314話「地獄の業火を纏いし死々王シジツ!!」
大阪府の隣となる兵庫県。
そこを制覇し、トップに立つ創作士がいた。
「……行くぞ!」
秘めたる野心を宿す大男は歩みだした。
その男の名は死々王シジツ。
三メートルほどの長身で筋肉隆々。赤髪ボサボサ。顔と手以外の全身を包帯で巻き、無地の薄紅色の着物。重量感のあるトゲトゲの金棒を肩に乗せている。不敵の笑みを浮かべ、鋭い目で華やかな大阪を見据える。
「うむ。同行しよう……」
追従する二人の男の内一人。緑髪オールバック。両目を黒いハチマキみたいなもので覆い、猫背で殺気を漏らす痩せぎすの男。
小井ギョヌ。
両目見えない状態なのに、見えているかのように歩けている。不気味だ。
「ええ、行きましょう」
もう片方の男……。紺色のロン毛の青年。にこやかで中性的な顔立ち。
青い着物を着ていて、胸にはサラシを巻いているのが窺える。え?
草露セコ。
「憧れるわねぇ……。大阪ってさ」
最後方から、艶かしい女性が笑みを浮かべる。
黒から赤へとグラデーションとなっているロングヘアー。黒いチャイナドレス。
龍崎ジュミ。
色っぽくて大きな胸が揺れ、豊満な尻がプリッとしている。覗く太ももが美味しそう。
「念のため言っておくが、今回は散策だけだからな?」
「その割にモブ創作士を殴ってなかったです?」
セコが余計な事を言う。シジツは苦い顔で振り返る。
「……強キャラ登場の演出だ。とりあえず創作士センターへ運んで回復装置に入れたからいいだろ」
「しまらんな」
ギョヌはふてぶてしく言い捨てた。
「仕方ないだろ。酔っ払ったモブ創作士がケンカふっかけてきたんだから正当防衛だ。思いのほか弱くて逆に驚いたくらいだ」
するとジュミが不敵な笑みで拳に掌を合わせてパンと鳴らした。
「よーし! アニマンガー学院へ殴り込むわよ!!」
「「ちょっ! 待て待てっ!!!」」
色っぽいキャラだったのに血気盛んな事を言い出してきて、シジツとギョヌは首を振って呼び止めた。
ジュミは「なんだよ!? つまんねーな」とぶすくれる。
おそらくこれが本性。
「落ち着きな。今はゴールデンウィークだろ」
「それもそっか」
にこやかで丁寧なセコまで素を出して、ふてぶてしいジュミを落ち着かせた。
なにやらジュミとセコがダチみたいな馴れ合いで拳を重ね合う。
シジツとギョヌはジト目で萎えていた。
「ともかく大阪を歩き回ろう。ナッセがいたとしても早々会うものでもないだろう」
「うむ」
「なんだよ? ビビってるのか?」
「騒ぎを起こすな、と言っているんだ。今は抗争しに来たわけではないぞ。一緒に大阪行きたかったからな」
煮え切らないと言いたげなジュミをシジツは窘める。
「ま、まぁ……シジツが言うなら仕方ねーな」
なんかジュミがポッと頬を赤く染めてそっぽを向く。
すると地面に黒い円が広がってきて、それがエンカウントだと一同は緊迫した。
一転して、生成された亜空間にシジツたちは見上げる。
ブンブンブンブンブンブンブン……!
反響する木霊みたいな音が聞こえる。
上で浮いている巨大なテレビのようなモンスターが、物々しい威圧感を放って現れていた。
たまに現れる強敵モンスターだ。
【テレビジョン・エビル】(機械族)
威力値:25500
巨大なテレビのようなモンスター。黒い腕が四本で七本指の手。スマホみたいな形の手下を率いて襲撃してくるぞ。
精神生命体なので、物理攻撃はほとんど効かない。
ブンブンと共鳴音が響く。中級特上位種。
周囲からスマホみたいな手下がぞろぞろと群がってきたぞ。
まさに文字通り“歩きスマホ”だ。
黒い細い手足で踊るような感じで、悪意を剥き出しに襲いかかってくる。一斉にモニター画面から光弾を撃ちだしてくる。
ドドンドンドンドドドドンッ!!!!
