370話「三大奥義でさえ通じず!? 完全な敗北!!」
グランドルフが拳を地面に突き下ろし、広大な魔法陣を描いていく。
これも古代文明利器ナノマギア・オリジンを地面に伝播させて、魔法陣を描く仕組みのようだ。
完成間際に近づいてきてカッと光を強めていく。
「降臨せよ!! アーティファクト・カタストロフギガントGッ!!」
不敵に笑むグランドルフが下からの明かりによって不気味に照らされる。
しかし! そうはさせん、と黒い筋が幾重も走ってきて魔法陣へ黒い小人がニョキッと出てきた。
輝く魔法陣に触れて黒く染めていくと、散り散りと剥がれてゆく。
「ムッ!?」
魔法陣を囲む黒い小人たちが魔法陣を黒く染めて剥がしているのだ。
これはヤミザキの『刻印』を剥がしたのと同じ理屈だ。
「今だああッ!!」
フクダリウスが吠え、ジャオウ、マイシ、リョーコ、エレナ、モリッカが一斉にグランドルフへ飛びかかる。
効かなくとも総攻撃して体勢を崩すくらいはできる。
狂喜に笑うグランドルフと激しい格闘戦が繰り広げられてズガガガガッと打撃音が鳴り響き、余波が吹き荒れていく。
「ジャオオオオオッ!!!」
「かああああああッ!!!」
ジャオウの黒龍纏う拳と、マイシの炸裂剣が斜交いして、更にリョーコが「クラッシュ・バスターッ!!!」と上乗せした。
ズドゴッ!!!!
周囲を震わせるほどの激烈な一撃が決まり、グランドルフは驚愕しながら仰け反る。
稲妻を迸らせ青髪のモリッカが「だだだだだだッ!!」と光弾を連射して、爆発の連鎖が轟いていく。
聞かなくても爆風による衝撃波で体が押しのけられる。
おかげで魔法陣は術者と離れて薄らと消えていく。
カードゲームに例えるなら『特殊召喚を無効化し、それを破棄する』って感じで無駄にコストを払わせた。
つまり、ダイヤモンド部族兵は一人もいない状態。
「うぬがああああああああッ!! 見たくないのか!? 見たくないのかああああッ!!? 我が巨神兵をッ!!!」
「そんなもの興味ないわあああッ!!」
邪魔され、更にウザったく総攻撃を浴びて苛立っているが、フクダリウスは毅然と突っぱねた。
拒絶された、と絶句するグランドルフ。
いかなる攻撃も効かなくなって無敵状態になっているはずなのに、余裕が持てない。
「なぜだああああああッ!!? 無駄な攻撃ばっかりで飽きぬかあああああああッ!!?」
既に妖精王化したオレは巨大に膨らんだ銀河の剣を掲げたまま、グランドルフをキッと見据える。
「地闘神グランドルフ……! 行くぞッ!!」
ヤマミが偶像化を生み出して、オレを乗せて思いっきり上空へ投げ飛ばした。
プラネンタ王国から一筋の流星が飛び上がり頂点に達した時に眩く煌めいて、全員の視線を集めた。
ミズミール女王とギョヌ将軍、そして王国兵や住民……ネアンデル人は見上げてしまう。
まるで希望に煌く流星のようにも見えた。
「ここは地底境域界……。地上のように夜空は見えぬが、見えたとしたらそのように煌めいていただろうか?」
「ウム。真っ暗な空に星々が煌めいていて、希に流星が弧を描いております」
「それはいいのう……一度くらいは……」
斜めに下降していく流星にミズミール女王はウットリする。
今まで一度も見た事もない地上に憧れていく。
グランドルフはこちらへ目指す流星に「おおッ!?」と見開いて、感嘆を漏らす。
これまで血まみれに戦いへ暮れた日々で忘れていたであろう安らぎの光。
いつ平穏を手放したか、もはや覚えていない。
「おおおおおおおッ!! これでおまえのォ────!!」
気合いを叫びながらオレは煌びやかな星屑を散らし、弧を描く銀河の剣を掲げながら急降下していく。
こちらを見上げてくるグランドルフへ渾身を込めて振り下ろす。
「大虐殺は終わりだああああ──────ッ!!!」
縦一直線の軌跡を描く剣閃がグランドルフの顔面真ん中にくい込む。
「ギャラクシィ・シャインフォォォ────ルッ!!!」
ズガガァン!!!!!
衝撃音を響かせてダイヤモンドの装甲が四方八方に剥がし散らされ、グランドルフを屈み込ませて脳天から大地に叩き下ろした。
周囲へ衝撃波が広がり、岩盤が捲れ上がって広大なクレーターへ窪んでいく。
生身状態のグランドルフは苦悶した顔で「グガハッ!」と吐血し、ゆっくりと横たわっていった。ズン!
「はぁ……はぁ……はぁはぁ……! やった!」
うつ伏せのグランドルフを見下ろし、オレは息を切らす。
恐る恐るといった感じでフクダリウスたちは「どうなった……?」と行方を見守る。
ピシィ……ッ!
