333話「野外授業⑩ 四首領ノーヴェン生きてた!?」
ナッセをはじめとする大切な人を失い、その強いショックによりリョーコは大柄でムキムキなキャラに成り果てて四首領クラスに迫る力を得たらしいぞ。
「とにかく、このままにしておけない」
「そうだねッ」
「分からんがリョーコ先輩と別のリョーコって解釈でいいかのう?」
危惧したスミレとエレナは、落ち込んでいるリョーコを放っておけないと判断した。
事情が分からないカグヒメルは困惑中……。
あとモエキさんは気絶させられているので、床で横たわっている。
「リョーコさん! 一緒に帰ろう!」
「うんッ!」
悲愴にくれて俯いたままのリョーコにスミレとエレナは手を差し伸べる。
「その必要はありまセン!」
途端に凄まじく重い威圧が押し潰してくるかのように席巻した。ズゥ……ンッ!!
スミレもエレナもカグヒメルもゾクッと絶望色に覆われた。
途方もない悪意で満ちたドス黒い威圧……。
この遺跡型『洞窟』がミシミシと壊れそうなほどに振動している。
「こ……れは……ッ!?」
汗ドップリに濡れたスミレはぎこちなく振り返る。
エレナも顔真っ青でガチガチ震えている。カグヒメルも絶句している。
この威力値は一三三万!? 四首領クラスッ!?
ドドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!
赤いマントがなびき、黄金の縁のメガネを数多と身に付ける半裸ノーヴェンが一歩ずつ歩んできていた。
傲慢不遜と腕を組んで偉そう。
なぜか金髪バージョンの悪人面ノーヴェンといったところだ。
「HAHAHAHAHA!! オーワンダフル!!! さすがは『鏡面世界』デス! 例え地球が終わっても、他の並行世界さえ行ければリスタートできマス!!」
両腕を左右に広げて狂喜に笑ってくるノーヴェン。
「おまえ……ノーヴェンかッ!?」
「リョーコさんの次は、偉そうな王様タイプのノーヴェンッ!?」
「なんか色々と追いつかぬが……??」
ようやくゴールデンメガネノーヴェンが目を合わせてくる。
「フッ、低俗どもガ! ミーは四首領“叡智”ノーヴェン様よ!!」
思わずスミレもエレナも「なん……だと……ッ!!」と驚愕した。
まさかのあの変態っぽいノーヴェンが四首領だなんて、びっくりせざるを得ない。
「低俗ども……、ユーは自分の世界まで案内してもらおうカ!?」
「俺たちの世界まで来てどうする気だよ!?」
「聞かれるまでもないデス! もちろん『聖愛』を再び集めてミーの願いを叶えてもらい、その世界を支配するのデース!」
「セイ? なにそれッ!?」
急に沸いてきた『聖愛』でスミレもエレナも冷や汗いっぱいで戸惑う。
「フッ! わざわざ低俗どもに優しく説明してやる義理はありまセーン!! ミーが取るべき人生の分岐は今死ぬか、案内してから死ぬか、どっちのみダ!!」
傲慢なまでの悪意に身震いするしかない。
今までで知ってるノーヴェンとは似ても似つかぬ別人。同一人物に非ず。
……それでも死は絶対不可避!
もしナッセとヤマミがこの場にいたとしても皆殺しされるは確定!!
「生きてて良かった……!」
今度は別の方向から怖気が走るほどの殺気が膨れ上がった。ゾッ!!
