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319話「色々起きてんのに、新イベント追加ヤメろ!!」

 兵庫県中央区の三宮商店街は、夜でも賑やかで人々が行き交っている。


「……巻き込んで済まなかったな」


 大柄ながらもシジツは頭を下げてきた。

 ジュミは不機嫌そうにそっぽを向いている。ギョヌは顎を指でいじっている。セコはなに食わぬ顔でよそ見している。


「まさか、別世界のナッセと会えるとは思ってなかったぞ……」

「あの“鏡面世界(ミラーワールド)”には、確かに謎が多いでござるな」

「もう関わりたくないぞ」


 テンスケはあの世界が気になってしょうがなかったが、ナッツは疲れた顔を見せていた。

 それを察したのかシジツは夜空を見やる。


「今日はもう遅い。三宮駅近くのホテルに泊まれ。こっちで払っておこう」

「え? そんな……いいよ」

「ご厚意はありがたいでござるが……」

「うるせー、厚意をありがたく受け取れよ! こちとら無関係な人を巻き込んでおいて放り出せねェよ!」


 ぶっきらぼうなジュミまで優しいなとしみじみに感じた。

 それを察したのか「か、勘違いすんじゃねぇぞ!? シジツの方針に従ってるだけだからな!」と赤面しながらそっぽを向く。

 これがツンデレか、とナッツとテンスケは感嘆した。


「とはいえ、もう一度『鏡面世界(ミラーワールド)』へ戻って、大阪へ送るわけには行きますまい」

「だよな……」


 ギョヌの言う通りだと、セコも横目でポツリ。


 たぶん、あそこにナッセアナザーが見張っているのだろう。

 戻ってきたら有無を言わせず打ちのめしてくるかもしれない。

 とはいえ出てきたのが竜紋ナッセだったが、他にも同じようなアナザーが行き交いしているのだろうか?

 どうして、あの空間にそういう現象が起きているのか?

 そして竜紋ナッセがもらした魔女ワンダーとは??


