331話「野外授業⑧ ミキオとサラクの奮戦!」
遺跡型『洞窟』の別ルート……。
リョーコとコハクが見守る最中で、ミキオとサラクがモンスターを前に身構えていた。
わらわらとワームが群がり、カエル人間が一匹。
【ミニサンドワーム(昆虫族)】
威力値:1500
クリーム色の小さなワーム。細長い身をくねらして移動する。先端の頭部には目がなく、丸い口がありギザギザの歯が生えていて、獲物を齧っていく。狭い隙間や潜った穴に潜んで獲物を捕食する。下級下位種。
【カエリン(亜人族)】
威力値:2500~3500
カエルがそのまま人型になったモンスター。ズル賢く、様々な武器を使う。下級中位種。
「行くよ!」
「へっ、言われるまでもねぇ!」
ミキオはブッキーを剣に変形させ、サラクはブッキーを槍に変形させ、共にダッシュ。
手際がよいスタートだ。
ワームの集団を剣や槍で素早く八つ裂きに散らし、後方にいたカエルを斜交いに切り裂いた。
「グゴオオオン!!!!」
カエルが断末魔とともに爆散し、ミキオとサラクはブッキーに収めて不敵に笑い合う。
息が合ってるなとリョーコは安堵の笑みを漏らし首を傾げた。
コハクはキリッとした顔で二人を見ていた。
「カエリンは知能が高く武器を器用に振るう手強いモンスターなのですが……、あの二人やりますね」キリッ!
リョーコはふと「ナッセはどうしてるんだろー?」とか耽った。
どうせヤマミと一緒に相変わらずやる事やってんでしょうが、と自己解決してしまう。
そもそも、ここいらの『洞窟』はそれほど手強いモンスターもいないので、むしろ一年生を鍛える為のもので、二年生は先輩として見守る側という感じで落ち着く。
たぶん先生はそういうのを想定してたんだろうけど……。
「次行くぞー」
「行くよ」
ミキオとサラクに呼ばれて、リョーコは「はいはい」とコハクと一緒に歩みだした。
相変わらずフロアごとに傾いてて、方向感覚が狂う。
コハクが『地図作成』をしてくれているけど、ダンジョン潜りするなら必須のスキルよね。
「そんなに難しくないスキルですがね」キリッ!
「魔法力を消耗するタイプは苦手なんだよねー。あたし戦士だし……」
「そうでしたね」キリッ!
コハクは槍士だけど、天才だから探索系スキルならお手の物なんだろう。
それにしてもキリッと引き締めるのいい加減にしてくれないかなぁ。
元々イケメンだし、多少は気を抜いててもいいんじゃないの。
しばし数十分歩いていく。
広い遺跡フロアに踏み込むと、わらわらとムカデが群れて、大きなサソリまで数匹あちこちから出てくる。
ミキオとサラクは身構える。
【ムカデデデデーン(昆虫族)】
威力値:1300
狭い所に住む大きなムカデ。イノシシぐらいなら巻きついて麻痺毒を注入して汁を吸う。天井から落ちてくる事もあるぞ。ネーミングがふざけている。下級下位種。
【イセキサソリ(昆虫族)】
威力値:1700
遺跡に潜むサソリ。防御力が高く、意外と素早い。万力のようなハサミで獲物を掴んだり引き裂いたりする。尻尾の沿っている毒針に刺されたら即死するだろう。下級下位種。
「行くよ! ブルーポンド・レインニードル!!」
ミキオは剣をかざして、水玉の『衛星』を浮かしてトゲトゲを射出していく。
サソリやムカデンを串刺しにしていくが、素早い数匹が襲いかかってくる。しかしサラクが笑みながら槍でズババッと裂いていく。
上から飛びかかるムカデの頭をミキオが剣でドスッと突き刺して霧散させた。
「おー助かるわ」
「どういたしまして」
もはや素直に認め合う二人に諍いはないようだった。
リョーコはナッセとヤマミのおかげって事かしらね、とため息をつく。
「順調のようですね」キリッ!
コハクがそう言い、リョーコとミキオとサラクと一緒に歩んでいく。
「リョーコ先輩、どこまでだっけな?」
「歩いて二時間くらいね。そこまではそれほど強いモンスターは出てこないからー」
「ええ。二時間くらい歩いてから引き返す。約四時間くらいになるでしょう。途中で休憩や昼飯を済ませる必要もありますが」キリッ!
魚の骨を咥えたままのサラクにリョーコとコハクはそう答える。
「先輩さんたち。終わったら学院に戻るんだっけ?」
「うん。帰ってきましたーって先生に告げてから、帰宅後にレポートを書いて来週までに提出って事ねー」
「こうして捜索中でもレポートをまとめるのもオーケーだそうです」キリッ!
