329話「野外授業⑥ キンゴロー&ピイロの奮戦だ!」
ナッセ&ヤマミとミャコ&ミナトは『鏡面世界』に踏み入れてしまい、フクダリウスそっくりのクロダリウスと殺戮少女ナリアと戦って勝つ。
クロダリウスは逃がし、ナリアを保護した。
一方その頃、同じ遺跡型『洞窟』でフクダリウス&モリッカ、キンゴロー&ピイロが緊迫して身構えていた。
「モリッカ、悪いが手を出すな」
「それじゃ一年生が戦うトコをじっと見守るんですかー?」
「そうだ。恐らくそれが趣旨の野外授業だからな」
「分かりましたよー。ここのモンスター全然弱いですからねー」
モリッカは楽しそうに待機している。
フクダリウスも手を出さないらしいので、キンゴローとピイロは余計緊迫していた。
目の前の数十体もの人魂モンスターへ飛びかかる。
【イセキのタマシイ(アンデット族)】
威力値:540
遺跡に出てくる人魂モンスター。薄紫に燃え上がる火の玉に嘆くような人面がある。物理攻撃が効かなさそうに見えるが、デザインでそうなってるだけで実は物理攻撃が効く。
実際の魂がモンスター化したわけではない。下級下位種。
キンゴローはブッキーから巨大な戦斧に変形させ「うぬううう!!」と人魂へ斬りかかる。
力任せに振り回している脳筋だが、その威力はかなりのものでバッサバッサモンスターを斬り捨てていく。
「「ピイイイイッ」」
人魂モンスターは火炎ブレスを一斉に吐く。
それでもピイロは巨大なカバ人間に変身して、ものともせず突貫して暴れ狂う。
「ヒッポーランページッ!!!」
凶暴なカバよろしく、怒り狂いながら太い前足と強力な口で手当たり次第に人魂モンスターを蹴散らしていっている。
するとキンゴローと鉢合わせになり、戦斧と前足が衝突して互い吹っ飛ぶ。
「「ぐうっ!!」」
どっちも壁に激突して要らぬダメージを受けてしまう。
モリッカは「あちゃ~」と額に手を当てる。
「問題はピイロの戦い方だな。味方の区別ができないとチームに組み込めん」
「そうなんですか~?」
「ああ、ずっとこの問題が解消できていない。だからまだ仮想対戦センターの大会には未だ不参加だ」
ピイロは一年生でぼっちだったが、小心者の性格だからだけではない。
戦い方にあり、味方を巻き込みかねないのが原因になっている。
特にミキオとサラクは「邪魔だ」と嫌がられてしまう。
だから一人で戦うしかなかった。ナッセと相談したが、フクダリウスとキンゴローに捕まって現在こうなってる。
人魂モンスターをキンゴローが殲滅させていった。
ピイロは人間に戻っていて「すまないと申す……」と項垂れてしまう。
「こういう事もあるだす。まだ探索は始まったばかりだす」
「ごめんと申す」
「ピイロ!」
フクダリウスに呼ばれ、ピイロはビクッと竦む。
「そのランページは使うな。カバに変身して身体能力は爆発的に上がるが、本能任せにすると今のようになる」
「そうは思っても……オラァこうでもしないと弱気のままと申す」
「むう……」
実は小心者なので、本能任せにしないと戦えないという欠点を抱えていた。
「その為の野外授業なんでしょー? こんな事でもないと、直す機会ないじゃないですかぁー!」
モリッカはのほほんと笑う。
ピイロは頷いて「確かに……」と気を奮い立てる。
「さぁ、行くぞ」
「はいだす!」「了解と申す!」
数十分歩いていると、またモンスターが現れる。
【イセキナイト(アンデット族)】
威力値:5500
遺跡に出てくるリビングアーマー。鎧だけで動いている。カブトの目が見えるところに光が二つある。素早い剣技で追い詰めてくるぞ。
物理攻撃が効かなさそうに見えるが、デザインでそうなってるだけで実は物理攻撃が効く。下級上位種。
ピイロは手強いモンスターと見て萎縮しそうになるが「逃げちゃダメだ」を連呼して、カバに変身する。
「ピイロ、行くだす!!」
キンゴローは巨大な戦斧を振りかぶって突進していく。
意を決してピイロも飛び出す。ランページがダメなら、前足で潰してやる。
「ヒッポーナックル!!!」
太い前足で殴りつけると、リビングアーマーが軽々と吹っ飛ぶ。そのまま玉突きで後方のリビングアーマーを押し倒してしまう。
その威力に我ながらとビックリする。
キンゴローはオーラを纏って戦斧で両断しまくっている。
「よおおし!! うがあああああっ!!!」
なんとピイロは全身からオーラを噴き上げたぞ。
信じられないぐらい身が軽くなり、ピイロ自身も驚く。そして自信が満ちてくる。
駆け出すと風のように速く走れ、殴りつけるとリビングアーマーが豆腐になったかのように粉々に砕け散る。
「ヒッポーキーック!!!」
飛び蹴りをかますと、軌道上のリビングアーマーを次々と貫通していく。
キンゴローを見て初めてオーラを放出したが、思いのほか強くて気分は爽快だとピイロは笑う。
これまでモンスターにビビってたのがバカバカしくなった。なんで気付かなかったんだろう。
「もう大丈夫そうですねー」
「うむ。これならチームを組んで参加できる日も近いな」
モリッカはニコニコで、フクダリウスは快く頷く。デビューは近そうだ。
ただの訓練では解消できなかったが、野外授業なら一発でできる事もある。それが授業としての一環だろう。
実戦を通じて多く学ぶ事もあるのだ。
あっという間にリビングアーマーは全滅してしまう。
その後も、キンゴローとピイロがコンビネーションで戦うぐらい徐々にレベルアップしていった。
「このまま順調にいけるだす!」
「どんどんいけると申す!」
調子に乗っているキンゴローとピイロ。しかしフクダリウスは「待て!」と足を止めた。
思わずキンゴローとピイロは慌てて足を止めた。
「どうしただす?」
「……人の気配がした! 気をつけろ」
「おやおや~? こんな所に人ですかぁ~?」
スタスタと足音を鳴らしてやってくる人にフクダリウスは怪訝な顔を見せる。
モリッカは相変わらず楽しそうな顔だ。
キンゴローとピイロは身構えて汗を垂らす。
やってきたのは細身の黒スーツ男。ただならぬ殺気が窺える。
「ナリアがいない……貴様クロダリウス……じゃないな? 向こう側のクロダリウスか?」
目つきが鋭い黒スーツの青年。黒い手袋をはめているようだ。
一見すれば優男。
「お前は……何者だ!?」
「ほう、そっちでは流暢に喋れるのか?」
笑みを浮かべ、ギラギラとする目を見せてくる。
フクダリウスは汗を垂らして「ムウッ……」と顔をしかめていく。
ただならぬ黒スーツ優男から殺意がこもれ出ているからだ
「まぁいい。自己紹介でもしておこうか。僕は……和久モリッカ!!」
マジ顔で右手の黒手袋の裾をグイッと引く。
顔つきとか仕草とか思いっきり別人だが、髪型がモリッカっぽいぞ。




