまでと違う地形と草木が窺えて、同じ地底境域界でも地域によって違うのが分かる。
「あそこだ。気配を感じたぞ」
「フン……」
マジンガとジャオウはある方向へ見やる。霧で覆われているところでチカッチカッと火花のようなのが点滅してる。
大体、数十キロ先か。
そこへ舵を取って進ませてみる。
オレは「強襲の可能性あるから、各々警戒をしてくれ」と先を見据えた。
もう例の火花みたいなのは収まったのか、不気味に沈黙してる。
ブワアアアアアア……ッ!!
霧が晴れたかと思ったら、あちこち破壊跡が多くのクレーターと破損した基地が窺えた。
多くの人が倒れている。
すると、なんかこっちに向かって両手を振っているのが見えて降下する事にした。
浮船が静かに着陸し、オレたちはザッと飛び降りた。
「おお! ニンジャ・ナッセにマジカルガールではないか!?」
「仲間も多いですね!?」
「それより……!」
見も知らぬモブヒーローが三人、安堵したような笑みを見せてくれた。
「一体何があったか、事情を聞かせてくれ!」
「は、はい!!」
「説明します!」
話を聞くに、この辺りで水闘神が陣取ってナノマギア・オリジンによるアーティファクト・キャッスルを建設して勢力拡大していたらしい。
この辺りの部族たちが水闘神によって下僕にされて統一された。
ついでに『ヴィアス王国』が攻め滅ぼされ、その生き残りがアメリカへ行ってヒーローに助けを求めた。
ベジダブル王の言ってた通りだ。
「ヴィアス王国の生き残りは何人ぐらい?」
「二人です。今はアメリカのヒーロー協会で保護されています」
更に話は続けられた。
多くのヒーローが水闘神へ攻め込んで拮抗する事になった。
ナノマギア・オリジンは不死身なので、いくら殺そうとも何度でも蘇ってくる為に決め手がかけて困っていたのだ。
「だが、オレが来た! もう心配ねぇ!」
「ええ。こっちはナノマギア・オリジンを倒す方法見つけたからね」
「それは心強い……。でもしかし…………」
満を持してやってきたというのに、歯切れが悪いぞ。喜んでもよさそうなのに……。
「すみません!! 実のところ水闘神ゴリアテは倒せました!! ですが……」
「「「えええっっ!!?」」」
既に倒されていると聞いて、オレたちは面食らうしかない。
「なんですってぇ────!!? クロマ人風情がそんな事できるワケがないのです──っ!!!」
食ってかかる宇宙帝Zを、リョーコが羽交い締めして「どうどう」と落ち着かせた。
バツが悪そうな顔でモブヒーローは後頭部を掻く。
《……その続きは私が話そう!》
なんとヒーローが真上から急に降り立ってきて、オレたちは目を丸くする。
中肉中背で筋肉隆々とラインが浮かぶ全身タイツで、緑の炎がところどころ纏っていた。
宇宙服のようなヘルメットで顔が窺えない。
「おまえは……!?」
なぜかモブヒーローが「で、出たぞ~!」と一目散に逃げ出したぞ。
敵だと勘違いした……?
「この不審者、誰なのですかっ!? 敵なんですかっ!?」
「いや、味方だ……!」
「ええ! 宇宙を翔ける偉大なヒーロー! その名はスペースオブザーバーよ!」
実は【第一部】で『153話「ヒーローたちと再びの再会!!」』で登場したが、世界大戦には参加せず、ばったりと出番が途絶えたヒーローでもある。メタァ!
一話こっきりの一発屋キャラにされた不遇なキャラだ。メタァ!
コイツは物体をすり抜ける特殊な能力を持っている。
《HAHAHA! 覚えてくれてなにより! 気軽にスペースと呼んでくれて構わない……ってか》
「しかし、まさかこの戦いに参加していたとは……!」
「一体誰が水闘神を倒したっていうの!?」
すると肯定するかのようにスペースは頷いた。
何かを掴んでいた左手を上げていくと、なんと水色のゴツいオッサンだった。血塗れボロボロの状態で事切れている。
《コイツこそが水闘神ゴリアテ! 実に他愛もない闘神であった!》
スペースが左手で離すと、ゴリアテがドサリと横たわった。
まさかの事態に呆然するしかない。
もしかしてスペースさんがやっつけてた?? 意外と強い?
