339話「野外授業⑭ モブモブモブ!」
あんまり活躍してこなかったが『騎手』楓クスモさんは、巨大な銀狼フェンリルを駆る凄腕の女創作士だ。
「くれぐれも油断しないでくれ」
「はい」「はい」
一年生のモブ二人はブッキーを手に返事。
「ううう……、わっし戦闘向きじゃないというのに……」
ナッセたちと同級生のモブである生駒エリはジト目で震えていた。
彼女は地味な丸メガネで紫のオカッパで白衣を着た女研究生だ。
しかしクスモさんは快く笑う。
「何を言うか。生産型創作士ながら威力値が三五〇〇ものベテランだから頼りにされているって事だ」
「毒とか麻痺とか状態異常を振りまいて戦ってたらレベルアップしてただけだぞ……。とても剣とか槍とかで戦えるタイプじゃあないんだぞ……」
「回復薬も常備しているのだろう? サポーターとしても頼りにしている」
「むう……」
芸能型や生産型の創作士はさほど戦闘力は高くない。
大抵の場合は威力値が一〇〇〇もいかない。
その代わり、それぞれの得意分野で特化しているものが多く、社会に絶大な貢献を上げていた。
エリは生産型の中でも戦える珍しいタイプのようだ……。
「人造人間とか一年生の時に起きた事件のせいで、こうなっただけだからな?」
丸メガネの女研究性はブチブチ愚痴っていた。
「モンスター出てきました!」
「迎え撃ちます!」
一年生のモブ二人が構える。
【ゾゾンビ(アンデット族)】
威力値:850
遺跡によくいるゾンビ。腐食したヒトの死体というデザインなので、実際の死体がモンスター化したわけではない。強くはないがグロい見た目でこんなネーミング。下級下位種。
【キモミイラ(アンデット族)】
威力値:1050
遺跡によくいる包帯男。腐食したヒトのミイラに包帯を巻いたデザインなので、実際のミイラがモンスター化したわけではない。キモいからが理由のネーミング。下級下位種。
【ガチガイコツ(アンデット族)】
威力値:730
遺跡によくいる魔法を使うアンデットモンスター。頭蓋骨にコウモリの翼を生やしたデザインなので、実際の頭蓋骨がモンスター化したわけではない。
歯をガチガチ鳴らすから、こんなネーミング。下級下位種。
「毛部ジャロ!! 魔法行きます!!」
地味顔でソバカス、茶髪のマッシュヘアー。黄土色のローブ。男魔道士。杖型のブッキーを掲げて、火炎球の『衛星』を浮かす。ボウッ!
杖を振り下ろして「ホノビ散弾!!」と叫ぶと、無数の火炎弾を斉射した。
「「「ギアアアアア……ッ!!!」」」
何体かのアンデットモンスターを燃やすが、撃ち漏らした残りが襲いかかってくる。
「慈美ナノン! こちらで白兵戦します!」
目が点っぽいパッとしない顔つきで半分けのボサボサ黒髪。肩当てと胴のプレートと簡素な衣服。男剣士。
剣型のブッキーを振るって残りのアンデットモンスターを切り裂いていった。
魔法のジャロと剣のナノンがコンビネーションでモンスターを難なく片付けていく。
「ふむ、一年生も侮れぬな」
「ジャロの威力値は一五〇〇。ナノンの威力値は一七五〇ってトコか……」
丸メガネをクイッとしながらエリは分析していた。
他の一年生と比べれば、全然強くないかもしれないが頑張っている。
「ホノバーンッ!!」
ドオオンッ!!!
ジャロが大きな火炎球を放ち、最後のアンデットモンスターを燃え盛る火柱で包んだ。
これでモンスターは全滅。
モブ二人は「ふう……」と一息つく。
「よし、油断なく進んでいこう!」
「……ケガしたら回復薬配るから心配いらないからね」
「はい!」「はい!」
四人はさらに先を進んでいく。
紫の毒々しいカエル人間が一匹。敵意の目で「ゲロロロ……」と唸っている。
槍で構えているが、切っ先に毒が塗られているのは明白だ。
【ポイズンカエリン(亜人族)】
威力値:3200~4200
毒を持ったカエリン。ズル賢く、毒を伴った様々な武器を使う。下級中位種。
「行きます! ヒェラ散弾!!」
ジャロは両手に浮かした氷塊から、吹雪のような氷礫の弾幕を張った。
しかし毒ガエル人間はピョンピョン素早く跳ねてかわしながら、間合いを詰めてくるぞ。
「こっちで迎撃します! はあっ!!」
ナノンは剣を振るって、毒ガエル人間の槍とガンガン抗戦する。
しかし意外と大柄な毒ガエル人間の方が強いらしく、逆に押されている。槍の切っ先が掠り、ナノンは毒を受けてしまう。
「ぐうっ!」
「させないよ!! 毒消し薬!!」
エリは瓶から液体を放射し、それを操作してナノンの傷に命中させて解毒した。
再び活力を取り戻したナノンが気張って剣を振るう。
ジャロは地面から氷を這わせて毒ガエル人間の足を凍結させる。
「ゲロロッ!?」
「今だ!! はあっ!」
ナノンが剣を振り下ろすが、毒ガエル人間は苦悶しながらも槍で防ぐ。
足が動けないながらも地力の強さで、ナノンの攻勢を凌ぎきろうとする。
「ナノン退いて! ヒエピラァ!!」
ナノンは飛び退き、ジャロが大きな氷塊を撃ちだす。
毒ガエル人間は「ゲローッ!!」と槍で砕こうと構えるが、エリが飛ばしてきた麻痺液で体が動かなくなる。
迫る氷塊に絶句するしかない。
「ゲロアアアアアッ!!!」
ビキキッと凍結が覆って毒ガエル人間は白目で絶命した。
「エリ先輩、助かりました!」
「さすが先輩ですね」
「そのためにわっしがいるからな!」
モブ三人が和気藹々しているのを見てクスモさんは「心配いらないな」と顔を綻ばす。
この後も、手強いモンスターが出てきたりするけど頑張って撃退していった。
しかし、水晶っぽい地面に足を踏み入れてしまう。
「な、なんだここはっ!?」
「「「!!?」」」
クスモさんもモブ三人も、遺跡だった場所から水晶の世界みたいな所に出てしまって驚くしかない。
夜空には三つの衛星。そして両端の地平線を結ぶ帯。
「聞いた事があるよ。わっしは半信半疑だったけど、ここはきっと天王星で『鏡面世界』だよ!」
「ええっ!?」
「そうなんですか!?」
鏡面世界を知っていたらしいエリが切羽詰った顔で説明して、ジャロとナノンは竦む。
どういうわけか地球と繋がっている別世界みたいな感じ。
しかも並行世界と繋がっているらしく、アナザーという同一人物みたいな人間と遭遇する事もある。
最近になって存在感が強くなってきたらしい、と……。
「初耳です!」
「まさか実在するとは……!」
「ここは未知な上に危険だから引き返した方がいい!」
「ふむ」
エリは引き返す事を提案し、クスモさんは見渡しながら頷く。
「あー、いたいた!!」
「良かったよー! 人がいた!!」
なんとナッセとリョーコが走ってくるではないか。
あの英雄と偶然遭遇した、とジャロとナノンは恐縮と身を竦ませた。
しかしエリも「あれ? ヤマミと一緒じゃなかった? ……一年生は?」と疑問に持った。
クスモさんは怪訝な顔をする。
「アナザーのナッセとリョーコか?」




