341話「野外授業⑯ 一触即発!!」
クスモさんがアニマンガー学院の会議室を借りて、携帯で呼び集めたナッセたちと集合した。
ちなみに一年生のミャコ&ミナト、ミキオ&サラク、キンゴロー、ピイロ、コンドリオン、マレン、ジャロ&ナノンは帰らした。
同じ一年生でもナガレ、エガラ、カグヒメル、モエキは気になってか残った。
モエキがオレを見てるからうっとおしいぞ……。
クスモさんは咳払い。
「よく集まってくれた。……各々、あの遺跡型『洞窟』で何が起きたか、各自で説明して欲しい」
オレ&ヤマミは謎の少女ナリア。
フクダリウス&モリッカは邪険モリッカ。
リョーコ&コハクは普通に探索してたので驚いている。
エレナ&スミレはリョーコさん。
ノーヴェン&コマエモンは下僕コマエモン。
マイシ&ミコトは男マイシと妖精王マイシ。
クスモさん&エリは勇者ナッセと魔法少女リョーコ。
邪険モリッカが鋭い視線で一瞥してくる。
ナリアは竦んでオレの後ろへサッと隠れてコソ見する。
「ほう……、かの天才少女ナリアと“叡智”ノーヴェンの下僕コマエモン、そしてリョーコとマイシまで生きてたか……!」
「フン! きさまもな……。弱小のくせに意外だったぜ」
殺意バリバリで男マイシが腕を組んだまま挑発気味に笑む。
邪険モリッカも殺意を向けて火花が散るようだ。
「ケンカはよろしくありません。また凍らせますし」
「ちっ!」
「ぬ……?」
冷淡な妖精王マイシが割って入ったので男マイシは顔を背けた。
邪険モリッカは怪訝な顔で見やるが、ただものではない雰囲気を感じ取ってか黙り込んだ。
「どうでもいいわ。だけど……ナッセが二人もいる。説明してくれない?」
なんか筋肉ムキムキなリョーコさんが無感情な顔で聞いてきたぞ。
オレはヤマミと顔を合わせる。
更に勇者ナッセも魔法少女リョーコと顔を見合わせた。
「ああ、オレはこの世界のナッセだ」
「こっちは勇者と名乗っているナッセだお。リョーコとはライバル関係だお」
「そーそー、付き合ってるとかじゃないからね」
「うんうん」
「ねー」
みんなもオレもヤマミも「……」と勇者ナッセと魔法少女リョーコの掛け合いに注視した。
「なっ!? なんでこっちを見るんだお!?」
「なんでなのよー!? いつもそういう目で見るわよねー?」
勇者ナッセと魔法少女リョーコは慌てて頬を赤く染めた。
まさかイチャイチャしてると思われた、と焦ってるようだ。
「そうか……良かった…………」
リョーコさんが安心したように安堵の笑みを見せてきた。
悟ったような穏やかな顔である。
「すごく嬉しい」
誰もがリョーコさんへ注目したまま……。
「少しだけ救われた」
何かが晴れたような雰囲気がした。
リョーコさんからは、なにかやるせない想いが滲んでいたからだ。
何があったかは知らないが、心の傷が深い事だけは察し取れる。大切な者を失った。
恐らく……そっち側のオレはもう死んでる…………。
リョーコさんはとめどもない涙を流し、穏やかな笑みを見せていたからだ。
そして別世界とは言え、勇者ナッセと魔法少女リョーコが付き合っていると確信したからなのだろう。
スミレは安堵していた。
もしナッセとヤマミだけだったら煮え切らなかっただろう……。
クスモさんがナッセとリョーコのカップルを連れて来てくれた事が、この上にない僥倖か。
「もがもが……」
「悪いけど黙っててくれ」
相変わらずスミレがエレナの口を塞いでいる。
ナイスフォロー。助かる。エレナって余計な事口走るもんな……。
「それはそうとして聞こうか?」
邪険モリッカが尋問気味に脅すみたいな感じで口を出す。
「この世界に『聖愛』が……」
ガッ!!
