345話「つるかめ波を叫ぶ幼馴染!」
帰宅しようと教室を出ようとすると、サラクが待っていた。
「……パイセン付き合ってくれ」
「また相談かぞ? それはちょっと……」
「私たち、みんなが想像しているような明るいリア充じゃないわよ」
ゲンナリしてヤマミと一緒に断ろうとしたが、サラクは首を振った。
咥えている魚の骨を揺らす。
「ミキオの様子が最近おかしいんだ。カフェに来るみたいだから一緒に付き合ってくれ」
「仲良しこよしじゃなかったっけ?」
しかしサラクは首を振るのみだ。
仕方なくカフェまで一緒に行ったぞ。そしてなぜかサラクが「こっちこっち」と手招きして、席に着く。
となりが塀みたいに仕切られていて、その向こうにミキオが座っている。
「ミキオのやつ、カフェで誰かと会うみたいだ」
スタスタと誰か知らん男が歩いてきて、ミキオと向き合うように座ったようだ。
「待たせましたか?」
「それで出雲ミヒト、何の話?」
「なぜにフルネーム呼び……? ともかく恋愛関係の話です」
「あっ!?」
ミキオが誰かと話ししてるみてーだ。ミヒトって名前か。
「前からミキオさんに秘密にしてきた事があります。僕はずっと前から下条キョウコちゃんに恋心を抱いていました」
「そ……そうなのか!? へぇ、キョウコちゃん好きなのか」
「あなたはキョウコちゃんと幼馴染でしたね」
「ん、ああ。腐れ縁ってやつかな……」
「本当にそれだけですか?」
マジ恋バナしてるみてーだ。
チラッとサラクへ見やると「しっ」と、立てた人差し指を自身の口元に当ててきた。
ミキオの相手は育ちのいい坊ちゃんみたいな感じで、ミキオの幼馴染であるキョウコに恋している。
「僕はもう抑える事ができない。もうこんな年ですし、これ以上気持ちを隠して生活などできるわけないです。ミキオさん、あなたはどうですか? 本当の気持ちはどうなんですか?」
「な……何の話をしているんだ??」
「あなたは僕の大切な友達だ。だからこそ抜け駆けも寝取りするような事もしたくありません。ですので、一日だけは待ってあげます」
どっかで見たような展開がするが、気にしないでおこう。
さすがにミキオが自分の境遇に絶望しまくって闇落ちする展開なんてありえないしなぁ……。
「僕、明日の放課後にキョウコちゃんに告白します! 成功したらチューします! そんでラブホ行きます! 責任を取って結婚までします!! そしたら仲人頼まれてくれませんか!」
「なん…………だと…………!?」
塀で向こうは見えないが、ミキオがブ〇ーチみたいな驚き顔してるのが想像に浮かぶ。
そりゃそう。
相手のやつ、なんて事を考えてるんだぞ……!?
「それまで後悔しないよう、決めてください。キョウコちゃんに本当の気持ちを伝えるべきか」
なんか立ち上がって、お辞儀すると去っていった。注文の一つもせず。
しばらくすると、ガタッとミキオが立ち上がってタタタッと走り出してカフェを出て行ってしまった。注文の一つもせずにな……。
カフェのスタッフが嫌そうな顔をする。そりゃそうだろ。
「なぁ、どう思うよ?」
「何って?」
「本人次第じゃないの? 私たちが介入していい問題じゃないわ」
サラクは注文してたパフェが来ると、ストローですすった。チューズゾゾ。
オレたちも注文してきたものが来るといただいた。
「キョウコちゃんはミキオの幼馴染。ピアニストらしいけど怪我して二度と弾けないらしい」
「欠損しても再生できるこの世界に何言ってんだ? おめぇ」
「そうね。それでなくてもDNAレベルで少しずつ内部から治っていくから、また弾けるようになるわよ」
「身も蓋もねーな……」
サラクはサクランボを種ごとガリッポリポリ噛み砕いてゴックンした。少し引く。
オレはヤマミに目配せする。コクリと頷いてくれる。
ミキオは夕日が沈んだばかりの滲んだ夜空を見やる。
スタスタと病院へ歩いていくようだ。その背中にヤマミの小人が潜んでいた。
