328話「野外授業⑤ ナリアが語る驚愕の終末!?」
オレはデカいクロダリウスを背負い、ヤマミがナリアを脇に抱えて、黄灰色の遺跡型『洞窟』へ戻ってこれた。
そしてゆっくりと二人を床に下ろす。
後から続いたミャコとミナトは黙ったままだ。
「ふう…………」
「お疲れ」
背後に居るミナトからギラギラするような殺意がこもれでている。
「なぜ殺さない?」
「あの手前、ああ言ったけどな」
「目を覚ましたところでこいつらは再び殺しに来る。そればかりか負けた事を恨んで報復を考える」
「分かってるわ。でもこういう男だからね」
ヤマミが振り返ってミナトに言い返す。
それでも怪訝なミナト。オロオロするミャコは「ミナト……」と呟く。
「まだ幼い女の子だ。殺すには気が引ける。殺人を当たり前に思っているガキを手前に説得は通じないから、あんな言い方してたけどな」
「ナッセさん……、ホッとしました」
オレが優しいと知って、ミャコは安堵しているようだ。
「ナッセさん甘い事を言っていると、いつか仇となるぞ」
「よく言われるよ。ミナト……あんたの言う事は間違ってねぇ。だけどオレが判断した事だ」
オレは立ち上がって、ミナトへ顔を向ける。
するとナリアは目をこすって「う……ん」と起き上がろうとする。最初はムニャムニャ寝ぼけていたが、状況を察してハッと目を覚まして、飛び退いた。
警戒するようにオレたちを睨み据えてくる。
「クロダリウス!! 起きなさい!!」
掌をかざすも、横たわっているクロダリウスは起きない。
「起きなさい!! 起きなさいったら!!」
「ムダだぞ。オレの奥義を食らったら、一定時間だけスキルを無効化される。ライフリンクで繋がってたせいでお前にも影響してる。あとライフリンクも解除されてっからな」
「くっ……!」
ナリアは懐からナイフを取り出し、躊躇なく自分の喉を突いた。
しかしグニャグニャとナイフが萎びたゴムみたいになってしまう。
「無効化」
オレの足元からポコポコと花畑が咲き乱れ、銀髪ロングが舞い上がるように伸びてて、背中から二枚の羽が浮かんでいる。
妖精王となったオレは毅然と掌をかざしている。
ナリアは「うう……あっ……!」と汗を垂らし後しざりしていく。
「死なせやしないさ。そしてこれ」
花吹雪を収束して、スイカほどの純白の鈴を生成。
それを軽く鳴らす。リーン……!
眩く暖かい光が広がっていって、ナリアの背中からドス黒い粘着性のスライムみたいなのが抜け出てボシュンと霧散していった。
同時にミナトからも少し黒いのが抜け出て霧散。
「トゥインクルサニー快晴の鈴。これで邪念は浄化された」
ナリアはポカンとして、本当に無垢な顔になっているようだった。
すると涙がこぼれて頬を伝っていく。
ペタンと尻を下ろし、ひっくひっくと泣きじゃくり始める。
「うえええええ~~~~!」
年相応の嗚咽。オレは屈んで優しく撫でた。
ミナトは変わり果てた少女に戸惑う。
「これは一体……?」
「ナッセは悪意や欲を浄化し、純真な心にしてしまう特殊能力があるわ」
「そんな事が……?」
「ナッセさんってすごい!」
影響を受けたミナトも素直に驚き、ミャコは目を輝かせた。
神秘的な妖精王の姿も相まってナッセを神格化するかのような眼差しだ。
「ウガ……??」
今度はクロダリウスが身を起こして、キョロキョロ見渡していた。
コイツも鈴の影響を受けたから暴れる事はないはずだが……?
