327話「野外授業④ 殺戮ガールとクロダリウス!」
銀髪ロングヘアーのロングコートを着た少女ナリアは、殺しが当たり前だと思っている。
そしてフクダリウスとそっくりな筋肉隆々のクロダリウス。
「だったら、そっちね」
なんと荒れた水晶の地面を這う三つの黒筋がナリアの足元へ迫り、黒炎が包む。
すると瞬時にクロダリウスの全身に黒炎が燃え盛って「グアアアアアア!!!」と悲鳴が響き渡る。
ナリアは「光よ、邪なる闇を祓え!」と手をかざして、クロダリウスを纏う黒炎を吹き飛ばした。
屈んだクロダリウスからブスブスと煙が昇っていく。
「ざーんねん。そこの女は目の付け所は良かったんだけどね。術者から殺せば、クロダリウスは何もできなくなる……そう思ったでしょー?」
黒い小人が踊りながら周回するヤマミに、ナリアは悪戯っぽく笑って余裕を見せつけている。
「そういう事してくるヤツは数えるのも下らなくなるくらいいたわ。でもねあたしは『騎手』だからね。自分の命をコイツに預けているからね。ライフリンクってやつ」
「ライフリンク……!?」
「そう」
知っている。『ライフリンク』で相方に自分の命を預ける誓約……。
術者への攻撃は全て相方に移し替えるので、一切のダメージは受け付けない。ただし、相方がダメージを受けて死ねば、術者も一緒に死ぬ。
ちなみに相方が痛い目にあっても、術者にその痛覚は伝わらない。
ただ、術者の命を相方に預けているのだ。
「コイツ……、クロダリウスもろとも死ぬ気でこれを!」
「なんて事を……!」
憤るミナトと、口に両手を当てるミャコ。
それでもナリアは鼻で笑う。
「ハン、コイツが死んだらあたしは料理されるでしょ? ぜんぜーん戦闘力高くないからね。そうされるぐらいなら一緒に死ぬわ」
べー、と舌を出して笑う。
オレは唾を飲み込む。どちらにしろクロダリウスを倒さねば少女は止まらない。
「久々の強敵よ! 本気出して叩き潰すからー!」
「ヴオオオ!」
遊びに本気を出す少女のように、ナリアは嬉々とする。
すると少女の両頬からズズズ……と赤い『刻印』が浮かび上がり、額に菱形が浮かぶ。
同時にクロダリウスの体表にも『刻印』が走っていく。
「これは……!?」
「お父さんのとそっくり!?」
オレもヤマミも驚愕する。四首領ヤミザキも『夕夏刻印』で、家族を含めて多くの人々を隷属させていた。
ありゃスゲーヤバかった。
なんせ支配した人々から魔法力を徴取して、ものすごい力を発揮もできるんですもん。
それと同じ事をしてるのか?
「我が眷属クロダリウス!! さぁ真なる力を解放して、闘争心のままに暴れ狂えー!!!」
「グワオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
咆哮するクロダリウスから圧倒的で獰猛なエーテルが立ち上っていく。
周囲を震撼させ、烈風が吹き荒れ、威力値が二〇万を越えていく。ゾクゾクと戦慄が背筋を走っていく。
ヤミザキとは逆に、隷属のクロダリウスに力を集約させているみてぇだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
天上の力とも思える圧倒的威圧を前に、ミナトとミャコは顔を真っ青に震えるしかない。
更にクロダリウスの右手から赤い巨大剣を生成された。ズンと重々しく地面に刺さる。
クロダリウスはそれを引き抜く。ズゥゥ……ン!
「ヤマミ!」
「うん、一緒に戦えばなんとかなるわ!」
吹き荒れる烈風の中で、オレとヤマミは並ぶ。
ヤマミは全身を光で包み、自ら容姿を変えて黒と紫色調の魔法少女のような特化形態に変えた。
オレは太陽の剣を、ヤマミは杖から刃を生やして、身構える。
「グチャグチャに壊しちゃえ────ッ!!!」
ナリアは明るく拳を突き上げて、クロダリウスをけしかける。
「ガアアアアアアアッ!!!!」
獰猛な突進で、大地を割る勢いで迫って来る。
手を合わせ、倍加し合ったオレとヤマミで刃を斜交いさせて、クロダリウスの巨大剣と激突!
ドオッ!!!