なんと一瞬にしてリョーコさんが邪険モリッカの首を掴む。
捻じ切れんばかりに絞められて「が……ガッ!!」と邪険モリッカが苦悶する。
誰もが戦慄で竦む。ナリアも怯えてオレを掴む力が強くなる。
「黙れ……!!」
ドスの利いた声、恐ろしい形相で邪険モリッカを睨む。
そしてこもれでる恐ろしい威圧で、周囲がはち切れんばかりにキシキシ軋む。
オレは察した、一触即発。リョーコさんは何を代償にしたか知らないが、四首領クラスの強さに跳ね上がっている。
しかも今、本気を出していないのに圧倒的だ……。
「あんたらのせいで!! ナッセが!! ナッセが殺されなければいけないのッ!!?」
「ぐが……ッ!!」
泡を吹く邪険モリッカに、オレはつい「いけねぇ、死ぬぞッ!!」と叫ぶ。
しばししてリョーコさんは必死に殺意を抑え込んだのか、落ち着いてきたのが背中から見て取れる。
離された邪険モリッカは失禁して尻餅をついた。白目で気絶してる。
「……コマエモン!」ズ……!
今度は殺意を孕む視線を下僕コマエモンにも向けてきた。ゾッ!
下僕コマエモンはビクッと竦み、恐怖で震えながら腰の刀に手を置こうとするが、もう一人のコマエモンが「止せ!」と手首を強く掴んだ。
「済まぬ……。そちらの世界でどういう抗争が起きたか大体察するが、この場は収めてくれるとありがたい」
コマエモンは真摯に頭を下げて、そのまま動かない。
はぁーふぅー、息を切らして下僕コマエモンは冷や汗たっぷりに固まったままだ。
オレは息を呑む。まさに一触即発。
勇者ナッセと魔法少女リョーコは青ざめていた。
「えぇ……何かあったのかお?」
「うんうん。なーんか殺伐してない??」
険しい顔をするクスモさんは一息をついた。
「ここはこちら側の世界だ。落ち着いてくれ。まず『聖愛』は聞いた事もない。そしてそれに関する抗争は起きていない」
「そう……」
無感情のリョーコさんは引き下がった。
下僕コマエモンはガタガタ震えながら茫然自失しながらへたり込んだ。
下手すればミンチにされかねないと恐怖に包まれただろう。しばらくは震え続けるだろう。
ワケが分からないリョーコは怪訝そうに首を傾げた。
「なんでそっちのコマエモンに恨み持ってんのー??」
「説明しマース。このコマエモンは向こう側の四首領“叡智”ノーヴェンの部下だったそうデース」
「うむ」
オレとヤマミはナリアへ振り向く。思わずナリアはビクッと竦む。
「確か『聖愛戦争』ってたっけ?」
「ノーヴェンが全部持ってって、それで星獣召喚して地球を滅ぼしたんだから、あたしは関係ない!」
ナリアは必死に弁解し、ブンブン首を振る。
そんな少女をリョーコさんが睨んだ。
「……ナリア? ナッセと戦ったよね? クロダリウスで殺そうと……」
「ヒッ」
殺意を噴き上がらせるリョーコさんにナリアが恐怖で竦む。
「頼むからやめてくれぞ! リョーコさん落ち着いてくれ!!」
オレが慌てて席を立ち制止の腕を伸ばして、リョーコさんと真っ直ぐ視線が合う。
緊迫して唾を飲み込む。
リョーコさんの目にハイライトが宿っていない……。病んでる……。
「そいつを庇うの?」
「オレが戦った! 隷属されてたクロダリウスも逃がしたから、コイツはもう何もできない」
席を立ってヤマミがオレと並ぶ。
「確かに出会った時は、殺すが当たり前のように食ってかかったからね。恨む気持ちは分かるわ」
「でもオレが戦って勝った! コイツとは決着はついた!」
「ええ!」
しばしリョーコさんが無表情で見つめてくるが「そう……」と切なく目を逸らす。
オレとヤマミに庇われて、ナリアは悔しげに俯く。
「……その目、嘘ついてないわね。分かったわ」
リョーコさんは目を伏せた。
ふう、と安堵するオレ。
この事もレポートに書いていいか迷うなぞ。
いやつーか、こいつら地球滅んでて帰るところねぇんだよな…………?




