325話「野外授業② カップル冒険者は眩しい!?」
ついに一年生と二年生混合の野外授業が始まった。
オレはヤマミと一緒に、猫耳のミャコとモデル級のイケメンのミナトと共同で遺跡型『洞窟』を探索していく事になったぞ。
天井が高い広い通路をしばし歩くと、斜めに傾いた広間へ入った。
「にゃ!? 入口がたくさんあります!?」
「ナッセさんとヤマミさん、どうしますか?」
尻尾をピーンと伸ばすミャコ。ミナトは冷静にこちらへ見やる。
確かにこの広間は野球ドームくらいに広くて、段差的に足場があって、数え切れない程の出入り口があちこちある。
こっちはオレもヤマミも入った事のない未開の『洞窟』……。
ヤマミが目配せし、顎をクイッと。
「勘で選んで申し訳ないけど、そっちで」
星光の剣を生成して、その切っ先で出入り口へ指す。
ミャコもミナトもコクリと頷く。
こちらの指示に従う、そんな感じだ。
「いつ入っても慣れないですね……」
「大概『洞窟』はフロアごとに傾いているからな」
不安そうなミャコにミナトが相槌を打っている。
確かにここの『洞窟』も方向がバラバラで、フロアごとに重力の向きが違う。下手したら迷うレベルだ。
ヤマミが『地図作成』でルートを記録してくれてるからへーき。
「他の人はどうだろ……?」
「大丈夫でしょ」
先生が事前に言ってたけど、万が一が起きた時の為に強制帰還システムが発動されるってさ。
もしかして白い羽のキーホルダーがそうかも?
「にゃ! モンスターが来ます!!」
敏感に察知したミャコが尻尾を膨らましてブッキーをボウガンに変えて身構え、ミナトもブッキーを二刀流の短剣に変えて前線に立つ。
骸骨剣士や赤いコウモリが集団で現れてきた。
【スケスケルトン(アンデット族)】
威力値:1220
遺跡によくいる骸骨剣士。ガラスのようなスケスケな骸骨が剣と盾を持ったモンスター。実際の骸骨がモンスター化したわけではない。下級下位種。
【アカアカキース(飛空族)】
威力値:970
遺跡によくいるコウモリ。血のように赤いコウモリで、やっぱり吸血とかする。集団で群れる事が多い。下級下位種。
「ミャコ、いつものを頼むぞ!」
「はいっ!」
ミナトはすかさず一対の短剣を振りかぶって走り出す。
骸骨剣士が剣を振るうと、ミナトは素早く間を抜けて斬り裂いていた。慣れているかのような二刀流の短剣捌き。
幾重の軌跡が踊って、あっという間に骸骨剣士はバラバラに……。
ミナトへ急下降してくる赤コウモリを、ミャコのツバメみたいな形状の矢が貫いた。
「ロンデーネ・アロー!! ふしゃあああああッ!!!」
可愛らしい気合いとともに右手のボウガンから連射されたツバメ状の矢が、赤コウモリを次々と射抜いた。
しかも『追尾弾』なので追尾付き。
いつの間にか骸骨剣士が二体、ミャコへ忍び寄っていた。
しかしミャコは光の矢を手前で滞空させ、それを何本も束ねて白鳥のような優雅な光の剣に形成。
「チーニョ・ブレイド!! ふにゃーッ!!」
なんとミャコが手際よく剣を振るって、骸骨剣士を斬り裂いていった。
敵と剣で切り結ぶ事なく、素早く先手で斬り落としている。手馴れた剣士のような鋭さが窺える。
白鳥のような形状だからか、両翼部分が盾替わりにもなり、刀身も自在に伸ばせるようだ。
「やるじゃないか……」
ミナトが最後の赤コウモリを短剣を長剣にして突き上げて串刺しして、ボシュンと霧散させた。
再び四人で歩き出す。
オレは気になってミャコを呼ぶ。
「すげーな。弓兵なのに剣がうめぇ!」
「あはは。ミナトから手ほどきされたんです。優しくて頼れます」
「ミャコも筋がいいからな。どんどん上達していって驚いているくらいだ」
二人が褒め合っててリア充感がするぞ。眩しいくらいにな……。
可愛いピンク髪の猫娘かぁ。