しばらくすると大きな病院に着いたぞ。
中に入ってエスカレーターで六階まで上がって行き、病室前まで来ると扉を開いた。シャー。
「キョウコちゃん……?」
なんとキョウコちゃんがベッドの上でガニ股で立ち震えながら、なにか踏ん張ってるみたいだ。
一見すれば灰色のロングヘアーで巨乳のスタイル抜群な体の美人だ。しかし腹が痛いみたいで変なポーズになっている。
なんか苦しそうな顔でギリギイイと歯軋りしている。
「どっか痛いn」
「つるかめ波ァア~~~~!!!」
真剣な顔で某漫画の必殺技を叫んで両手を突き出していた。
ミキオは手に持っていたカバンを取り落とした。ボタッ。
「はっ!? ミ、ミキオくんっ!? ぐあああああ~~~~!! 右手がァ~右手がァ~!」
見られた事に気づいて赤面して、今度は右手に左手を添えて痛がるフリをしてベッドを転がる。
「元気そうでよかったよ。じゃ」
ピシャリ、と扉を閉めた。
すると急に扉を開けてきて、泣きながらミキオに抱きついてきたぞ。
「ミキオく~ん!! 見捨てないでええええ~~!!」
「もう全然動くなら、さっさと退院しろよっ!! 心配して損したっ!!」
「見捨てないでぇ~~!! お願いだから見捨てないでぇ~~!!」
泣すがるキョウコちゃんを、うっとおしいとミキオは跳ね除けようと力比べする。ぐぎぎ!
手と手で組んで力比べだ。互いにブリッジさせたりさせられたりと全然元気なようだ。
しばししてハァハァ息を切らして、二人は落ち着いた。
キョウコちゃんはベッドへ戻り、そのそばでミキオがイスに座る。
「実はピアノ弾くの、本当は好きじゃないのよ……」
「……だからか」
夜景の窓を見て、キョウコちゃんはため息をつく。
「だからって病院に留まっても何も解決しないんだろ? 親も心配してると思う」
「ミキオくん……あなたは私をいじめているの?」
キョウコちゃんは据わった目でミキオへ振り向く。
「え……?」
「なんで「さっさと退院して厳しい親の元へ帰れ」って言うの? 嫌がらせのつもり?」
「え…………??」
「私は嫌なのよ! またピアノ漬けの毎日が!! 母に監禁同然に束縛されてムチ打たれながらピアノ以外やらせてくれやしないのよ!! それなのに戻れって?」
「キョウコちゃんっ!!」
「好きに創作士やってるアナタには、この気持ちが分からないでしょうね!」
苦悩して枕へ抱きつくキョウコちゃん。くうっ……。
「……つるかめ波」
ミキオは冷めた目でそう呟く。キョウコちゃんはボッと赤面した。湯気が立ち上る。
黒歴史恥ずか死過ぎて「ぎゃあああ~~!! 死ぬ死ぬぅ!」とベッドの上でゴロゴロ悶える。
「好きじゃないんなら辞めれば? いつまで病院に閉じこもっても前に進めやしない。奇跡も魔法もないんだよ」
「魔法はガチでありますよね……?」
「分かってるわい。一度は言ってみたかった某アニメの名セリフだっ!」
そう言い、ふうと一息をつくとミキオは立ち上がる。
「ミキオくん……」
「こっちは真剣に命懸けでモンスターとかと戦っている。いつ命を落とすか分からない。ナッセさんだって、一見すればリア充だけど、人造人間大侵攻や四首領二人とも命懸けで戦い抜いた英雄だよ。下手すれば日本が消し飛ぶ事もあった。世界が滅びかねない事もあった。……俺はそんな英雄に嫉妬しててバカみたいだって思ったよ」
クルリと変な角度で傾けた顔で後ろへ振り返る。シャ〇度……。
されど切ない顔をしていた。
「わ……わたし……は!」
「ま、俺はサラクと付き合ってるからな。いつでもラブラブチュッチュさ……」
「あのっ! ちょっ、なんか爆弾発言してませんか~!?」
衝撃を受けたキョウコちゃんは手を向けて呼び止めようとするも、ミキオは行ってしまう。
「ミキオくん……サラクって誰なの…………? 私がいながらも…………」ギギギ!
モエキ同様、悔しそうな顔で歯軋り2。またかよ。