「言葉分かるか? オレはナッセ。この少女の呪縛から解き放った」
「ア……アア……、アリガタイ……アリガタイ……」
感激するかのようにオレの左手を優しく両手で包み込んで握手する。
「オレ……、コイツニ支配サレテキタ。体イウコト聞カナイ、辛カッタ……。デモ自由アリガタイ……」
「あそこへ行けば『鏡面世界』へ戻れるぞ。帰れるか?」
「オボエテル。オボエテル……。ダイジョウブ。オレ、タイタン帰ル……!」
コクコク頷くと、クロダリウスは手を振って鏡面世界へ歩いて行った。
反転されたような『洞窟』を通って行くとフッと消えてしまった。
本人の言っている事から察するに、ナリアに支配されていても記憶はそのまま残っているので帰るまでのルートは覚えてたようだ。
そっちの方はもう解決した。
「ナリア」
「ふぇ?」
オレは屈んでナリアと見つめ合う。
「帰れるか?」
「いや……帰りたくない……」
悲しげな顔になって首を振りながら、こちらに縋り付いてきた。
「元の世界? 何があったんだぞ??」
「ダメなの!! もう地球は終わっている!! 終わってたから『鏡面世界』に逃げて別世界をあちこち行ってた! 戻れない! 戻りたくなああい!!」
切羽詰まった様子のナリアに、ヤマミもミナトもミャコも驚くしかない。
「地球は……終わってる!?」
「四首領が『聖愛』を揃えて……星獣を召喚したの! そこから莫大なエネルギーを抽出しようとしてた! でもダメだった!! 暴れだして大陸が大陸が……消し飛んでいく!! 火の海になっていく!! あたしはクロダリウスと一緒に『鏡面世界』へ逃げ込んで助かった!」
「星獣……!!?」
なんかトラウマだったのか、ナリアは頭を抱えてガタガタ震えだした。
オレも同じ事を体験しているので、恐ろしさは想像できた。
星獣が暴れだせば人類はなすすべなく滅ぶ。そうやって何度も終末を味わってきた。
「並行世界での出来事……。ナッセが仲良くなった星獣はここだけ……」
「ああ」
オレは仲良くなりたいと思って『運命の鍵』を星獣に打ち込んだ。
今は好友な関係を築いてて召喚獣になってる。
「あっちのオレはどうなってたんだ? まさか殺した??」
「ううん。死んだと聞いた。……かなりの実力者だったけど、四首領に殺された」
「ヤミザキに??」
「誰それ?? 日本の四首領はノーヴェンだよ!! メガネいっぱいのやつ! すごーく強かった! 多くの女で囲む大ハーレムしてた! でも……星獣に殺された!!」
オレとヤマミは「ええ……」とドン引きした。
まさかのノーヴェンが四首領?? あっちではまさかの大物に!? しかも大ハーレム!!?
そいつに向こうのオレは殺されてるって事か??
それでも星獣に殺されている!?
「まいったな……。帰すに帰せねぇな……」
オレの鈴を喰らって素直になっているから、ウソをついている可能性はゼロ。
ナリアは本当に帰る故郷を失っているのだ。
「もう並行世界へ渡る事はないと思ってたが、まさかそんな並行世界の事情を知れるとは思ってなかったな」
「そうね。でも、どうするの? ナリアは?」
「仕方ねぇな……、この『洞窟』で遭難した事にして創作士センターに預けよう」
「いや────!!! 一緒にいたーい!!」
なんとナリアがオレに抱きついて、スリスリ顔をこすりつけてくる。
「このたらし!」
腕を組んだヤマミにジト目で見られて、オレはドギマギしていく。
オレの『鈴』によって一時的に無垢な少女になってけど、このままずっと続いていればいいんだがなぁ……。
いずれはきっと殺人鬼の少女に戻るかも知れない。
「しょうがないわね。あなたってそういう男だもの」
「わりぃ……」
ジト目でヤマミに呆れられてしまう。
ミナトは困惑顔だ。でもミャコは少し安心している。さてどうすっかな……。
「帰りながら探検しましょ」
ヤマミに言われ「そうだな」と返す。
帰り道で遭遇したモンスターはミャコとミナトがバッタバッタ倒していってレベルアップしていった。
クロダリウスはと言うと『鏡面世界』でキョロキョロ見渡していた。
「ウガ……? ワカラナクナッタ? ナゼダ……??」
気絶して運ばれてたので当然覚えておらず、迷ってしまった。
仕方なく引き返して遺跡型『洞窟』へ戻ると、ナッセたちはいなくなっていた。
「アラ……?」ガーン!




