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347話「エガラの手帳! 風のハトで調査だ!」

 エガラはマンションで一人暮らしをしていた。

 綺麗に整った部屋で、慎ましい生活をしているのが窺える。


「風のハトさん!」


 窓を開けて、両腕に抱えた数羽の『分霊(スクナビコナ)』ハトをリリースした。

 四方八方に羽ばたいて飛び去っていく。

 ぞれぞれがエガラの意識と繋がっていて、視覚を通して多角的に景色が見れる。


 ……というのも、自分の『分霊(スクナビコナ)』が行動できる範囲を感覚的に把握し、更にどれだけ可能性があるかを模索しつつ、情報収集する為にリリースしたのだ。




 一羽のハトが大阪の都市を見下ろしながら羽ばたき、川近くに来ると下降していく。

 大きな川で、魔導自動車が行き交う橋と高架橋が横切っている。

 土手の内側、川付近には整備された道路があり公園があったりして、草木も生い茂っている。

 走ってる人や、散歩している人、野外用ベンチに座っている老夫婦などほのぼのとした日常が窺えた。


「今や!!」


 なんと大きな手で掴まれて、茂みの中へ引き込まれていく。

 ブサイク面のゴリラっぽい大男と、悪辣に笑む痩せぎすの男が喜んでいた。


「さすがは相棒! ハトは食料になるからなっ!」

「せやせや!」


 視界を通して、捕まった事に焦りを覚えていたが彼らの素性を知った。

 去年に人造人間大侵攻を企てて、隕石で全てを滅ぼそうとした極悪人のオカマサとドラゴリラだ。

 ナッセとヨネ校長の嘆願で釈放されてから、去年の秋季大会を境に行方不明になっていたらしい。

 そんな人たちがここの茂みに隠れて!? でも!


「異世界でブ〇リーみたいなのに殺されそうになったから、辛うじて帰れたが……」

「せやな! どこもマンション契約してくれへんし、不自由やわ~!」

「それより腹が減った! さっさと捌くぞ!」


 オカマサがナイフでハトをザクッと!


 どごがああああああああああああんっ!!!!


 轟音と共に大爆発が広がった。

 あくまでエガラの弾を『分霊(スクナビコナ)』にして放っているので、損傷すれば誘爆するのは当たり前だった。

 しかも威力値五〇〇〇〇なので、爆撃ミサイルよりちょい強い破壊力だ。

 一軒の家なら木っ端微塵に吹き飛ぶレベル。


 他のハトを動かして様子を見ると、もうもうと煙幕が立ち上っている。

 幸い他に被害者はいなくて安心した。

 ただ、オカマサとドラゴリラは大怪我を負ってピクピク横たわっていた。


「ああっ!! あんたらはっ!?」

「オカマサとドラゴリラッ!?」

「それより警察を呼べ!!」

「こいつはテロだー!! やつら、()()起こしやがったぞー!!」


 周囲の人々がオカマサとドラゴリラのテロ行為だと勘違いして通報。

 一旦は治療班(ヒーラー)回復魔法(ナース系)で大怪我を治してもらい、警察に連行された後、酌量の余地なく塀の向こうへ行ってしまった。

 あらぬ冤罪になったのだろうが、元から悪い事ばかりしていたので弁解の余地もないのは仕方のない事だった……。


「糞が……っ!!」

「せやぁ……」


 彼らはシマシマの囚人服を着て、ヒイヒイ働かされる事になったぞ。




 高層ビルの周りを飛んでいると、頂上に人影が見えた。

 男マイシが腕を組んだまま突っ立っているようだ。こちらをキッと睨む。


「フン! どこぞの小娘か。気が変わらない内に去るんだな……」


 なんと風のハトが『分霊(スクナビコナ)』だと見抜いて警告してきたぞ。

 特に暴れだす事はないらしいから見て見ぬフリで飛び去った。

 なんで、こんな所にいるんだろう……?




 モエキさんが電柱の陰に隠れて、マンションの一室をグギギと睨んでいるけど、何しているんだろう?

 あそこはナッセさんとヤマミ先輩がいる部屋……。

 そうやってストーカーしてて飽きないのかな?




