349話「メイド・イン・ヘル! 自業自得!」
プッチプリのスt……願望器『キュータロー』は、他人に望みを叶えて、更に“戦う力”を与える。
その“戦う力”とは超人、戦隊、魔法少女……変身ヒーロー系だ。
例え、戦う術を持たぬ一般人でも、不思議な能力や強靭な身体能力を容易に得られる。
いかなる多種多様な生命体にも適用できるよう『スピリットオーブ』による奇跡力システムを取り付けて、この力は成り立つ。
「これは効率よく『絶望』を繰り返す為の、大事な循環システムッ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!! (凄み擬音)
契約した生命体が絶望したり力尽きたりすれば『スピリットオーブ』は黒く濁っていき、限界を迎えると退治される側の怪人や魔物に成り果ててしまう。
そうなるように仕組まれている奇跡力システムなのだ。
変身ヒーロー系はそうと知らず、日々退治し続けているのだという。
自分がいずれそうなるとも知らずに……。
「もちろんそれを理不尽という輩はいるだろうが、これは『弱肉強食』とほぼ変わらぬ循環するシステムなのだ。リスクを背負わずリターンだけを享受できるなど都合の良いものなどある訳がなかろう?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!! (凄み擬音)
その『真実』を敢えて告げぬのが我が『慈悲』とも言える。
知ったところでどうにもならないし、逆に絶望するハメに陥るだろう。感謝こそすれ恨まれる筋合いはない。
「それこそが宇宙に存在する知的生命体に課せられた『義務』だッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!! (凄み擬音)
プッチプリの放った大勢のキュータローは白い球体となって、時間や距離をも超越して太陽系へ忍び寄っていく。
やがてたどり着いた第三惑星である青い地球へと降り注ぐぞ。
その知的生命体に取り入る為に……。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!! (凄み擬音)
願いを叶えてヒーローになって戦い続け、絶望するか力尽きたりするかで怪物と化し絶望の災いを招き、それを新たにヒーローが絶望または力尽きるまで戦う……。その絶望ループを延々と繰り返すッ!
そうする事で『楽園』へ到達できるッ!
「これは地球人の『運命』だッ! 喜んで『楽園』の犠牲になるがいいッ!」
パァンッ!!
なんと白い球体が弾けた。
次々と球状のキュータローがパンパンパンパパパンと風船のように破裂して消滅していった。
……アメリカのとある場所で銀の葉っぱを広げる世界樹。
これは奇跡Aランクの『世界樹ユグドラシール』だ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!! (凄み擬音)
「な……!?」
かつて『鍵祈手』ヤミザキが大魔王化して、それをナッセと魔女クッキーの力により浄化され、その後に生み出された副産物なのだ。
その世界樹がもたらす強力な破邪と浄化力で、大災厄の円環王マリシャスによる悪意満ちた干渉をシャットアウトしている。
しかし、それはキュータローにも作用してしまった。
似たような重い代償を強制する願望器も例外ではなく、浄化される事になった。
そしてキュータローはシステムそのもので、本体と強制的に繋がっとる。
「な……なにッ!? なんだ……コレはッ!!?」ドドドド……!!
キュータローを経由して聖人プッチプリにも浄化力が及んで、ジュワジュワ分解されていく。
これは焦るしかない。
己の“自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪”故に、強制願望器システムを広げた為に、端末からでも大きく影響を強制的に受けていく。
いずれにせよ欲をかいて、地球へ訪れるのは必然だった。
貴様は……、そう貴様は……詰んでいたのだ……。初めから。
カッ!
「そんな……馬鹿なッ!!? うわああああああああああああッ!!!」
もう絶望する必要なんてない、とかアルティメット存在が出てくる事もなく、ひっそり光の中へ消えた。
当然、ヒーローとか怪物とか諸々概念ごと消えた。
夢でも見たのかと、ヒーローや怪物だったものは人間に戻ってパチクリとした。
「白昼夢……?? 一体何が起きた……?」
プッチプリは、万華鏡のように景色が移ろいゆく奇妙な空間にいた。
ここは『量子世界』……。
「な……なに!? ここはッ!? 一体どうなったァ──ッ!?」
ドドドドドドドドドドドド……!! (凄み擬音)
数では表せられないくらい程の膨大なキューブが埋まっている空間に捻れが生まれて、ギュイーンと螺旋の渦と化していく。
そこはブラックホールのように底知れない深淵の穴が覗く……。
そして無数の『黒いキューブ』が押し寄せて、プッチプリの全身に張り付いていく。
かなり粘着性が強く、暴れようがもがこうが振り解けない。
「何が……起きているッ!? ま……まさかッ、スタンd攻撃を受けているのかッ!? お、落ち着いて『円周率』を数えるんだッ! 3.141……59……2……6……5……」
(さすがに『素数』だとまんまなので『円周率』に変えました。メタァ!)
