317話「鏡面世界の謎!? そして……!?」
シジツたちと一緒にナッツとテンスケは連れられて“鏡面世界”への入口まで来た。
大阪にある鶴橋商店街にあると言われている。
そこでは鳥居のような門が建ってあり、上部の緑の看板に『御幸通天王星』が書かれている。
しかしゴーストタウン化としており、誰一人住んでいない。
「地球と天王星が重なっているでござるか……?」
「そんなもの、初めて聞いたぞ……!?」
驚いてて呆然するしかないナッツとテンスケ。
向こうではこっちの風景が反転された景色が映ってあり、空には天王星の五大衛星が映っている。
付け加えれば“ミランダ”“アリエル”“ウンブリエル”“チタニア”“オベロン”と特徴がそっくりだから、月と見間違う事もない。
にわかに信じがたい光景だ。
「最初、俺たちも目を疑った」
「ああ……。信じられねーけど現実だよ。だがこうして実在するんだ」
「うむ。あの衛星が確かな証拠だ」
シジツ、ジュミ、ギョヌが続くようにセリフを並べた。
「実際入ってみなよ。不思議な体験ができるよ」
セコが半顔で振り返りながらどんどん歩いていく。
シジツは「心配するな。確かなルートだからついてこい」とジュミとギョヌと一緒にセコへ続いていく。
固唾を呑んだナッツとテンスケは互いに見合わせる。
「行くでござるか?」
「……あ、ああ。気になってる事だしぞ」
頷きあって、覚悟を決めてシジツたちの後をついていく。
恐る恐るといった面持ちで『御幸通天王星』の門を潜ると、ひんやりした空気を肌で感じた。
反転された建物は確かにひと目では分からないような作りになっている。
イタリアの首都ローマの、とあるホテルで豪勢な部屋でナッセとヤマミがソファーでくつろいでいた。
「四首領エレサが呟いた“天王星”の現象……」
「まだ起きていると言ってたわね」
四首領の会合でエレサが呟いていた事が気になってしょうがない。
ヤマミが言った“現象”とはなんだろうか?
それはともかく……。
「天王星は太陽系第七惑星に位置する。五つの大きな衛星を持ち、ガス惑星と巨大氷惑星に部類される。大きさは半径約二万五五〇〇キロと太陽系惑星としては三番目くらい。表面温度はマイナス二二〇度と極寒だ。大気層はヘリウムとメタンを含む水素ガス。ジェット気流なので一応縞模様があるものの見えづらい」
「前から思ってたけど博識ね……」
「まぁ、天体には興味を持ってたからな。だが、本来なら天王星は人が住めるような環境ではない」
真顔のナッセに、ヤマミも目を細めて意外な博識に呆れている。
「だけど、それは『空想』によって覆されたと考えるべきね」
「ああ……」
インドの四首領ダウートやアクトが実は木星人で、輪廻六道界が木星由来だとかデタラメのような設定が現実になってしまった。
さそも最初っからあったような感じになっているのだから驚きだ。
これも異世界と繋がった影響らしい。
んで、対消滅を遅らせる為に漆黒の魔女アリエルが通気口“洞窟”を組み込んでいる。
これのおかげでオレたちは異世界にも行けるようになった。
──これは閑話休題だ。
「四首領が杞憂するほどだから、天王星の現象も見逃せないかな?」
「お父さんが私の妖精王能力とは違う『アナザー』を確認したって言ってるから、何かあると思う」
「だが、しかし……地球とどう繋がってるんだこれ?」
「ダウートが地球と木星を繋げているみたいな事あったし、なにか人為的なものがあるかもね……」
ヤマミは頭をオレの肩へ寄りかかる。
「まーた四首領みてーなのがきたら面倒だなぁ」
「そうね」
二年生を卒業すれば異世界へ行く。
それまで何も起きなかったら問題ない。アリエルの“洞窟”のような必要性があって、そして悪意で繋げているのでなければいいんだが……。
シジツたちの後をついていくナッツとテンスケはギョッとした。
入ったばかりはまだ商店街だったのに、先へ進むたびに全てが鏡のように磨かれたようなツルツルの材質に変化していった。
しかも地平線から地平線まで一直線と薄い無色の虹みたいなのが見える。
「あれは……!?」
「天王星のリング!?」
天王星には薄いリングがあり、十三本もあるという。
土星のリングより細い上に、成分がメタンなので暗く見えるので薄い。
「もし地球に輪があったら、そんな風に見えてたかもなー」
ジュミは皮肉るように笑う。
「天王星は超極寒の氷惑星と聞いているが、体感としてはせいぜい十五度くらいか……? 長袖で済む程度の温度」
「うむ」
シジツの言っていた通り、ちょっと冷えるなーって程度だ。
天王星の表面温度は本来マイナス二二〇度だ。これがそのままだったら一瞬で凍え死ぬ。
「天王星に酸素なんてのあったかぞ?」
「だよね……」
疑問に顔をしかめるナッツにセコも相槌を打つ。
こうしてテキオーラも使わず、普通に息ができるのもおかしい。
「それにしても大丈夫かぞ?」
「周りの景色が移ろいゆくでござる!」
歩くたびに周囲の風景がブレて万華鏡のようにコロコロ変わっていくのだ。
さっきまで鶴橋商店街だったのに、見るも影もなく奇妙な風景に翻弄されている。
これでは確かに行方不明が多くなっても仕方がない。
「着いたぞ。まずは兵庫県三木市志染町のルート……。神戸市の隣になっている」
ブレていた風景が徐々に重なって言って定まると、寂れた町になった。
多少田舎町といった感じで、商店街と比べれば建物の密度は薄い。
しかもゴーストタウンで無人……。
「最初に見つけたルートだな。ここには何もないから意味ねーけどな。次行こ」
ジュミは踵を返す。
シジツたちもそれに続く。ナッツとテンスケは戸惑いつつもついていく。
再び景色がブレ始めて、万華鏡のように移ろいゆく。
しかし夜空は天王星の特徴そのままで、地平線を繋ぐリングと五つの衛星はそのままだ。
「オレたちは神戸市中央区、つまり三宮に住んでいる創作士だ。大阪へ行く時はこのルートを使っている」
「しかし、あんな風景が変わるのに分かるものでござるか?」
「心配いらぬ。この床のカット具合を見れば自ずとルートが見えてくる」
「それに、こっちでも『地図作成』あるからね」
ギョヌはハチマキで両目を覆って見えないはずなのに見えてくるとかほざき、セコが実際に左手から立体マップが浮かび上がってくる。
このスキルさえあれば、風景がどのように変わろうとも関係ない。
「電車を使ったら金かかる上に一時間くらいかかるはずだからな」
ジュミは得意げにフフーンと話す。
その内に、徐々に風景が整ってきて三宮の商店街が見えてきた。
それを見てナッツとテンスケは「おお!!」と感嘆を漏らす。
「前、忠告したのにな……。ムダだったか」
ハッと見上げると、ナッセが屋根の上でオッサン座りしていた。
ナッツとテンスケは「おお!」と本物だと目を見張る。
しかしシジツたちは制止の腕を伸ばして「待て! あれは本物ではない!」と警戒を孕む声を出した。
途端に緊迫した空気に張り詰めていく。
「あれは『アナザー』だよ!! ナッセの!」
ジュミはゴウッと竜を象るオーラを全身から噴き上げる。




