338話「野外授業⑬ まさかの男マイシ!?」
水晶に囲まれたような奇妙な大地。空には三つの衛星があり、両端の地平線を結ぶ帯が見える。
マイシは仏頂面である者と対峙していた。
その後ろで鋭く見据えるミコトと、ナガレとエガラが戸惑いながら様子を窺っていた。
「てめぇは何者だし……!」
マイシの視線の先で、氷柱の上に腕を組んだまま立つ男がいた。
燃えるような色の赤髪が逆立ち、不敵な面構えと笑み。ズボンと一体化している赤いタンクトップとで細身ながらも鍛えられた筋肉が窺える。
エガラとナガレはそれを一目見て、とあるキャラを連想してしまった。
「ま……まるで……前髪が生えているべ……ベ〇ータみたい……です!」
「え、ええ……。青が赤になった違いがあるだけで……ベジー〇とそ……そっくりだ……!」
「某龍球のどもったセリフまで再現しなくていいZE」
デュエルディスクを左腕に装着しているミコトのツッコミに、エガラとナガレは「おまいう?」状態で疑惑の目を向けていた。
遊〇王って言わないでくれよNA!
「フン! オレはマイシだ!」
「なに!? てめぇもかし!?」
「なんだと!?」
女のマイシと男のマイシのようである。
髪の毛の色や態度がソックリなので、ほぼ同一人物のように見えるのは確かだ。
「クックック! ここは『鏡面世界』……! しかしまさか女のオレもいるとはな」
「どういう事か説明しやがれし!」
「いいだろう。説明してやる。ここは天王星の『鏡面世界』で、どういうわけか地球と繋がっているようだぜ……。そしてあらゆる並行世界と繋がっていると聞いたが、どうやら本当のようだな」
男マイシが自分なりに丁寧な説明で教えてくれたぞ。
そもそも遺跡型『洞窟』を探索していたのに、気づけば水晶の世界のようなのに踏み入れてしまっていた。
「ぱ……並行世界と繋がっている…………!?」
「ホントなの……??」
「オレのいる地球が滅んでしまったんでな、こうしてここを経由して別の住みやすい世界を探していたんだ。そこへ女のきさまが来るとはな……」
男マイシは女マイシを見下ろしながら、組んでいた腕を解けてグッと拳に握る。
「へっ、てめぇの住む世界が滅んでちゃ世話ねぇし……」
「聖愛云々の下らん戦争のせいでな。四首領のメガネヤローは頭にくるぜ……」
「なに!? 四首領……ヤミザキではないのか!?」
「ヤミザキだと!? なんだそれは!? こっちは日本の“叡智”ノーヴェンだ!」
マイシは見開く。
あのノーヴェンが、あそこでは四首領だというのだ。
こっちでは日本の総統ヤミザキになっているが、並行世界だからか別人になっているようである。
たまたまヤミザキではなくノーヴェンになってるだけで、他は同じかもしれない。あるいは全く違うかも知れない。
「ち……、こっちと違う四首領とはなし……!」
「フン! どうやらそっちの世界の四首領はずいぶん違うらしいな」
思わずナガレが「ほ……他の四首領は……どんな奴らなんですか?」と聞いてしまう。
男マイシはキッと視線を移してくる。
エガラはゴクッと息を飲む。
「日本の“叡智”ノーヴェン、中華の“天尊”シナヨリ、イスラエルの“賢者”ソロモォーン、“英雄”ダウートだったか……。だがメガネヤローのバカが星獣呼びやがったせいで、他もくたばってんだろうがな」
「インドの四首領は……こっちと……同じなんですね……」
「どもったようなセリフがクセになってんだNA」
エガラのセリフに、ミコトがビシッと突っ込んだZE!
