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365話「嵐の闘士ストペスト!! 恐るべき増殖!」

「ふうっ……」


 ブスブス煙が上がりながら、右手を差し出すポーズでウギンは一息を付いた。

 そんな時に「そうか……ウギンはやられたか……」「フン死んだか」「アレを食らっては生きてはいないだろう」と通信が飛び交ってたのを聞いてしまう。


「てめぇ!! 勝手に殺すんじゃねーよ!! まだ生きてらぁあ!!」

《なんだ生きてたのか……》


 というのも、敗色濃厚で獣の闘士(バトラー)ビスラスの凄まじい光線に呑み込まれてヤバい事になってた。


「俺様は増強系能力者だからな。咄嗟にオーラを右手に集めて攻撃を繰り出す事で弾いていたのさ」

《相変わらず頑丈なだけがとりえなヤツだ》

「ジャオウてめーは黙っとれ!!」


 実はウギンが死んでない事は知っていた。

 とりあえずオレは夢通りに通信で気遣っておく。


《よかった。ダメージは深くないか?》

「ナッセ、隊長……団長さんは優しいな。心に染みたぜ。大丈夫だって、まだ全然戦えらァ!!」

《そっか。でもムリはしないでくれ》

「おう!」


 ジャキガン学院では誰も心配してくれるヤツァいなかったっけな。

 自分、好きなキャラを真似てぶっきらぼう振舞ってたがよ、心はセンチなんだぜ。

 あんな風に心配してくれるのナッセしか記憶ねェな。こいつ団長で良かった。

 アニマンガー学院に転校しようかなと思ったぜ。




 オレは腕を組んだ。

 本当は言う必要はないんだが、夢通りに質問をぶつけてみる。


「要するに『赫羅眼(アカラメ)』所有者を増やせば、古代ナノマギアなんたらも完封できるんじゃね?」

「人工の魔眼ってたしね……」

「いや」


 しかしギョヌは首を振った。

 ミズミール女王は困惑顔で振り向いてきた。


「そんな事がカンタンにできるのなら封印なんてしなかったわ。地闘神(アスラリオ)を無効化して殺害すれば事が済むもの」

「やっぱできないよな……」

「うむ……。操作できるのにも限度がある。闘士(バトラー)相手で数秒だったのだから、地闘神(アスラリオ)には歯が立たんだろう」

「そうだよな……普通に効かなかったし」

「…………?」


 オレが変に冷静なのが気になって、ヤマミは眉を潜める。

 ギョヌが既に疲労困憊になっているから、使い勝手は悪いようだ。


「それに造れるといっても『赫羅眼(アカラメ)』は普通のネアンデル人には扱いづらい。昔は増やす計画していたが、使いこなせたのが俺だけでは致し方なかろう?」

「……もはやそのような計画は二度と企画されはしまい」


 ミズミール女王は目を伏せていた。

 本当はギョヌには二度と使って欲しくなかったのかもしれない。

 だから取り乱したように怒鳴ったのだ。


「だが、ナッセ……なぜわざわざ質問した? 実は知っているのではないか? 効かなかったとか言ってたような……??」

「ん? そうか?」

「どことなく質問が棒読みに聞こえたような気がしたが……?」


 ここら辺は夢と違うか……。

 もし夢の通りなら、この会話は出てこないはずだ。


「とりあえず地闘神(アスラリオ)にはダメ元でも使わないでくれ。目が噴水になる」

「わ、分かった……」


 ギョヌは戸惑いながら頷く。

 事情を知らぬミズミール女王は怪訝な目で見てきたが、気にしない事にしよう。




 嵐の闘士(バトラー)ストペストは下半身が竜巻に覆われている半裸の男。そして頭蓋骨をかぶってる。

 それと相対するのは勇者ナッセと魔法少女リョーコ。


「いくおッ!! 速の秘剣・水裂斬ッ!!」


 勇者ナッセは下段に構えたナッセの剣で斜めに斬り上げて、三日月の刃を飛ばす。

 相手が天の闘士(バトラー)同様、風を操るタイプなら、それを斬り裂ける秘剣で勝負だ!

 しかしストペストはニヤリと笑った。


 ズザンッ!!!


 なんとストペストが斜めに両断された!?