 ミキオとサラクはエンカウントしてて、戦闘中だった。


「行くよ!! 水波斬ッ!!」


 ミキオは剣で地面を何度も斬ると、そこから三日月の水の刃が走っていって目標へ炸裂した。

 ズザザザンッとモンスターたちが八つ裂きになっていく。

 斬撃を水の魔法によって地形を滑るように伝播させて遠くの敵を切り裂く新技のようだ。


「やるじゃねぇか!! 野外授業でレベルアップしてんな! 炎穿刃(えんせんば)ッ!!」


 サラクも槍を連続で突きまくると、切っ先から尖った炎の矢を飛ばして目標を爆撃。

 ボバババーンと爆炎が広がっていく。

 二人は威風堂々と背中を預け合ってドヤ顔。


 もう威力値が七〇〇〇超えている感じだった。グングン強くなっている。




 なんか肌が黒いフクダリウスがキョロキョロと挙動不審にうろついてて、周囲の人が戸惑っていた。


「ウガ……? ココドコダ? サッキノ少年ト黒髪女、ドコニイル??」


 こんなところで何しているんだろう?




 スミレって男が無数の呪符で包まれて、黒髪のブラクロに抱えられて歩いているのを見かけた。

 なんか「んぐーんぐー」とスミレが絶体絶命の様子……。

 行き先が派手なホテルっぽいので、一層暴れだすが、なすすべもなく入られてしまった。


 ぎしぎしあんあんぎしあんぎしあああんっ!!


 なんか搾り取られているみたいな雰囲気ではある。

 本当に何をしているんだろう?




 大阪近くの山付近へ飛んでいる。

 ここまで遠く行動範囲が届くようで、自分でも驚く。

 下を見れば人気のない獣道で邪険モリッカがフクダリウスがいた。なんか対峙しているみたいだ。


「貴様に監視されるなどたくさんだ!!」

「そうでもしないと何しでかすか分からんからな。奪うのが当たり前なのだろう?」

「望むものは己の力で手に入れる! それの何が悪い!?」

「悪いに決まっておるわ!」

「やかましい!!」


 邪険モリッカはピンク髪にボウッと染めて、赤いエーテルを全身から噴き上げた。


「ピーチ超モリッカか……」

「ロゼだと訂正してもらおうか! 死ね!!」


 鋭い攻撃を受けたフクダリウスは平然としてて、逆に両手で抱え込んで空高く飛んだ。

 あんな巨体なのに軽やかだ。

 邪険モリッカを逆さまにガッキィンと極めた。身動きできないぞ。


「や、やめろおおおお────ッ!!」


 フクダリウスと邪険モリッカ、そのまま二人キリモミ回転で急降下!!


「フクダリウス・ツイスタードライバーッ!!」


 ズガガアンッッ!!!


 超重量のフクダリウスが全体重を乗せたまま、邪険モリッカの脳天を地面に叩きつけた!!

 邪険モリッカは表情を歪めて「モガバッ!」と吐血し、そのまま横たわった。

 ピクピク痙攣している彼をフクダリウスは肩に抱えて帰っていった。


 さすがは先輩。凄いなぁ……。

 ん? あの黒いフクダリウスは別人……??




 コマエモン先輩が真剣な顔でナンパしているみたいだ。


「緊縛プレイに興味ござらんか?」

「変態!! キモー!」


 プイと女にそっぽ向かれて、コマエモンはプルプル震えている。

 なんと恍惚しているのか赤面して嬉しそうな顔をしていたぞ。

 断られ続けてきたせいか、マゾ性癖に目覚めつつあるようだ……。近寄らないでおこう。




 繁華街でミナトとミャコがラブラブな感じでデートしていた。

 腕を組んで手で繋ぎ合ってて、見るのも恥ずかしいくらい楽しそうにイチャイチャしている。

 誰か知っている人がいないと、こんな風になるんだなぁ……。

 なんかピンクで派手なホテルへ入っていった。


「にゃああああ~~んっっ!!!」


 なんか幸せそうな声が聞こえた。本当なにしているんだろう?

 マッサージしてるのかな、絶えずギシギシ音がする。




 ノーヴェンが別荘のプールで複数の婚約者とナニしているのまで目撃してしまい、恥ずかしくなって飛び去った。

 語るのも憚れるほど過激なプレイを繰り返す羞恥肉林の様相だった。

 あれが本物のハーレムって事なんだと思う。

 うわぁ……。引く……。




 帰ってきたハトが窓をくぐって、エガラの肩へ滑空して消えていった。

 その晩、全て見てきた事を手帳に書き記した。

 エガラは純粋な女性である。悪者だったら弱味を握ってなにか仕掛けていたのだろうが、彼女はそんな発想などなかった。

 ただ創作士(クリエイター)の記録をしているだけだった。


 遠い未来、彼女の大量に書き記した恥ずかしい記録が明らかにされて、後に英雄と呼ばれる人物像に付け加えられてしまうのはまた別の話だぞ。

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