「こっちは日本の“総統”ヤミザキ、アメリカの“皇帝”ヘイン、ローマの“教皇”エレサ、インドの“英雄”ダウートだし!」
「ほう!? ヤミザキ、ヘイン、エレサか……一体どんなヤツか興味あるぜ」
「そんなものどうでもいいし!」
「ああ、思い知らせる必要があるな! 本物のマイシがどっちかをな!」
「「かあっ!!」」
どっちのマイシもドウッと燃え上がるフォースを噴き上げ、全身を包むドラゴンに象っていった。
しかも更に連なるウロコ状のスパークが激しく迸っている。
膨れ上がった二人の威圧で、水晶の大地を揺るがし、台風のように烈風が吹き荒れて大小の破片を押し流していく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
「行くぞ!! 殺してやるぞ!! 女のマイシ!!」
「そっちこそなッ!」
ともに刀を振るって交差激突した! ガァンッ!!
周囲に凄まじい衝撃波がズァオッと吹き荒れ、氷柱などが薙ぎ倒されて破片に崩れ去っていく。
ミコトが「その瞬間【平和の使者】を発動するZE! オレとナガレとエガラへの戦闘ダメージをゼロにするZE!」とカードを発動して、変な使者が具現化されて対象をバリアで包んだ。
「「かああああああああああッ!!!!」」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!
二人のマイシは殺気バリバリで激しい剣戟を繰り返して、周囲に衝撃波を散らし続けて破壊が広がっていった。
もしかしたら惑星が震えているんじゃないかってくらい地響きは続いていた。
互いに一撃一撃入れてダメージを負って、傷ついていくが闘争心に衰えがない。
男だろうが女だろうが、同じドラゴンのマイシだ。
「「火竜の爆裂波動砲ッ!!!」」
鏡合わせのように二人のマイシが灼熱の極太波動を吐き出し、唸りを上げて衝突する。
ズッドオオオォォォオオンッ!!!
巨大な爆発球に膨れ上がって、水晶の大地を破壊しつくし、大小の破片が烈風に乗って吹き飛ばされていく。
轟音を伴って激しい地震が続き、キノコ雲が雄大に立ち上った。ゴゴゴ……!!
両者ともにほぼ互角だ。
「やっぱ姉さんも兄さんも……お……同じマイシだ……!」
「す……すごいですね…………!」
「まーだどもってるNA!」
煙幕が立ち込める最中、息を切らす二人のマイシは睨み合っていたが、ニッと好戦的に笑いあった。戦闘民族ですかい。
連なるウロコを象るスパークを迸らせながら身構えていたが、弾けたように両者地を蹴った。
気合いみなぎる刀が激突する瞬間! カッ!
「おやめなさいし!!」
なんと二人のマイシの刀を左右の手で受け止め、割って入った女がいた。
まさか素手で受け止めるとは思わず「な、なにッ!?」と驚愕に見開いていく。
気づけばピキキッと受け止めていた手から刀へ霜が広がっていく。
「無益な争いはやめてくださいし! そして『冷凍停止化』で、いかなる運動も停止してしまうし!」
なんと水色の女マイシがキッと二人のマイシを窘めた。
女マイシと姿がそっくりだが、水色のセミロングに薄水色のポンチョと足まで長い裾のドレス、後ろには二本の帯がたゆたう。
そして足元からはポコポコと沸騰するように青スミレみたいな花畑が咲き乱れ続けている。
「てめぇは!?」
「何者だしッ!?」
「……申し遅れましたし。わたしは氷雪の妖精王マイシですし」
背中から透き通るような薄水色の羽が四枚浮いている。
「ま……まさかの三人目のマイシが……出てくるなんて……!?」
「しかも……三人目の姉さんは……竜王ではなく……妖精王なんですかっ!?」
「もういい加減どもらなくていいZE」
驚いてて呆然する二人のマイシの間で、咲き乱れ続ける花畑へ静かに着地する氷雪マイシ。
「刀を収めてくださいし。同じマイシなんだから争わないでくださいし……」
コイツのせいでこれ以上戦えず、引き返すしかなかったし……。
ついでに男マイシも帰れる所を失っているのでついてきやがったし。くそったれ!




