353話「実在しない地下世界が実在する!?」
麻婆ナスをたいらげてオレたちは「ごちそうさま」と満足げに合掌。
食器をシュワシュワ洗って、落ち着いたところでヤマミと一緒に──……。
携帯が鳴った。
「なんだよ? こんな夜に!?」
手に取って耳に当てる。
《頼む! 力を貸してくれまいか!?》
「えっと、ギョヌさん……?」
《うむ……。実は大変な事になっているので、もうなりふり構ってられん。来てくれ。場所は──》
兵庫県の創作士グループのシジツたちの一人だ。
なんか慌てているみたいだから気になった。ヤマミと目配せする。
「シジツたちも来るのか!?」
《いや、これは俺だけの独断だ。とにかく来てくれ》
「わ、分かった……」
どうやらギョヌ単独の頼みではあるらしい。
なのでオレとヤマミは外へ出る為に着替え直した。室内の灯りを消しドアを閉めて鍵をかける。
場所は聞いているし、ヤマミの時空間転移もできる位置だ。
黒い花吹雪が渦を巻いてオレたちを吸い込んでいく。ズズズズ……。
大阪駅の『時の広場』と言う広場がある。
そこでは大きな橋のように無数の線路の上を通る形となっており、通り過ぎる電車を見下ろす事もできる。
時計塔が建っていて、近くに喫茶店がある。
そこでオレ達が花吹雪の渦から降り立つ。ザッ!
周りの人々の目が気になるが、ともかくギョヌが待っていて「おお! 来てくれたか!」と走ってきたぞ。
バンダナで両目を覆ってるのに見えてるかのようだ。
「全く、今度はなんの用なの? シジツたちは知ってるの?」
「いや知らぬ。ともかく切符は買ってある。東京へ一緒に来てもらいたい」
「これはまた突然……?」
「宿泊のアテあるの?」
ヤマミがため息をつく。
「もちろんですぞ。ただし東京のホテルではないがな」
「え?」
「どういう事?」
とにかく新幹線に乗り込んで東京へ向かった。到着する頃は二十二時近くだ。
大阪駅にも負けぬほどダンジョンのような複雑な東京駅を迷う事なく出て、ギョヌは「こっちだ」と徐々に路地裏みてーなところに行く。
まさか罠かと脳裏によぎったりする。
するとマンホールがあった。こんな位置に、と違和感がした。するとマンホールのフタが勝手に浮いたぞ。
「こちらへ……」
「あ、ああ」
フタが空いた丸い穴に降りていくと、そこは下水道ではなく薄暗い広間があった。
するとドタッと誰かが落ちてきたぞ。
「……誰だぞ?」
オレと同じ格好をした出っ歯のメガネ男。
尻餅をついていて「いたた……」と呻いている。まさか鏡面世界から来た別のオレ……??
ついギョヌへ見やると本人も戸惑っていた。
「お主!? 城山ナッツではないか!? なぜここに……?」
「知ってるのか?」
「どういう事? 仲間?」
立ち上がるナッツは後頭部をかきながらペコペコしてきた。
「へへへ……、すみませんぞ。夜更けに散策してたらギョヌさんがナッセさんを連れているのを見かけてしまったぞ。で、つい……ぞ」
「う……む、止むを得ん……。このまま行くしかなかろう」
ただ偶然、ナッセのコスプレしてるナッツが追いかけてきて来たわけか。
ギョヌも緊急なので追い返すわけには行かず、壁の複数並ぶスイッチを押す。
するとスウ──ッと床が下降していくぞ。エレベーターか?
「しばし時間がかかる。なにしろ地下世界へ行くのだからな」
「ええっぞ!?」←ナッツ
「地下……世界!?」
「新幹線ではダンマリで終始してたけど、説明してくれる?」
ヤマミは腕を組んで不機嫌だ。まぁ無理もない。
その時、なにか水面を潜るような違和感を感じた。まるで『洞窟』へ入る時と似ている。
まんま地下へ行っているようには感じなかった。
「地下へ行けば行くほど気圧と温度が高くなっていく。目安としては一〇〇メートル深くなるごとに温度は約三度、圧力は約一〇気圧増える。五〇〇〇メートルの地下は、温度が一五〇度以上、圧力は五〇〇気圧以上になる計算だぞ。単純計算で五キロは一五〇〇度で圧力が五〇〇〇気圧になる。普通の人間なら死ぬぞ」
「私も夕夏家の図書室で読んだ事あるけど、意外な事で博識ね」
オレが説明するとヤマミが呆れてきた。
まぁ惑星うんぬん興味を持って読みふけった時期あるからなぁ。
ナッツは戸惑いながら「え……、そうなのかぞ??」と汗を垂らしていた。
「だがそうはならぬよ。なぜならプレートスライド理論で別空間に移転したからな」
「プレートスライド?」
「テレビでも聞いてたわね。星間航行の為に利用するとかで」
エレベーターが下降中、ギョヌはなんか映像を映し出したぞ。
地殻となる地表とマントルが簡易的に映っていて、ギョヌはスッとスライドする仕草をする。
するとマントルプレートが横滑りして、今度は地下空洞プレートに替わったぞ。
「このように次元を変えて繋ぎ合わせたのだ。通常空間では地殻となる岩石層とマントルでしかないが、別次元の地下世界をスライドさせて行き交いできる感じだ。よって普通の移動方法ではたどり着けぬ」
ただ地面を掘っただけでは行けないらしい?
つまり地下世界は亜空間って事か?? 地下っていうのかな……?
「なんで地下世界になるのよ?」
「それは思ったぞ」
「……見て見れば分かるが、あくまで我らは地下を基盤にして亜空間に世界を作っておるからな」
スンッと下降が止まった感覚がして、扉が開いた。
出ると立派な基地みたいなのに出た。等間隔に円柱が並ぶ。鉄ではなく石ではあるが、なんか光るラインが床や天井を走っている。SF世界みてーだぞ。
ギョヌは出入り口に向かい、こちらへ「見るがいい」とアゴをクイッと。
「うおっ!?」
「これは……?」
「なんだぞ!?」
上と下と大地があるかのような広大な空洞……。
山岳のような起伏もあり、森林が生い茂っていて、川も流れている。しかも中間を雲が漂っている。
一目見れば確かに地下世界と分かる。
「地下の方がプレートスライドしやすいとの理由だ。密度の高い地層や真空となる宇宙空間などがやりやすい」
呆然としたままオレは、広がる地下世界を視界に収めていた。
要するにプレートスライドは次元と次元を繋ぎ合わせるって事でいいか?
今の地球には地下世界は存在しないが、別次元の地下世界を繋げて存在してる事にした?
「た……たまげた……!」
「たまげたぞ!」
オレが驚いていると、ナッツも並んできて真似てきたのでヤマミがペシンとチョップ。




