321話「本物のナッセへ恋愛相談しに行くジュミ!?」
「お前がナッセか!? ツラぁ貸せや!」
ゴールデンウィークが終わるなり、学院の帰りでマイシみたいなのに呼び止められたぞ。
黒から赤へとグラデーションとなっているロングヘアー。黒いチャイナドレス。
大きな胸と豊満な尻と太ももが色っぽいくせに、それを微塵に感じさせないほど血気盛んな笑みが窺える。
「お前は何者だぞ!?」
「なんなの? また相談?」
戸惑うオレと目を細めるヤマミは、目の前のヤンキーグループと対峙している。
「スマンな……。ジュミが言って聞かんからな」
三メートルほどの長身で筋肉隆々。赤髪ボサボサ。顔と手以外の全身を包帯で巻き、無地の着物。重量感のあるトゲトゲの金棒を肩に乗せている。
側に緑髪オールバックの両目を黒いハチマキみたいなもので覆い、猫背で殺気を漏らす痩せぎすの男。
さらにその横で青い着物を着た、紺色ロングヘアーの胸が大きい女性。
……その後で自己紹介してもらったが、先頭のチャイナ女は龍崎ジュミ。
包帯を体に巻く大男は死々王シジツ。
痩せぎすの両目ハチマキ男は小井ギョヌ。
青い着物を着たロングヘアー女は草露セコ。
ヤンキーグループと思いきや、それは物々しい見た目だけで気さくな創作士だったぞ。
仮想対戦センターに参加できるようになっていたので、オレとヤマミはシジツ一派と一緒に入場した。
さっそくとオレとジュミが、仮想空間でソロ対戦する事になった。
バーチャルとして生成されたコロシアムの闘技場。囲む階段状の観戦席は無人……。
「おっしゃああああッ!! いくぜええええッ!!!」
ジュミは燃え滾る炎のエーテルを全身に纏い、更にドラゴンに象っていく。
色っぽい美人顔も凶暴な目付きと歯軋りになってしまう。
膨れ上がる威圧で周囲が揺れ、烈風が吹き荒れていく。ゴゴゴゴ!
「こいつ……マイシと同じタイプ!?」
「おらあぁ!!!」
大地を爆ぜて、瞬時に飛びかかるジュミは小さなドラゴンかと思わせられる。
オレは星光の剣を生成し、横に飛ぶ。
ズガアアアンッ!!
向こうの観戦席へジュミが突っ込んで大規模に粉砕。破片が飛び散る。
再びこちらへと猪突猛進と飛びかかるジュミ。
まるでマイシみてーだ。けど……!
「おっしゃああ!! 業火竜のォ無惨爪ッ!!!」
ジュミがエーテルの爪を振るうが、オレは光の剣で払う。逸れた衝撃波が遠くで爆破。
連続で繰り出されるエーテルの爪をことごとく払い除けていく。
マイシとの戦いでやってたのと同じ。もう慣れっこだ。
ガガガガガガガガガガガガガガッ!!!
いくらジュミが攻め立てても、確実に全てを捌ききられてしまう。
だってマイシと同じじゃ慣れっこだし。
「さすがだな!! 本物のナッセはよぉ!!」
後方に飛び、地面を滑っていくジュミ。
「大体把握した。ジュミの威力値は約六万。シジツたちもそれなりな実力者って事か」
「お見通しかよ!! やっぱ本物は違うな!」
「……本物って」
前から本物は、ってニセモノ他にいんのかよ?
