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330話「野外授業⑦ モリッカ vs モリッカ!?」

「あっはっは~! まさかのまさか!?」


 険しい顔をするフクダリウスとは逆にモリッカは脳天気に、目の前のシリアス版モリッカをしげしげと見ている。

 シリアス版モリッカは訝しげにモリッカを見やる。


「なんだ貴様」


 気になったフクダリウスはモリッカへ見やる。


「モリッカ……親戚か何かか?」

「まさか~? こんな人、会った事ないですよ~? そっちこそクロダリウスいるんですか?」

「いや、こっちも知らん……。どういう事だ? この『洞窟(ダンジョン)』が生み出すニセモノか?」


 フクダリウスは戸惑うしかない。

 キンゴローとピイロは怪訝そうに、何が起きているのか分からない状態だ。

 同じモリッカが二人いるらしいって事だけだ。親戚か、他人の空似か、未だ分からない。


「そういう事か……。やはり『鏡面世界(ミラーワールド)』を知らんと見える」


 マジ顔のモリッカは目を瞑る。


鏡面世界(ミラーワールド)……?」

「そうだ。僕が来た先には鏡のような奇妙な水晶の世界が広がっている。そこでは数多の並行世界(パラレルワールド)と通じ合っている。向こうは天王星らしいが、僕にはどうでもいい事だ」

「むうっ!? す、すると別世界から来たモリッカだというのかっ!?」

「そうなるな」


 フクダリウスはわずかに見開く。

 ナッセから聞いた話だが、彼は『運命の鍵』で並行世界(パラレルワールド)を飛び越えてきた。

 それ以外に並行世界(パラレルワールド)と行き交いできる手段は存在しないはずだ。


「天王星……、太陽系第七惑星の事か?」

「それ以外に何がある?」

「なぜ、この地球と繋がっているのだ!?」

「僕も分からんが、確かな事は『鏡面世界(ミラーワールド)』の空に天王星であるべき五大衛星とリングが見えるからだな。何者かが介入しているのだろうが皆目がつかん」


 真面目モリッカは終始マジ顔で詳しく説明してくれた。

 ウソは言っていない。言っても仕方がない。こんなの荒唐無稽(こうとうむけい)な話、ウソで言っても仕方がないのだ。


「なぜ、ここへ来た?」

「……僕たちの地球は壊滅的打撃を受けた。もはや人類が住めるところではなくなった」

「「「なんとっ!!?」」」


 フクダリウス、キンゴロー、ピイロは驚く。

 モリッカは素っ頓狂な顔をする。


「故に、ここの『聖愛(セイハート)』をいただきに来た!」

「なんだ……それは!?」

「知らんか? こっちでは『聖愛(セイハート)戦争』があった。万物の願いを叶えるという奇跡Bランクの『聖愛(セイハート)』を巡って選ばれしものが殺し合うものだ」

「え~? セイハートなんての無いですよ~?」


 首を傾げるモリッカ。真面目モリッカは意に介さず話を続ける。


「この『聖愛(セイハート)戦争』のせいで星獣を呼び出されて、地球が滅んでしまったのだ。僕は命からがらここへ来た。同じように逃げ込んだ者もいるだろうが……」

「そんなもの聞いた事もない。ここを探したところで見つかりはしないぞ」


 険しい顔のフクダリウスはそう告げた。


「調べて見れば分かる事だ。いくつか並行世界(パラレルワールド)へ行ったが、正直ここで見つかるかもしれんからな」


 殺意を漲らせて歩んでくる。ズズ……!

 あっちで戦争を起こしただけあって殺伐しているのが分かる。話し合いで済ませる問題じゃあない。


「へぇ~、僕らとやるんですか~? いいですね~!」

「なんだ貴様は?」

「僕だってモリッカですよー?」

「む……」


 訝しげに顔をしかめる邪険モリッカ。

 床が爆ぜた瞬間、邪険モリッカの姿が忽然と消える。モリッカの背後へ周り、致命的な延髄への手刀を見舞う。


 ガッ!