しばし爆発が連鎖し続け、残滓として煙幕が立ち込める。
しかしシジツたちは平然と煙幕から抜け出し、不敵な笑みを見せながら「殲滅だッ!!」と攻勢に出た。
「では俺から参ろうッ!」
ギョヌは取り出したブッキーをモーニングスターに変形させた。トゲトゲの鉄球をブンブン回しながら自由自在に振り回して、歩きスマホを複数まとめて砕いていく。
鎖部分は伸縮自在で、中距離なら全てを制するほどだ。
「喰らうがよいわッ!! 百花繚乱ッ!!」
伸縮自在な鎖によって、四方八方に鉄球を何発も繰り出す連撃技。
一斉に歩きスマホを木っ端微塵に蹴散らしていった。
「じゃあセコもいっきまーす!!」
最初のキャラを忘れて、はっちゃけた感じに舌を出しながらブッキーを取り出す。
それはハルバードへ変形した。斧のような刃を備えた槍といった感じ。
「蒼空閃!!!」
横薙ぎに振るうと蒼い三日月の刃を飛ばして、歩きスマホを数十体まとめて上下両断していった。
ブンブン振るうだけで遠い間合いまで切り裂く三日月を放てるようだ。
「おっしゃあああああッ!!! あたいも行くぜえええッ!!!」
ジュミは血気盛んな本性を現して気合を入れていく。
なんと燃え滾る炎のエーテルを全身に纏い、更にドラゴンに象っていく。
色っぽい美人顔も凶暴な目付きと歯軋りになってしまう。
それを見てシジツとギョヌは「げっ!」と青ざめていく。逆にセコは「相変わらずね」とため息をついていた。
「おっしゃああ!! 業火竜のォ無惨爪ッ!!!」
マイシと同じタイプか、大地を爆発させて獰猛に駆け出しエーテルの爪を振るう。
ズガアアアアンッ!!!
ミサイルの爆撃のような広範囲に炸裂を伴う強烈な一撃で、数十体もの歩きスマホが消し飛んだ。
周囲に余波が広がり、大地を揺らす。
「ひゃっはははははーっ!!」
ドガンドガンドガンドガアアアアアアンッ!!!!
好戦的に暴れまわって地形もろとも破壊し尽くす。
そしてシジツは「ともかく……」とトゲトゲの金棒で地面をこする。ジジッ……!
「地獄金棒・最終の型……!」
シジツは踊るように金棒を振り回すと、獰猛な火炎が渦を巻いて荒れ狂っていく。
まるで地獄の業火を召喚したかのような猛々しい炎だ。
ボスであるテレビジョンは恐る事もなく、四本の腕を伸ばしてトゲトゲのような七本指で連続突きを繰り出す。
しかしシジツは余裕で灼熱纏う金棒を振り回して、ことごとく迎撃。
《ぴぎゃあああああああああっ!!!》
粉砕されて燃える腕に苦悶するテレビジョンだが、逆に怒り狂って再生した腕が八本に増えて一斉に伸ばして襲いかかってくる。
シジツは不敵に笑み、飛び上がる。
「大灼熱大火葬ッ!!!!」
灼熱纏う金棒を思いっきり振り下ろしてテレビジョンを打ち落として地面に叩きつけた後、超巨大な火炎柱が激しく噴き上がった。
ゴオオオオオオウッッ!!!!!
猛々しく燃え盛る灼熱にテレビジョンは消し炭に散っていく。
それを見届けたシジツは狂気の笑みに顔を歪ませていく。
「ハァーッハッハッハッハ!!! この世は弱肉強食!! これからはこの俺が新たに四首領となるのだああッ!!!」
しかし冷静に呆れていたセコは「じゃあ英雄のナッセ倒せばいいんじゃないの?」と突っ込む。
「時代はヤツを選んだ! 悲しいかな、ナッセとは出会う事もなかろう! ついでだ大阪で美味いと評判の焼肉でも食ったら帰ろうか!」
「逃げたな……」
冷や汗タラタラなシジツに、ジュミは軽蔑するような顔で呆れた。
間を置いてジュミは頬を赤く染めて「……あたいと一緒に戦えばいいんだろーが」とボソ呟いた。
エンカウントがシュワーンと晴れて現実空間へ戻った。
なんとナッセっぽい人とサムライみたいな人と目が合っちゃった……。
「「ん?」」
「え?」
思わずシジツは硬直する。
セコはせせら笑う。
「おやーナッセと出会っちゃったねー」
「おう! 悲しまなくていーぜ、喜べよ!」
ニヒッと笑うジュミが更に便乗する。シジツは冷や汗タラタラ……。やべぇ!




