334話「野外授業⑪ リョーコさんの最期……!?」
四首領“叡智”ノーヴェンは『王のメガネ宝物界』を解放して、数多のメガネから極太ビームを放ち、リョーコさんを追い詰めていくが……。
「いっせーの……」
追い詰められているというのに、リョーコさんは涼しい顔で拳にフォースを凝縮させていった。
そして溜まりきったのか、フッと姿をかき消した。
傲慢に笑んでいた四首領ノーヴェンは強張る。
「ホワイッ!!?」
なんと屈んでいたリョーコさんがノーヴェンの前に!?
爆発的に膨れ上がったフォースが水晶の大地を揺らし、拳を繰り出した。
「ギガント・クラッシュ!!!」
なんと怒りに満ちた巨人族の造形付加を備えたワンパンが水晶の大地を裂きながら繰り出された。
四首領ノーヴェンは胸元前で波紋を発生させ、巨大なメガネシールドを召喚。
そのまま巨人族のデカい拳が最高硬度っぽいメガネシールドさえ粉微塵に粉砕し、四首領ノーヴェンに直撃!
「ガハアアアッ!!」
半裸に装備した数多のメガネアーマーが砕け散り、遠くにまで吹っ飛ぶ。
白目で夥しい吐血し意識を失いそうになるが、ギッと歯軋りして意識を繋げた。
「もう一丁!」
なんと間近まで迫っていたリョーコさんが再び拳を繰り出す。
「ホワイッ!?」
「ミカエル・プレッシャー!!!」
なんと今度は上空から巨大な神様みたいなのが降臨し、極太の足で四首領ノーヴェンを叩き落とし、更に水晶の大地へ深く穿つように踏み貫いた。
周囲へ凄まじい余波が荒れ狂い数十キロ範囲が窪んでいった。
なおも衝撃波の嵐が数百キロにまで荒れ狂って、水晶の大地がメチャメチャに砕かれていった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
スミレとエレナとカグヒメルは「うわあああ!!!」と吹き荒れてくる烈風に堪えていたが、なぜ耐えられるかと疑問に持った。
あれだけの破壊だ。余波だけでも消し飛ぶ。
「……ったく!」
なんと竜紋ナッセが竜の鱗を連ねたような球状のシールドを張っていた。
そんな彼の背中にスミレたちは目を丸くした。
銀髪ツーブロック、右目に傷が走っていて、やさぐれたようなナッセは舌打ちする。
「今度は……ナッセなのか!?」
「ナッセッ!?」
「今度のナッセは雰囲気がまるで違うのう?」
「さっさと逃げろ、言いたいが吹き荒れている最中は動けないか」
本物のナッセに違いないが、リョーコさんと四首領ノーヴェン同様に別世界から来たやつだと察した。
生きているから、たぶん更に別の世界から……?
「簡潔に説明するぞ? この『鏡面世界』は、複数の並行世界が繋がっている。複数の同一人物が現れても不思議じゃあない。どんな危険人物が現れるか分からん。それに魔女ワンダーは危険だ。安易に踏み入れるな」
ぶっきらぼうな言い方ではあるが、ナッセらしい優しさが窺える。
「グ……がはッ……!」
数十分続いた余波と煙幕が収まると、血まみれの四首領ノーヴェンが震えながら立ち上がっていた。
リョーコさんが降りてきて、再び攻撃姿勢に構えていく。
「いっせーの……」
再び大地が震え上がるほどのフォースが膨れ上がって、四首領ノーヴェンは「グ……」と戦慄を帯びる。
「や……やはり、星獣から逃れる為に莫大な魔法力を使い込んだ直後では……ッ! これでは『天地喪失するメガネ』を出せぬか……!!」
「ヒドラ・ディザスターッ!!!!」
今度は無数の頭を備えたドラゴンが牙を剥く造形付加で、リョーコさんはラッシュパンチを繰り出した。
一発一発が国さえ粉砕するほどで、それが数百発とノーヴェンの全身を完膚なきまで穿った。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
大噴火のように水晶が際限なく砕かれた塵が噴き上げられて天高くまで伸びていく。
地震が続き、烈風が吹き荒れ続いている。
もはやオーバーキルでは、と思うほどに容赦のない猛攻だ。
「あっちのリョーコさんは斧使いではなくステゴロか。しかも幻獣とかみたいなネーミングの必殺技か……」
「もしかして戦士ではなく格闘僧バージョンのリョーコさんッ!?」
「リョーコ先輩はそんなすごい力を秘めておるか……。恐ろしい事じゃ」
沈黙する竜紋ナッセの後ろで、スミレたちは口々に言っていた。
ズズゥ……ンッ!!!