するとヤマミがジト目で見てきてたのに、ハッと気づいた。
「羨ましいって目に出てたわよ?」
「そ、そんな事ねぇって……」
「とにかく腕を上げているのはいい事だわ。二人とも威力値が四〇〇〇超えている感じだったから」
「ああ。確かに……」
しばらく会っていない内に強くなっている。
「そうだ。一緒に『洞窟』を探索したり、道でエンカウントして戦ったり、仮想対戦センターで訓練したりしてたからな」
「うん。教えてくれるのが上手いんです。おかげで強くなった実感がします」
数十分ぐらい歩いていくと赤いトカゲが四匹這ってきたぞ。
【ホノビトカゲ(水族)】
威力値:3200
ホノビの魔法を撃ってくる赤いトカゲ。サラマンダーみたいな感じだが別種。割と大きくタヌキやキツネを丸のみできるほどだ。下級中位種。
「ペッレグリーノ・シャベリン!!」
ミャコは光子を集める『増幅』で隼状の大きな矢にして、ボウガンから撃ちだす。
猛スピードですっ飛んで赤トカゲを二匹貫通してき、向こうの壁がドゴオオンと粉砕された。
続いてミナトが二刀流の短剣を大剣に変えて、残りのニ匹を一刀両断していく。
「ミナト! 新手のモンスターが現れました! 気をつけて!」
ミャコが耳を立てて叫ぶ。
するといなかったはずの黄土色肌の大きなトロルが「ガアアア!!」と巨大な棍棒を振り上げていた。
【イセキトロル(亜人族)】
威力値:5400
黄土色肌の大きなトロル。大きな棍棒を振り回してくるぞ。バカだが図体が大きくて侮れない。下級上位種。
「ミャコ、行くぞ!!」
「はいっ! パッセロ・アロー!!」
駆け出しながらミャコはボウガンで連射して、雀状の小さな光の矢がトロルに次々と刺さっていく。
苦痛で「グアア……!」と呻いている内に、ミナトが大剣を振るって腕を斬り飛ばす。血飛沫とともに腕と棍棒が弧を描いて床にドスンと転がる。
「ふしゃああッ!!!」
「やあああああッ!!!」
なんとミャコが白鳥の剣を、ミナトが大剣で同時に振るって、斜交いに斬り込んだ。
鋭く描く軌跡によってトロルは四分割されて霧散していった。
息が合った合体技にオレもヤマミも感嘆する。おお……!
「よし!」
「やりましたね!」
ミャコとミナトが手を叩き合う。
「昔を思い出すな」
「ええ……。懐かしいわね」
かつてオレとヤマミとリョーコとスミレで『洞窟』を探索して、異世界までたどり着いた事が脳裏に蘇る。
あの時は技も持たなかったけど、ヤマミに色々教えてもらって成長した。
もちろん楽しい事ばかりじゃなく、苦しく辛い事もあったが、あのマイシと互角に戦えるようになってたっけな。
その後、一時間くらい探索し続けてミャコとミナトのレベルもぐんぐん上がっていった。
見張るほどに技の冴えが良くなっていって、見てるのが楽しくなってくる。
そしてミャコとミナトが笑顔で仲が良くなっていくぞ。
「一緒に探索できてよかったぞ」
「そうね」
オレもヤマミも懐かしく思いながら見守り続けた。
手強いモンスターが出てきても二人は難なく切り抜けていく。
気づけばミャコとミナトの威力値が七〇〇〇に上がっているように感じた。いいぞもっと強くなれ。
ズズ……!
様子がおかしい事に気づいた。
「こ……これは!?」
「うそ!?」
オレもヤマミも戸惑うしかない。
さっきまで黄灰色の古い遺跡みたいなダンジョンだったはずだ?
見渡せば水晶のように寒色系のキラキラしているみたいな空間になっていた。
入る前は、反転したような『洞窟』を通った気がした。そして気づいたら風景が移ろって、水晶の世界のようなところへ迷い込んだ。
オレとヤマミは、シジツたちから聞いてた特徴と一致した。
「「まさか『鏡面世界』!?」」ド ン!
何も知らないミャコとミナトは不安まじりに戸惑い始めた。