ミキオの質問にもリョーコとコハクは返した。
二十分くらい歩いていると、等間隔に並ぶ柱の幅広い通路フロアに踏み入れた。
荘厳としていて、まるで古代に何かあったのかと錯覚するほどだ。
ズン、と踏む音が聞こえた。
「グルルルルゥ……!!」
ミキオとサラクは仰け反る。
六本足のライオンみたいなのが、恐ろしい形相で唸っていたからだ。体躯は象より大きい。
【イセキライオン(獣族)】
威力値:8700
広い遺跡で待ち構えるライオン。六本足で素早い動きが可能で、器用に前足で攻撃もできる。さらに広範囲に火炎ブレスを吐けるので危険だ。下級上位種。
リョーコとコハクにとっては何でもないザコだが、威力値が五〇〇〇以下のミキオとサラクにとっては脅威だろう。
「代わりにやってあげましょうか?」キリッ!
コハクが言ってくると、ミキオとサラクは唾を飲み込む。ゴクリ……。
後方にいるリョーコも斧をぶら下げている。
「いいや、俺たちでやる! やらなきゃ授業の意味ない!」
「へっ、そうこなくちゃな!」
ミキオが勇気を奮い立たせると、サラクもそれに便乗する。
ザッと剣と槍で身構える。
遺跡ライオンは「ガアアアッ!!!」と素早く滑るかのように肉薄してきた。
ミキオとサラクはそれぞれ横に飛び、ライオンが壁にズガアアアンと突っ込んで破片を飛び散らした。
「ブルーポンド・ウォータースプラッシュ!!」
水玉の『衛星』をそのまま射出して、遺跡ライオンが顔を出した時に被弾。破裂するように爆発し、水飛沫が四方八方に飛び散る。
それでも遺跡ライオンは「グガアッ」と仰け反る程度だ。
ミキオは舌打ちし、剣を振りかぶって飛びかかる。
「さやああああッ!!!」
それを遺跡ライオンはチャンスと飛びかかる事前運動を見せると、サラクが槍で後ろ足をザクッと突き刺した。
たまらず激痛で吠えている隙に、ミキオが渾身の一撃を振り下ろした。
右斜めの軌跡が遺跡ライオンの顔面に入り、血飛沫がドパッと噴き上げられた。
「グ、ガガアアアアアアッ!!!」
「チッ!」
「サラク!!」
巨大な体で暴れまわったので、近くのサラクは咄嗟に飛び退いた。
怒り狂った遺跡ライオンは火炎ブレスを吐き出した。ゴオオオオッと燃え盛る火炎が辺りを蹂躙してきたぞ。
ミキオは対抗しようと水玉の『衛星』を生み出す。
「ブルーポンド・レイン……」
「ガアッ!」
なんと遺跡ライオンがファイアーボールを吐いて、水玉を粉砕した。
絶句するミキオ。
「ミキオ危ねぇッ!!」
火炎地獄をも走り抜ける遺跡ライオンがミキオを噛み砕かんと襲いかかる刹那、サラクは槍を正眼に構えた。
キュオオオ……光子が集まって槍が光り輝いていく。
「紅蓮火箭掃ッ!!!」
サラクの槍から光線が放たれて、遺跡ライオンをも飲み込む赤紫の奇妙な業火が獰猛に燃え盛った。
凄まじい熱気が吹き荒れていって周囲がチリチリ乾燥されていく。
「グギャアアアアアアッ!!!!」
それでも遺跡ライオンもがいて火炎を跳ね除けようとする。
サラクは「ク……ッソ! 頼むからくたばってくれ!」と膝をつく。疲労が激しく息を切らしている。
遺跡ライオンが暴れだし、あちこちへドガンバゴン衝突を繰り返していた。
ミキオは飛び跳ねて、サラクへ駆け寄る。
「アアアアアアアアア……!!!!」
それでも燃え盛る赤紫の業火は遺跡ライオンを貪り食っている。
コハクも驚いてて「ヤマミの黒炎と似てますね……」と呟いた。リョーコはポカン。
ようやく倒れてジタバタもがいていた遺跡ライオンも動かなくなっていった。
「クソ……! これで力を使い果たしちまった……!」
「無茶しないでよ……サラク!」
「まぁ、でもおまえを危険な目に合わせるよかマシだがな……」
サラクが素敵な事を言ったので、ミキオはキュンと心を奪われた。
二人は唇を近づけ合って親愛の絡みに入った。
ちゅぱちゅっぱぺろぺろぱちゅぱちゅくぷくぷぱちゅっぱちゅっ!!
リョーコはBLキッスを目の辺りにして鼻血が出た……。眼福眼福……。
コハクはジト目で呆れた。