プッチプリは必死に数えながら『黒いキューブ』によって螺旋の渦へと引き込まれていく。
この黒いやつはヤバいやつで、プッチプリが起こしてきた事象の『反動』と言うべき存在。早い話が報いとも言える。
「3……58……、なんだァ────ッ!!? こ……この穴は……ッ!? 9」
螺旋状の渦の中はトンネルのようになっていて、プッチプリは落ち続けていた。
そんな未知の空間と現象に焦るしかない。
これまで集めてきた絶望の因果が行き場を失った為に、螺旋状に束ねられて本体であるプッチプリに絡まってしまい、黒いキューブによって地獄へ引きずり込んでいく。
さしものプッチプリですら抗える事のできないほどに、大きな因果は育っていた。
まさに自分が蒔いた種。もはや逃れられる事は不可能。
これこそ『自業自得』とも呼べる事象……。
「うおおおおおおおッ!! 7……9この私をどこに堕とすッ!? 神よッ!! 我が清き魂を救いたまえッ!! 3……23……8」
皮肉にも自分だけ『楽園』へ到達しようとした報いが、逆に彼を『地獄』につき落としてしまうのだ。
ナッセが元いた並行世界はネガ濃度八〇%でポジ濃度二〇%の世界。
それを奇跡Aランクの『運命の鍵』によって天文学的な量の並行世界を跳躍して、異世界へ行ける可能性の世界へ到達し得た。
しかしプッチプリは逆……。
気づけば、プッチプリは会社内のコンベアを前にして突っ立っていた。
バアァ────ンッ!!
「な……なっ!? なんだここはッ……!!? 4……62……」
うろたえ、戸惑うプッチプリ。
コンベアに流れてくるダンボール箱が詰まっていく。どんどん次から次とダンボール箱が流れてくる。
プッチプリは冷や汗をかきながら、キョロキョロ見渡す。
「こらあッ!! 久平、なに手を止めてる!? さっさとパレットに積まんかーっ!!」
上司らしき人が怒鳴ってくる。
怪訝な目で見てくる他の作業員。殺伐してて窮屈そうな空気。
プッチプリは焦りながら、重いダンボール箱を抱えてパレットへドシドシ載せていく。
「643……! あ、ありえない……!! この私がッ……!! 3! なぜッ!! 38」
最初っからあったかのような“存在しない記憶”により、どう労働していくのか自然と体が動けた。
毎日毎日会社で倉庫係として働いている感じだ。
そこでは、不思議なスキルや魔法など存在せず、また異世界へ行けるような事もない。
現実は非常に残酷だと、それを体現させている世界。
「327……出てこいッ!! 我がスタンd願望器『キュータロー』ッ!!」
しかし何も出ない。ここではただの厨二病でしかないのだぞ……。
他の作業員は首を傾げる。
「……何言ってるんだ?」
「きゅうたろう?? いたか?」
「さぁ?」
「うちの会社にそんな人いねーぞ?」
「いいからさっさと運ばんかー!!」
「ぐ……!!」
上司の怒鳴り声が心に突き刺さり、プッチプリは苦悶に顔を歪ませた。
身体に負担をかける力仕事を半日ほどの時間で行われて疲労を蓄積させ、帰宅時には死んだような目で電車に乗ってマンションへとたどり着く。
初めてなはずなのに、いつもいつも寝泊まりしているマンションの一室で一息をつく……。
「くそ……! どうやったら戻れるんだ……? 9……50……この私は『楽園』へ行かねばならぬのにッ!! 28」
冷蔵庫にあったビールを“いつもののように”取り出して、ゴクゴク飲み干す。
適度に酔っ払って囁かな快楽にホッとする。
カップ麺にお湯を注いで、それを晩飯にした。ズルル~ズルル~と麺をすする。
「ううっ……!! 俺は……ずっとこのままなのか……! 8……4……197……1」
さっきまで一人で神様ごっこみたいな事して、他の惑星の生命体に絶望ループを強いて『楽園』へ到達しようとしていたのがウソのように感じてしまう。
あれは夢だったのか、とさえ錯覚するほどだ。
こうしてプッチプリは夢のない世界で、無為な生活を強いられる事になった。
やがて考えるのを止めて、社会の歯車として延々と生き続ける……。
ドォ────────ン!!
哀れ、彼は死んだ目で無気力に働くだけの一生を過ごす事だろう。
聖人プッチプリ再起不能……。『THE END』
ごめんなさいJOJOとMDMG!!