「ナッセの仇……!!」
四首領ノーヴェンは凄まじい殺意を放つ方向へ見やると、噴火のように猛々しく噴き上がるオーラが視界に入った。
瞬時に生命の危機を感じ、警戒を最大に引き上げた。
そいつはリョーコさんだった。
「まず、その傲慢ヅラの鼻を折る!」
気づけばリョーコさんが瞬間移動のようにノーヴェンの間近に現れていて、デコピン。
パチンと、四首領ノーヴェンの尖った鼻がへし折れた。
「WHOOOOOOOOOO~~~~!!!」
鼻血をぶちまけ、両手で鼻を押さえ激痛で仰け反る四首領ノーヴェン。
「ここは狭い。洞窟は壊したくない。来いよ。こっちだ」
スタスタと向こうへ行くとフッと掻き消える。
鼻血を流したまま激昂していくノーヴェンが睨み据え、後を追ってフッと消える。
スミレもエレナもカグヒメルも動けなかったがハッと我を取り戻す。
……恐らく鼻を折って挑発したんだろう。
「見に行く!!」
「あたしもッ!」
「わらわも!!」
横たわっているモエキの存在を忘れて三人はフッと消えて『鏡面世界』へ突入した。
水晶のような大地で氷柱や氷山などが視界に広がる冷えた世界。
スミレたちは「ここが……やつの言う『鏡面世界』ッ!?」と見渡す。
「む、二人とも戦う気満々じゃ!」
カグヒメルが指さした先に、ノーヴェンとリョーコさんが対峙していた。
二人とも圧倒的な高次元オーラ、つまりフォースを高々と噴き上げていて、地響きとともに烈風が吹き荒れ始めていった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
「方法は分かりませんガ……、潜在力をムリヤリ解放して急成長しましたネ! ミーに牙が届くレベルにまで!!」
無表情のリョーコさんの両目にはハイライトが宿っていない。
もはや大切なものも何もない……。
脳裏の走馬灯には、いつも内気で煮え切らない事もあるけど、純粋で優しくて、いざとなれば頼もしいナッセが映っていた。
一緒に笑いあえるほど楽しかった、あの頃は二度と来ない。
「もう」
愛しいナッセが殺された時から…………、あたしの人生は…………。
「……これで終わってもいいわ……」
「ホワイ!?」
「だから四首領ノーヴェン、貴様を殺すまで……ありったけを全て……!」
唐突に噴き上がる威圧が大地震さえ呼び起こす。
ナッセたちの仇である四首領ノーヴェンを前に、自分の人生すら投げ打つ誓約を課して想像を絶するフォースを噴き上げたのだ。
威力値が九五万だったのが、更に一六五万にまで跳ね上がったぞ。
さしもの四首領ノーヴェンですら冷や汗をかき「くっ!」と怖気付きそうになる。
「……リョーコ……さんっ!?」
スミレは青ざめた。
リョーコさんは四首領ノーヴェンを抹殺するだけが全てとなり、後先を考えてねぇ。
もしかしすれば終わったあと力尽きて死にかねない。
「HAHAHAHAHA!!! 寝言は言えデース!! この『王のメガネ宝物界』の恐怖を改めて思い知るがいいデース!!」
なんと四方八方から無数の波紋からメガネが抜けて出てくる。
「じ、時空間魔法!?」
「でもどっかで見た事あるッ!! ギルなんとかの宝貝と酷似ッ!!」
「じゃが今年は二〇一〇年じゃぞ? あのソシャゲはまだ……!」
「それは言うな!」
しかしリョーコさんは敵意の眼差しで睨むばかり。
「一つのメガネで一国さえ滅ぼす、それを身に受けたマエ!!!」
数多のメガネから極太ビームが幾重も屈折しながらリョーコさんへ殺到する!
ドグワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
甚大な大爆発を巻き起こし、まるで隕石でも落ちたかと思うほどの破壊力による余波が水晶の大地を深々とめくれあげて、粉々に砕く。
台風以上の烈風が吹き荒び、稲妻が所々迸っていった。
それでもリョーコさんは目にも映らぬ速度で避け続け、なおもメガネ極太ビームが屈折しながら執拗に追いかけてくる。
ドガドガドガガドガガアアアアアアンッ!!!!
あちこちで滅亡兵器級の大爆発が連鎖されていく。
スミレは「この破壊力! 日本なんて数分で消し飛ぶぞ!」と絶句するしかない。
それでもリョーコさんは一歩蹴れば遠くまで飛べる脚力でことごとく回避していく。
「いっせーの……」
執拗に追いかけてくる極太ビームの嵐に追われながら、リョーコさんは涼しい顔で拳に『増幅』でフォースを凝縮させ溜め続ける。
そしてフッと消えた。
傲慢に笑んでいた四首領ノーヴェンは強張る。