 しかしブインと両脇で二人増殖してきたぞ。更にブインブインブインと分身していくぞ。


「嵐の闘士(バトラー)たるゆえんは、風を操れるからではない。このように際限なく分身できるからだ。これこそが俺の特性よ」


 数十人に増殖したストペストは一斉に襲い掛かる。


「紛らわしい二つ名よねー! 斬撃の烈光閃(レヴ・スラッシュ)ッ!!!」


 魔法少女リョーコは横薙ぎに杖を振って、三日月の斬撃を広げて数体ぐらい上下両断した。

 勇者ナッセは光の剣を掲げた。


「力の秘剣・地裂斬ッ!!」


 威力を一点に集中した渾身のひと振りでストペストを一刀両断。ザンッ!!

 しかしブインブイン分裂して余計数を増やしてしまう。

 まるで嵐のように波状攻撃を仕掛けてきて、拳の弾幕が二人を襲う。勇者ナッセと魔法少女リョーコは必死に白兵戦を繰り広げた。

 勇者ナッセは剣で、魔法少女リョーコは刃を生やした杖で近接戦だ。


 ガガガッガッガッガガガガッガガガガガッガッガガガガガッ!!


 一体一体そんなに強くはないが、執拗に分裂してステゴロで攻撃し続ける。

 何度倒しても数を増やされてはたまったものではない。

 ヴンヴンヴヴヴヴン、更に数を増やされてしまう。


「こうなったら喰らえおッ! ナッセブロッシャ────ッ!!!」


 勇者ナッセは大振り横薙ぎ一閃で眩い斬撃を放った。

 一気に広範囲を斬り裂く破壊が広がって、数十体のストペストを木っ端微塵に吹き飛ばしていく。

 斬撃と同時に衝撃波まで発生するようだ。


「しかし無駄無駄」


 ストペストは不敵な笑みで更にヴヴヴンと分身して、さっき以上に大勢になってしまう。

 勇者ナッセと魔法少女リョーコは「くっ!」と苦しい顔を見せた。




 オレはそれを冷静に見ていた。


「増殖するタイプの闘士(バトラー)か……」

「こうして見届けないと、アレのカラクリが分からなかったわね」

「ああ」


 嵐の闘士(バトラー)ストペストが一人増やすたびに、別のダイヤモンド部族兵が三、四人渦を巻いて消えていくのが見えてる。


「あんな風に部族兵を生け贄に捧げる事で能力を発動してるんだ。だから理屈上無限じゃねぇ」

「勇者ナッセと魔法少女リョーコはそれに気づいていない」

「伝令しとくぞ」




 ズガガッガッガガガガッガガガガッガッガッガッガガガガッガッ!!!


 ストペストの大勢と激しく格闘を繰り広げていた勇者ナッセと魔法少女リョーコは耳に通信が聞こえて、カラクリが判明した。


「あいつら、他のダイヤモンド部族兵を何人か生け贄に捧げて増やしてるんだお!」

「厄介だわよね!! 爆撃の放射撃(バクボ・フラッシュー)ッ!!!」


 魔法少女リョーコは杖を振るって広範囲爆撃を仕掛けて数体葬る。


「ほう! 見切ったか!? だがそれでどうなる!? 数十万人もの部族兵がいなくなるまで戦えるか!?」


 大勢のストペストが嵐のように波状攻撃を仕掛け、勇者ナッセと魔法少女リョーコを追い詰めていく。

 事前にヤツらはナノマギア・オリジンで共通化していると聞いている。

 なので部族兵がいる限り、能力は発動し続けられる。さっきの獣の闘士(バトラー)みたいに近くの部族兵を食ってパワーアップするのとは違う。

 ギョヌの魔眼能力でも、こんな数を無効化するというのは難しい。



 そんな様子にオレは冷静に指差す。


「あれを見てくれ……」

「ナッセ?」


 ヤマミは、オレが指差す方向へ見やる。

 これまで斬り裂かれたストペストの残骸が転がっている……。


「他の闘士(バトラー)と違って再生しないの??」

「ああ。()()()はな……」

「分身体……!? なぜそうだと分かるの?」


 本体そのものを増やせるなら、いっぺんに超再生していいはずだ。

 だが、なぜか勇者ナッセと魔法少女リョーコが砕いたストペストの残骸が散乱し続けている。


「ダイヤモンド部族兵の死骸を見ろよ。あいつらも超再生できない」


 やはり地闘神(アスラリオ)闘士(バトラー)だけが、その特権を持っている。

 本当に見た夢通りの能力だぞ。

 っていうか、昨夜に見たのは予知夢だった? オレにそんな能力が……??


「だからヤツの本体は一体だけだぞ!」

「いつにも増して鋭いわね……?」


 ヤマミは不審を抱くが、オレの事だからとそれ以上は詮索してこない。

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