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323話「カグイヤーン、唐突にキャラ変する!?」

 昨晩はシジツたちから、驚愕の真実を知らされて驚くしかなかったぞ。

 鏡面世界(ミラーワールド)の存在に加えて、地底人はネアンデル人で……。

 情報過多だから、とりあえず後回し。



「相談を済まぬのう……」


 で、今日は一年生のカグイヤーンとカフェしてるぞ。

 オレとヤマミは並んで「はぁ……」と疲れた顔をするしかない。昨晩の事があって気になってしょうがないからだ。


「わらわは実は土星人なのじゃ」

「知ってるぞ。なんつーか、インドでスパイやってたやつで聞いてるから……」

「土星人でドイツ人って設定だったわよね?」


 オレはパタパタ手を振ってて、ヤマミは腕を組んでいる。

 つーか風貌といい口調といい完全に和風かぶれで、ドイツ人の設定なんか微塵もねぇがな……。


「さすれば、話が早いのじゃ」


 カグイヤーンは席を立つ。何を思ったのか着物っぽいのを脱ぎ始めた。

 慌てて「ま、待て!! こんなところで脱ぐな!」と叫ぶが、全裸を見てギョッとした。

 ヤマミも目を丸くして口に手を当てた。


「……これは!!?」


 着物が床に落ち、カグイヤーンは全裸になったわけだが恥部はなかった。

 胸にあるべき突起も、股にあるべきものも無かった。

 それはまるでスラリと女体の形をしてるだけの人形のように見えた。


「学院には本名を登録して入学しておるのじゃ。生徒の誰も気付かなかったがのう……」

「え?」


 すると頭から回転するようにグリグリ割れ始めていく。

 まるで映画のようだった。カグイヤーンを象った()()はガワでしかなかったのだ。

 中から一人の若い少女が瞑っていた目を開け始めた。

 分解されたガワが床に転がり、さっきまでの無機質そうな表情とは違って生きているって感じの顔を見せてきたのだ。


 ウサギ耳を模したツノだったカグイヤーンの時と違い、頭上には本当のウサギ耳。顔はカグイヤーンを若くした感じ。ポニーテール。服は軽快な着物風ワンピース。

 一目見て可愛らしい少女だ。オバサンがケモ耳お姉さんになった感じだぞ。


「わらわの名前はカグヒメル。あなただからこそ明かせるのじゃ」


 オレとヤマミは呆然しているが、周囲の人々もポカンとしてまんがな……。

 ここがカフェって事を忘れてねぇ?


「と、ともかく……なぜオレたちに正体を??」

「申し遅れたのじゃ。このカグヒメルは極度の人間嫌いでカグイヤーンというガワを被って長らく生活してきたのだ」

「……私たちが妖精王だから?」

「はい」


 ヤマミが目を細めて聞くと、カグヒメルは頷いた。


「とはいえ、一年生の皆さんも優しいし、同じ土星人じゃないので……」

「そりゃな……」


 オレは乾いた笑いを漏らす。

 土星人はダメだけど、地球人は別って事ね。

 しかも妖精王の上に、悩みを聞いてくれるリア充っていう尾ヒレつきなので、こうして相談してきたわけだ。

 カグヒメルは精一杯笑みながら手を差し出す。


「友達になってくれないかのう?」

「まぁ、いいけど……?」

「言っておくけど、私はナッセの恋人だからね。恋愛はダメだけど友達なら……」


 ヤマミはジト目でため息をつく。


「えっ!? ダメだったとは??」


 カグヒメルもオレと何気に恋しようと思ってたらしく、ダメと言われて驚いたようだ。

 ヤマミは目くじらを立てて「ダメなものはダメよ!」と断固として拒否する。


「そんなぁ~」


 シュンと俯くカグヒメル。身をくねくねしてて、あざとい気がする。


「で、本題はここから……」

「まだあんのかよ??」

「恋愛抜きでね」


 注文してたメロンソーダをカグヒメルはストローで啜る。


「今度、学院の野外授業で一年生と二年生が混合で『洞窟(ダンジョン)』へ入る事になってるのじゃが」

「それ今日の授業で聞いたぞ」

「まさか……?」

「そう、そのまさかじゃ。ナッセさん。わらわのリーダーになってくれないかの?」

「クジ引きで決められるから意味ないわよ」


 呆れたヤマミがそう告げた。


 確かに授業の終わりに知らせてくれた野外授業についての事……。

 一年生と二年生でそれぞれ二人、フォーマンセルで『洞窟(ダンジョン)』に挑むって内容だ。

 これについてはくじ引きで決められるとも聞いた。

 でなければ、誰だって頼れる英雄のナッセをリーダーに選ぶからだ。絶対偏る。オレも勘弁して欲しい。


「妖精王なんだし、クジ引きくらいちょいちょい変えれるだろうって。のう?」


 手を合わせて首を傾げて笑顔を見せる甘えポーズでナッセに訴えかけてくる。


「ダメだし、そういうインチキができる能力なんてないわよ」

「ナッセさんが念力使えたはずじゃが……?」

「オレは使わねぇからな。運良く一緒になれる事を祈ってくれ」

「えぅぅ~! ひどぉい~!」

「ダメなものはダメよ」


 あざとく頼み込むカグヒメルを、オレは拒否し、ヤマミも突っぱねる。


「私だってナッセと一緒にしたいもの……。一人ずつだから仕方ないけど……」

「それならわらわにもチャンスが!」


 カグヒメルは目をキラキラさせてくる。ヤマミは深い溜息。


 彼女としては、ナッセと一緒になったら恋愛になれるようフラグを立ててちゃっかり恋人になろうと思っているのだ。

 あの英雄で妖精王のナッセで、リア充で優しくてイケメンで、これは逃せない。

 このチャンスを逃さないと拳に握り締める。


「オレはあんたが思い描いたようなリア充じゃないからな?」

「ええ? だってカップル次々とできてるじゃないかの!?」

「ただの偶然よ! 相談した人が勝手にくっついただけだから!」

「そうだぞ! オレたちはきっかけだけで……」


 ミキオとサラクに加え、昨夜のシジツとジュミまで恋人になってしまった事も拍車をかけたようで、ますます恋のキューピッド的存在として見られるようになってるぞ。

 迷惑はなはだしい。

 オレは「キスしたらいいんじゃね?」って適当に言っただけだぞ。


「カグヒメルにも素敵な彼氏ができるといいな」

「そうね。応援はするわ」

「えぇ~~他人事にされたのじゃ~~!? あんまりじゃ~!」


 さっきまでの落ち着いたカグイヤーンと違って、キャラが変わったようでぶりっ子みたいなのになったぞ。

 多分これが本当の性格なんだろうか?

 それはいいとして……。


「なによ……あの年増女……!! 若くなったからって…………!」


 向こうの物陰からモエキが歯を食いしばって睨んできている。ギギギ……!

 もうやだ、こういう修羅場。

 オレもヤマミもゲンナリするしかない。

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