周囲に凄まじい衝撃波を広げ、氷のような大地や氷柱が粉々に吹き飛ばされていく。
「おおおおおおッ!!!」
「やあああああッ!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
オレとヤマミ、そしてクロダリウスの咆哮が重なる。
幾重の軌跡が数百数千と交わり、連鎖する激突によって衝撃波が発生し続けていった。
バリアに包まれたミャコとミナトも見開くしかない。
ズガガガガッガガガガッガッガガガガガッガガガガッガガガガッ!!!!
互い譲らない攻防戦だけで、周囲の地形が荒らされて、破片が烈風に乗って流されていく。
クロダリウスも鈍重そうな巨体にも見合わず、超高速の剣戟を繰り出してくる。一撃一撃が重いものの、オレとヤマミは小柄ながらも払い続けて互角に持ち込めている。
振り下ろされた巨大剣が大地を裂き、地平線の彼方まで飛沫を上げながら亀裂が走っていった。
「「ダブル・フォールッ!!!」」
飛び上がっていたオレとヤマミが一緒に得物を振り下ろし、その軌跡は斜交いした。
クロダリウスは「ガアアッ!!」と咄嗟に巨大剣をかざして二撃を受け止めた。
ズン、と足元から衝撃波の津波が広々と吹き荒れた。ゴゴゴッ!!!
「へぇ、やるじゃないの!? ここまでやりあえるなんてゾクゾクするわ」
ナリアは好戦的に笑む。
「ガアアアッ!!!」
クロダリウスは渾身の横薙ぎを喰らわしてくる。大気を切り裂いて衝撃波まで発生させるほどの重い一撃。
オレはヤマミと手を合わせ、倍加した技を繰り出す。
「スパークッ!!!」
居合抜きのような超高速の軌跡を描いて、稲妻が迸るかのよう。
ガッッ!!!
全てを揺るがし、衝撃波が広がり、烈風が破片や煙幕を押し流す。
しかもヤマミも「マジカルスパーク!!」とオレの刀身に重ねて威力を倍加させた。ミシリ、と嫌な音を立てて巨大剣に亀裂が走っていく。
バッキャアアアアンッ!!!!
なんと巨大剣が木っ端微塵に砕け散り、破片が四方八方に飛び去っていく。
ヤマミは盾を生み出し、オレはそれを足場に跳躍した。跳ね返すという盾の性質で天高く飛んだオレは光子を集めて太陽の剣を変形させていく。
ナリアは目を丸くし、その美しさに見惚れた。
クロダリウスの無骨な巨大剣と違い、美しく白く螺旋状の装飾を備えて、真っ直ぐ伸びる巨大な刀身。
「あれは──なに……!?」
「これがオレの銀河の剣ッ!!!」
クロダリウスは見上げて「グルガアアアアアッ!!」と吠えるが、足が黒光りする氷に包まれて身動きできない。
ヤマミは既に闇属性を混ぜた氷魔法で呪縛していた。
そのままオレは銀河の剣を振り下ろす。ナリアは絶句するしかない。
「ギャラクシィ・シャインフォール!!!!」
思いっきり振り下ろした銀河の剣で、クロダリウスの頭上を打ち、そのまま地面に叩き伏せた。
ズガガァン!!!!
氷のような大地がめり込み、土砂を巻き上げて、衝撃波の津波が周囲に吹き荒れていった。
クロダリウスは脳天を地面に打ち付けたまま、苦い顔で「グオハッ!!」と吐血する。
黒氷が砕け、そのまま巨体が沈んでズズゥンと横たわった。
ヤマミは拳に握って「やったわ!!」と歓喜する。
呆然するミナトとミャコ、そしてナリア。
「はっ! だけど、この程度即座に回復して────……」
ナリアは我を取り戻し、笑みながら掌をかざす。
しかしクロダリウスは微動だにしない。これまで起きるはずのない事態にナリアは見開いていく。
「致命的なダメージさえも即座に回復し、何度だって蘇る無敵無敗のクロダリウスが!? 何故──!!?」
「悪いな。オレの奥義を食らったらスキルを無効化される。ついでにライフリンクも解除された。寝ろ」
オレはナリアの背後に回っていて、振り向いてくる少女の額に指で突く。
睡眠魔法をかけて、ガクッと気を失っていくナリアを抱えた。
「……それどうすんの?」
「あっ!」
腕を組んで不機嫌なヤマミに、ナリアを抱えたオレはハッとした。
このまま未知の天王星に少女を放置するわけにもいかない。殺すのならともかく、行き倒れにさせておいて知らぬフリをするのも如何なものか……。
「ど……どうしよっか?」ハハ……!
乾いた笑いをするしかないオレだった……。