猛攻が収まったか、広範囲に吹き荒れた煙幕。
荒れ果てた水晶の大地で四首領ノーヴェンは血まみれで倒れていた。
「ウグ……がッ…………、あんな低俗に……このミーがッ!」
何度か血を吐いて咳き込む。
複雑骨折してて、内臓にも重大なダメージを負ってるかもしれない。
数々の致命傷で幾ばくもない命。
「いっせーの……」
なんとリョーコさんは攻撃姿勢に構え、全てを揺るがす膨大なフォースを溜めていく。
一生全てを賭けるかのような破滅的な搾り出し。
軋んだような唸りが響音し始めていく。
「ク……! 舐めるなヨ……!! ミーは、ミーはッ……何人たりとも殺される存在に非ずッ!!」
「もう……これで終わり…………おまえも……あたしも…………」
呻く四首領ノーヴェンを前に、和やかな顔でリョーコさんは更なるフォースを大きく巨大に膨らましていく。
大地が鳴動し、荒ぶる稲妻が迸る。
耳を押さえたくなるほどの不協和音は更に更に強まっていくぞ。
「ミーは常にアルティメット超越者として世界を見下ろすべき存在ッ!! 低俗に殺さるような無様なアクシデントなど許されるものカッ!!!!」
意地でも殺されまいと、上半身を必死に起き上がらせる。
そして折れた腕を震わせながら真上へ上げていく。
するとノーヴェンの後ろに時空間の波紋が広がっていって、ズズズッと術者を吸い寄せていく。
「あいつ逃げる気だッ!!!」
スミレは叫ぶ。しかし四首領ノーヴェンは「否定!!」と睨みつけてくる。
「こ……この『王のメガネ宝物界』はミーの特別な亜空間!! 中にいる限り永遠に存在し続けられる停止した空間ッ!! 術者たるミーが入ってしまえばエンド!! 誰たりともミーの亜空間へ踏み入れること叶わず、そして術者自身も出れないのだッ!! ミーは最強のまま永久に止まり続けるのダアアアアッ!!! ミーは永遠不滅なりッ!!」
「ドラゴン・ギガデストラクションッ!!!!」
リョーコさんが繰り出した拳から巨大なドラゴンを模る凄まじいフォースの奔流が一直線と放たれた。
水晶の大地を一直線と裂きながら四首領ノーヴェンを噛み砕かんと目指す。しかしニッと笑われて波紋の中へ逃れられてしまう。
通り過ぎたフォースの奔流は直進し続け、遥か遠くの小さな衛星へ直撃。瞬間、空を明るくするほどの大爆発が広がった。
ドオオオオオオオオンッ!!!!
震える大地と吹き荒れる烈風。
「一瞬遅かったッ!! 自分の時空間世界へ逃げられたかッ!!」
「自分でも抜け出せない言ってたがな……」
スミレが「ちくしょう」と悔しがるが、竜紋ナッセは冷静に呟く。
四首領ノーヴェンは自身が述べた通り、そのまま殺されるぐらいなら自分の亜空間へ入って永久に停止した世界で存在し続ける事を選んだのだろう。
ヒュウウウウウウ……、立ち込める煙幕が流されていく。
「ん……?」
リョーコさんが依然と仁王立ちしたままだ。
誓約通りだと、代償として力尽きて死んでしまうはず……?
「まだリョーコさんピンピンしてるッ!?」
「ノーヴェンを殺す事が目的であのパワーを得たのに、あれじゃからのう……」
スミレとエレナはカグヒメルの言葉に振り向いてハッとした。
「まさか……!」
「ノーヴェンを殺せない、ってなったって事はッ?」
「最期となる誓約の条件が満たされず、リョーコさんはずっとこのままなのか!?」
「ずっと強いままのバグッ!?」
そう、リョーコさんは四首領ノーヴェンを殺す事を条件として誓約を課して絶大なパワーを手に入れた。
本来なら殺した後、その代償として力尽きて死ぬ。
しかし四首領ノーヴェンが自分の亜空間で永久に存在し続ける事になって、おかしな現象になったぞ。
リョーコさんはノーヴェンを殺さない限り代償が払えないのだ。
だからピンピンしたままである。
「どうすんだよ!? このバグキャラ!!」
「ホントにねッ!」
「連れて帰るしかないかの……??」
気づけば竜紋ナッセいなくなってるし、呆然するしかないぜ……。