ジュミから見れば、目の前の銀髪少年は本物感がしている。
この間の城山ナッツとは断然違う。そして“鏡面世界”で遭遇した竜紋ナッセとは違って真っ直ぐで純真な雰囲気がする。
それを当のナッセは知らない。
「いくぜええええッ!!!」
相変わらず猪突猛進と突っ込んでくるジュミに、オレは身構える。
エーテルの爪を受け止めるとジュミが「そのまま戦いながら聞いてくれ」と話してきたぞ。
「何を?」
「実は、会いに来た目的は他にあんだよ!」
「他に??」
ジュミの猛攻を捌きながら、ボソボソ話する。
「そっちも反撃しろよ。八百長に見られると困る」
「分かった」
まずは横薙ぎ一閃と光の剣を振るい、ジュミの胴をズバッと炸裂させて通り過ぎる。
「ぐがあああああッ!?」
ジュミは宙を舞って観戦席へバゴンと突っ込んで破片を散らす。
オレは「やべ、強めにしちゃったかな?」と汗を垂らす。
でも、恐らくマイシと同じならエーテルがダメージを肩代わりして消耗するはずだ。
「ぐっ! やっぱ強ぇーな!」
瓦礫から這い上がるジュミ。口元から血が垂れる。それを手首で拭う。
エーテルで肩代わりするのにも限度があるのか、と察した。
「いくぜえええええええええッ!!」
瓦礫を爆ぜながらジュミが再び飛びかかってくる。
「それでよ、リア充なんだろ? なんでも相談してくれるって噂聞いてるぜ」
「それは間違いだぞ……」
「いいから聞けよ! じ、じつは……あたいに好きな人いんだ!!」
「え?」
ガガガガガガガガッと格闘しながらオレとジュミは話を続けている。
「ライズーッ!!」
当たらないように剣を振りあげて、ジュミは「ぐっ!」と身を逸らす。
今度は剣を振り下ろして「フォール!!」と地面に手加減した一撃を入れる。
ジュミにとっては、まるで大きな隕石が迫り来るかのような錯覚だ。ただ高いところから剣を振り下ろすだけには見えない。
ズガガァンッ!!!
空振りしたフォールは地面を陥没させ、直径三〇メートル強の広大なクレーターになった。
ジュミは後退し、冷や汗をかく。ふー!
「城山ナッツと違って本物はああなのか……。喰らったらマジでヤベーな」
ナッセのフォールは重力も関わってそうな気がする。
自らを隕石と化して相手を沈める恐ろしい技だ。
「好きな人って?」
ナッセが滑るように間合いを詰めてきて、ジュミは慌てて防御する。
軽めに攻めて来ているのだろうがジュミにとっては苦い顔をするほど、重い攻撃だった。
ズガガガガガガガガガガッ!!!
「あ、ああ。シジツってヤツだ。あたいは本当は好きだけど、告白する勇気が欲しい」
「告白すりゃいいだろ!」
「バカ! 振られたらショックだろーが!」
「それは分かるけども……」
ジュミは後方へバックステップし、地面を滑る。
「あたい、こんなんだから好きになってもらえねーかも知んねぇ!」
「でも一緒にいるんだろ?」
「グループとしてだ! 恋愛は別として!」
マイシみたいな強気で血気盛んなジュミも躊躇うほどなのか……?
そりゃ好きな人と一緒にいるけど、本当の気持ちを告げたら関係が壊れるかもと恐れている。
シジツが自分をどう見ているのか分からない。
全く恋愛対象として見られてないかもしれない……。
「ジュミも見たところ、美人だし、勢いそのままにキスすればいいんじゃねぇかな?」
「なっ!!?」
ジュミは赤面して湯気が頭上から立ち上る。
「ななななな!!?」
「美人にキスされたら、誰だって惚れちゃうんじゃねぇか?」
「ま、ま、マジで言ってんのかよー!?」
対戦するのも忘れて、ジュミは赤面しながら叫んだ。
オレは「だから勢いでな……」と後頭部をかく。
「あ、そうだ! 最後に技撃ってこいよ! メテオなんとか!」
「いいのかぞ?」
「一度は受けてみてぇとは思ってたんだ! 来いよ!!」
オレは光の剣を正眼に構え、瞬時に地を蹴る。
ジュミは業火のエーテルを激しく噴き上げて咄嗟に防御姿勢を取る。
「流星進撃!! 六連星ッ!!!」
ナッセの後方で夜景が浮かび上がり、天の川が横切って見える造形付加がジュミの見開いた目に焼き付く。
流れ星のような六撃がジュミの各部位に炸裂! 重くて強烈だ!
ドドドドドドッ!!!
「……がッ!!!」
──そして対戦は終わった。
ジュミが俯きながらトボトボ戻ってきて、シジツたちが「惜しかったな」と労う。
するとジュミはシジツへ見上げ、赤面した。ポッ!
「ジュミ……?」
オレとヤマミが見ているにも関わらず、ジュミはシジツへ抱きついてズキュウウンと唇を重ねただァ────ッ!!?
思わぬ不意打ちキスにシジツは赤面して湯気を上げただァ──!
ちゅぱちゅぱぺろぺろちゅくちゅくぱちゅっ!!!
情熱的なキスをぶちかます事によって、シジツとジュミは愛で繋がった。
後からの告白も照れながらオッケーしたとさ。
こうして、またひと組のリア充カップルができたぞ……。やったね。