《そして次は貴様のナノマギア・オリジンをいただくとしよう!!》
「え?」
なんとスペースがオレの首を掴み、ビクンと体が痙攣する。
ヤマミが「ナッセェ!!」と刃を生やした杖で斬りかかるが、スカッとすり抜けてしまう。
「いかんっ!!」
「なになにー? ヤバ、助けなくちゃっ!!」
「えーいッ!!」
フクダリウスたちが慌てて攻撃を仕掛けるもスカッスカッとすり抜けてしまう。
これこそがスペースの特殊能力だ。
一切の攻撃が通じず、掴まれているオレもすり抜けるので助けようとしても引き上げられない。
「あ……がッ!? す、スペースさん……!!?」
体が麻痺して動かない。
なんかズズズズッと吸い寄せられていくのを感じる。
ナノマギア・オリジンが全て吸い尽くされようとしているのだ。オレはなすすべなく呻くしかねぇ。
《言い忘れていたぞ!! この私こそが火星よりの使者!! 宇闘神スペース様だ!!》
「「「な、な、なんだってええ──────ッ!!!」」」
《火闘神さまに従い、地球を支配する権利を得たのだッ!!》
「「「な、な、なんだってえええええ────────ッ!!!」」」
誰もが連続で驚くしかない。
ヤマミは時空間魔法を発動するが、黒い花吹雪の渦でオレを吸い込めず「くっ!」と焦燥する。
《無駄だよーん! もはやナッセちゃんは終わり! マヌケなコイツはしばらく笑いのネタにできそうだ! はっはー!!》
急に子供じみた勝ち誇りを始めて、ヘルメットが分解されて喜々と嘲る笑顔を見せてきた。
こちらをバカにしたような顔で舌を出しておちょくっているぞ。
「離しなさい!! 離してよっ!! 絶対許さない!!」
《あほ!! ばーか! このマヌケが悪いんだよ! 味方だと思ってた? ざーんねん!! この宇闘神スペース様が……!!》
ベロベロバーと舌を揺らしてバカにしていたが、様子が変わってきた。
《う……うぐッ!?》
オレを取り落として、後ろへヨロヨロとふらつきながら後退していく。
首を両手で握って苦しそうだ。
全身が震えていってガクッと膝をついてしまう。
《な……何をした…………!!?》
スペースは苦痛か、顔を歪ませていく。
ヤマミに抱えられながらオレはゴホッゴホッと咳き込み、スペースを見やる。
《ガフォッ!!》
なんとスペースは吐血し、ビチャビチャと地面にぶちまけた。
顔面真っ青で、こちらを憎々しげにキッと睨んでくる。
「そ、そうか!! オレのナノマギア・オリジンにはワクチンあるから……!」
《なっ、なんだとっ!?》
「うかつだったわね! ほとんど吸い取ったのでしょう? 強力なワクチンもろともね!」
ヤマミが仕返しとばかりに不敵に笑んだぞ。してやったり!
スペースは震えながら愕然とした顔で口を開けたまま、血を垂れ流していた。
《なにィィィ!? ワクチンだとォ────!!? そこの宇宙帝Zを自称する火星姫ファルスタが、まさか!? このガキに仕込んでいたのか────ッ!!?》
血眼でスペースは焦りながら叫んでくる。
まさか宇宙帝Zの本名とかバレちゃったけど、それはともかくスペースは苦しそうにゲホゲホ血を吐きまくってる。
そんなリアクションに、さすがの宇宙帝Zもドン引きしてるぞ。
「フハハッ!! 迂闊だったなッ! 宇闘神スペース!」
なんと地闘神グランドルフがドロンと大男に戻って勝ち誇る。
《き、きさまはッ!? 地闘神ッ、生きていたのか──ッ!?》
「左様! このナッセを我が主として下僕になったのだ!! そしてナノマギア・オリジンは今から新しくナノマギア・ワクチンへと変質した!!」
「え?」
「ええ??」
「えええええっ!!?」
グランドルフのセリフに誰もが驚く。オレもビックリするしかない。
「お、オレのナノマギア・オリジンが??」
「うむ! コイツが吸収したおかげで、更にワクチン化が進んだのだ! よってナノマギア・オリジンではなく、完全なるナノマギア・ワクチンへと生まれ変わったのだ!! ハハッ!!」
もしかしてグランドルフはナノマギアの代弁しているんでは?
ともかく、オレのナノマギア・オリジンはもうワクチンへと変わってしまったようだ。
つまりスペースはそれを生み出す踏み台に……??
「じゃあ、もうナノマギア・オリジンを恐れる必要ねーって事か?」
「ウム! お主の減った分を補うべき増殖しているぞ!」
その真実を知り、スペースは絶望に覆われて落胆しまくる。
欲張って全部吸い出そうと取り込んだワクチンが体中を巡ってナノマギア・オリジンを特攻四倍で駆除していき、同時にそれが生命線になっていたスペースは死に絶える運命になった。
《ぎ……ぎっ……ぎはああああああっ!!!!》
盛大に吐血した後、スペースは血の池に沈んでしまった。ドサッ……!
ワクチンTUEEEEEEEEEな件!!