 モリッカは振り向きもせず、左手で手刀を受け止めてシュウウと煙がこもれ出る。


「イキナリ不意打ちとは礼儀がいいですねー」

「ム!」


 バッと瞬時に離れる邪険モリッカに、ゆらりと振り向くモリッカ。

 固唾を呑むフクダリウスとキンゴローとピイロ。

 こうして二人が対峙しているのを見ていると、同じモリッカだと一目で分かる。


「こんなところでいがみ合うな! 話し合いして色々調べればいいだろう? ワシも協力するのはやぶさかではないが……」

「甘い事を言う……。馴れ合いがそっちのルールか? こっちの世界では奪うか奪われるかだ」

「いいですねー。面白そう」


 モリッカ同士で物騒な事を平然と言ってのける。フクダリウスは息を飲み込むしかない。

 邪険モリッカはすさんだような黒い目をしている。

 こっちのモリッカも色々失ってサイコパスみたいな明るい性格になっている。


「物分りがいい若造だ。さて……どかぬなら殺らせてもらう!」

「いやだなぁ。どいたらつまらないじゃないですかー? あなたと是非殺り合いたいんですよ」


 モリッカに雷魔法(デンガ系)が発動し、轟音とともに稲妻が全身を迸らせて青髪に輝いていく。

 邪険モリッカは見開くが、やがて不敵に笑んでいく。


「これがブルー超モリッカです!」

「ほう……、ならば本気を見せるしかあるまい!」


 なんと邪険モリッカも赤いエーテルをボワッと噴き出し、ピンク髪に輝いていくぞ。

 邪悪そうなケバい色だぞ。


「貴様のセンスに合わせれば、ロゼ超モリッカとでも言うか……」

「へぇー、ピーチ超モリッカなんですねー」

「ロゼだ! ロゼッ!!」

「ピーチです! ピーチで決まりですっ!!」

「貴様ぁ!!!」


 ムキになって言い合うモリッカ同士。やはり同じだとフクダリウスたちは察した。


「奪い合いなんでしょ? 僕が勝ったらピーチを名乗ってくださいよー」

「無用だ! なぜなら敗者は死すべきものだ!」

「そうですねー。あなたを殺した後、そっちがピーチだったと皆に言いふらしてあげましょう」

「貴様……!!」


 フッと二人のモリッカが互いに間合いを詰めて、目にも映らぬ程の超高速攻防戦が繰り広げられた。

 凄まじい激突が連鎖し、衝撃音が鳴り響いていく。

 互いに急所を狙い合う容赦のない攻撃を繰り出し、共に捌きあっている。


 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!


 数百数千と耐えぬ攻撃が繰り出され、掠った傷から血を噴く。

 二人のモリッカが極限の集中で睨み合いながら、急所を狙った攻撃を繰り出し続けている。

 フェイントも織り交ぜているのだろうが、同じモリッカだからか全て読み切っているようだ。

 徐々に掠り傷が増えていって、傷だらけになっていく。


「ううっ……!」


 フクダリウスは絶句するしかない。

 掠り傷だけでも蓄積していけば重傷になりうる。このままでは死闘になるしかない。

 だが、止められようがない。

 否、止められるのを避ける為に逆に格闘戦に持ち込んでいるのだ。


「どうするだす? 師匠!?」

「ヤバイで申す!」

「……あいつら、分かってて肉弾戦だけで終始するつもりだ。もし悠長に戦っていたなら割り込みしようがあるが……、それをされたくないから敢えてこうして邪魔を入れさせない」

「そんな事が……!?」


 血飛沫が舞い始めているが、モリッカたちは痛みすら感じないかのように鋭く急所を狙う攻撃を繰り出し続けている。

 掠りに掠って傷が刻まれていく。

 フクダリウスは「ぐぐっ……!」と堪えるしかない。


「もし無効化があれば、止められるのだろうが……」


 ナッセの能力が羨ましく思える。


「よーし! ならば更にレベルあげますよー! ゴッドヘヴンー!!」

「何!?」


 なんと更に凄まじい雷がモリッカに炸裂し、青髪がロングに伸びていく。

 ビビ……バチバチッと稲妻の嵐が迸り、周囲に凄まじい烈風が吹き荒れ続ける。

 膨れ上がった圧倒的な威圧感で、遺跡型『洞窟(ダンジョン)』が震え、ミシメシ軋み始めていくんだ。

 威力値は三〇万クラスだろうぜ……。


「これがブルーゴッド超モリッカです!!」

「な……!?」


 邪険モリッカはおののくが、大差ないだろうと思い鋭いパンチを繰り出す。

 しかしモリッカはカッと眼光を煌めかした。


 ドンッ!!!


 モリッカの超高速ボディブローが、邪険モリッカの胴を深く穿つ。


「げぼぼろあああああああああっ!!!」


 白目でゲロ吐きながら吹っ飛んで、ズザザッと床を滑っていって気を失った。

 仰向けでピクピクと痙攣する。

 元のモリッカへ戻って、倒れている邪険モリッカへ指さす。


「あっはっはー! ピーチ超モリッカに決まりですー!」


 勝ち誇って、ニヒッと明るく笑うモリッカ。

 フクダリウスとキンゴローとピイロは「……」と汗を垂らして眺めるしかない。

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