「「「「!!!!!!」」」」
なんとうつ伏せになっているグランドルフの背中からダイヤモンドが覆い始めていく。
ピシピシピシ……全身を覆うダイヤモンドに、オレたちはゾクリと戦慄を帯びる。
「フハハハハハハハハハハッ!!!」
ガバッとグランドルフが平然と飛び上がって、仁王立ち。
コキコキと首を鳴らし不敵な笑みで、震えながら青ざめていくオレを見下ろす。
「そんな…………!」
スキルなどを全て無効化する三大奥義ですら、地闘神グランドルフには通用しなかった。
難攻不落とも言えるダイヤモンドで覆い尽くした無敵のグランドルフが万全と立ちはだかる。
依然とスキルを発動できている状況だ。信じられねぇ……。
「むうっ! もう手の打ちようがない……。こんなん、どうやって倒せば…………」
「チッ! ナッセの特性ですら無効化できないのか!?」
「えー!? うそぉ……!?」
フクダリウスもジャオウもリョーコも愕然するしかない。
マジンガもマイシも苦虫を噛み潰したような顔をする。
カイガンは「やべえよおお!? 完全な無敵じゃねーかああ!?」と腰が引けてる。
攻撃系はもちろん奥義すら通用しないとなれば、もはや誰もなすすべがねぇ。
「気に入ったぞ!! 気に入ったぞおおおお!!! いえええーい!!」
喜びに大声を張り上げて、バンザイするように両手を挙げるグランドルフ。
そしてその両手がオレへ掴みかかる。ガシッ!!
「グッ!? しまった!!」
「よし! 我の完全な敗北だ!! 故に今度はおまえが我が主となれ!!! このナノマギア・オリジンを譲渡しよう!!」
「……え?」
なんとオレを掴んでいるグランドルフの大きな両手からズズズズッと何かが注入されていくのを感じていく。
なんだか湧き上がる力に戸惑うしかない。
他の誰もが一体何が起きているのか、混乱するばかりだ。
「え? ええっ!? 急になんて事すんだよ!? さっきまで敵だったろっ!?」
「よく分からんが、我の仲間だと親密を感じた。友好的な気持ちが沸き上がってくるのだ。敵対したくない。そしてナッセこそが我が主に足る存在だと感じた!!」
「オレも地闘神になった……?」
「ハハッ! 正確に言うと、お主に継承されたと言うべきか!」
オレはガックリと項垂れた。
「このバカー!!! なんて事するんだぞー!!!」
「なぜ怒る!?」
「そこまでしてくれとは言ってねぇ!!」
「ハハハッ!! 気に入らないか!? なら、我の維持を破棄するがいい!! この不死身は解けて死へ向かおう!」
「え?」
体内のナノマギアが説明してくれている。というか今ダウンロードされた。
共通化がオレにも適用されているので、全ての知識とか経験とかそういうのが入ってきてるのだ。
さっきグランドルフが言ってた通り、自分がボスとなったので下僕を好きにできる。
つまりグランドルフを今すぐ処刑する事も……。
「もはやナッセは仲間!! 死んで欲しいなら喜んで受け入れよう!!」
「えー……もういいや」
ヤマミが慌てて降りてきて、切羽詰まった表情で「ナッセェ!!?」と問いかけてきた。
「聞いてくれ! コイツ仲間になったって言いだしたぞ!」
「まさか浄化系が効いたの?」
「かもしれねぇけど、こんなん初めてだ。唐突すぎる。ナノマギア・オリジン譲渡してきたし」
オレとヤマミはグランドルフを見やる。
さそも最初っから仲間だったかのように仁王立ちしてて「フハハハハッ」と快く笑っている。
奥義による浄化はあくまでスキルや戦闘力の一時的な無効化。
改心させたりするのは『鈴』の効力。もちろん『鈴』は使ってねぇ。
「もうナノマギア・オリジンは取り出せないの?」
「……いや、いつでも捨てれるんだけどよ」
「じゃあ、そうすればいいじゃない?」
その方法はダウンロードされて知ってる。
ボスとして使用権を得たオレが出てけーって命令すれば、体内から排出できる。
ただし、支配下に入った生き物は維持する力を失う。つまりオレが捨てたらコイツ死ぬ。
オレの性格上、地闘神でも見捨てられるかっていうとムリだ。
「仲間ってんなら返してぇ……」
「諦めてくれ!! 我は完全に負けたからな! フハハハハッ!!」
豪快に笑ってる場合じゃないんだけどな。
譲渡した場合は、二度と返してもらえないという代償を背負う。つまりコイツは永久にオレの奴隷みてーなもんだ。
そうしてもいいとグランドルフは、オレを仲間だと全幅の信頼を寄せたのだろう。いい迷惑だ。
「本当の意味でコイツの命を背負っちまったよ!! ちくしょう!!!」
隊長とか主とかガラじゃねぇよおおおおお!!!!
あとナノマギア・オリジン要らねぇよおおおおおおおお!!!!
この【小話編】の続編である【第二部】では、ナッセはナノマギア・オリジンを持っていない。
……つまり途中で失うという事。
果たして、これからどうなるのか──っ!?