「ふう。分かったぞ。今日は疲れたからありがたく受け取るぞ」

「かたじけぬでござる」


 ナッツとテンスケは頭を下げた。


 夜の三宮をシジツたちと一緒に歩いて行く。

 腹が減っているのに気づき、その辺のレストランで腹を満たした。

 シジツ一派は不良っぽいのに割といい人なので、ワイワイガヤガヤと盛り上がれた。

 その余韻か気分高揚しながら涼しい夜を歩いて、ホテルへ目指していく……。


「色々あったが、楽しかったな」

「だなぞ……。勘違いされて散々だったけどぞ」

「やっぱそのままがいいんじゃねーか? 面白そう」

「えぇ……」

「拙者は漫画の主人公で良かったでござるな」

「赤髪でもないし頬に十字傷もないけどな」

「大阪についた時にパプニングで剥がれたでござるよ……」

「剥がれたって、おま!」


 気分上々になっていたところ、行き交う人々が少なくなった辺りでボコッと地面がせり上がってきて、土砂の飛沫を噴き上げた。

 シジツたちは瞬時に緊迫し、身構えた。

 土煙が晴れると、一目見てゴーレムかと思うほどの岩男が現れていた。

 ズン、と太い足を踏み鳴らす。


「こいつは……!?」

「知ってるでござるか?」

「また来たか!? 魔界オンラインのモンスターとは別の勢力!!」


 三メートルほどのゴツゴツした大男はこちらをニヤリと見下ろす。

 鎧のように岩が肌にこびりついた感じで肩当てが左右に伸びている。ハゲていて、ゴリラのような強面の顔。


「ネ……地底人だッ!!!」


 ギョヌはそう叫び、モーニングスターのトゲトゲ鉄球を飛ばす。

 ガツンと頭にぶつけられたが、微動だにせず岩男はギロリと見下ろしてくる。


「こいつも鏡面世界(ミラーワールド)の??」

「いや、別件! 全く関係ないよ!」


 ナッツが振り返るとセコは首を振って否定してきた。


「こんなところにウロチョロとクロマ人がいるのは嬉しいなぁ~」


 頑固そうだった大男の顔がニタリと下卑た笑みを見せた。


「陰鬱な地下にいるより、地上を荒らしたほうが何百倍も楽しいんだよなぁ~。へっへっへ」

「お前は本当に地底人でござるか!?」

「名乗れぞ!」


 ギロッと見下ろしてきて、息を飲むナッツとテンスケ。


「んん~? まぁいいや。誰かに殺されたか分からんのも不憫よなぁ~? へっへっへ~。いいだろう。ワイはドリュー部族のモグチャ様だぁ~」

「なにー!? グラモ部族じゃねーのか!?」

「この間の侵略してきた部族とは違うやつか!?」

「んお? ……グラモ部族が壊滅したの、お前らの仕業かぁ~?」


 テンスケは「仲間でござったか……?」と呟くと、モグチャはニヤリと笑む。


「へっへっへ~、そうかそうか~。ありがてぇ。おかげでグラモ部族を殲滅できたぜぇ~」

「こいつら一枚岩ではないのかぞ!?」

「ああ。地底人にも色々ある。こいつらのような無法部族と、俺たちと同じような文明人がいる。無法部族は群雄割拠していて、常に勢力争いをしている」


 険しい顔でシジツが付け足してくる。


「そんなこと、東京では全く……!?」

「そうそう、初めて聞いたぞ!」

「地底空洞は均一じゃないからね。地上に近い空洞だったから、今こうなってるだけ。運が良かったね」


 セコが更に付け足してきて、急な地底人の驚くべき情報を聞いてしまった。


「ミンチにして食料にするかぁ~!!」


 敵意満々のモグチャが素早く駆け出してきて、シジツが咄嗟に金棒を振り下ろしてガツンと衝突!

 大柄な男同士でぶつかり合い、足元の岩盤がめくれてボコンと窪んでいった。

 セコがハルバードを振って蒼い三日月の刃を飛ばすが、モグチャは自慢の頑丈な体で受けて爆ぜ散った。


「くっ、蒼空閃が!? ……こいつら、やっぱ硬いっ!!」

「お返しだぁ~!」


 モグチャが口から岩の弾丸を複数撃ちだす。ドドドドッ!

 それはマシンガン以上の威力で、普通の人間なら肉片と化すほど!

 セコは「チッ」と地を蹴ってかわすが、その一つの岩が蒼い着物を掠って綺麗な肩があらわに……。

 そしてついでにサラシが破れたか、緩んでポヨンと大きな胸が膨らんできた。


「え???」

「なぬ!? セコは女性だったのか!?」


 シジツとギョヌは目を丸くした。セコは後頭部を掻いて「バレちゃったか~」とバツの悪そうな顔を浮かべる。


「へっへっへ~! 女かぁ~! 二人ほど持ち帰るかね~!」


 腕を組んでいたジュミとセコは「は!?」と睨む。

 ギョヌが「百花繚乱ッ!!!」と鉄球を連続で繰り出すが、モグチャはものともせずジュミとセコへ駆け出す。

 下卑た笑みで唾を撒き散らしながら襲いかかる様に嫌悪感を催す。


「させぬでござる!! 昇龍秘剣流しょうりゅうひけんりゅう──!」


 なんとテンスケが走り抜けるとともに地面が一直線に爆ぜていく。

 シジツたちは彼が忽然消えたかのように見えた。


双龍迅(そうりゅうじん)ッ!!!」


 まるでテンスケが二人に分裂したかのように現れて、弧を描く軌跡が左右からモグチャに炸裂!

 続いてナッツが上から光の剣を振り下ろす!


「うおーッ!! 城山式(ジョウヤマしき)スターライト・フォールッ!!!」


 モグチャの頭上に思いっきり振り下ろして、ガガァンと地面に打ち伏せた。

 まるで本物のナッセが繰り出したかのようだ。

 地面に頭を埋められたモグチャは微動だにせず…………。


「こんなに……強かったのか!?」

「こいつは驚いたな」


 思いがけない強さにシジツたちはポカンとする……。

 キリッとしたナッツとテンスケが決めポーズ。ザッ!


「よし! ナッセの技を見事再現しているでござるな!」

「いいや、本物の方が重かったと思うぞ……」


 彼らは仮にも連覇優勝しているジャキガン学院の生徒だ。

 ヘタレっぽい性格で勘違いされがちだが、二人とも威力値が三〇〇〇〇越えているほどの実力者だ。

 マジンガたち一軍メンバーと比べれば全然まだまだだが……。

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