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313話「英雄ナッセに憧れる、もう一人の男!?」

 速く景色が流れていく新幹線に乗っている、ナッセ……いや!


「はぁ……、会えるだろうか?」


 彼の名は城山(ジョウヤマ)ナッツ。

 普通の身長で銀髪。両端が浮いていないマフラーやナッセそっくりの衣服を着込んでいる出っ歯のメガネ男。

 所野(トコロノ)テンスケと同じくジャキガン学院の生徒。

 大魔王を倒した英雄ナッセに憧れて、急遽コスプレをし始めた男だ。


「……一緒にコスプレした阿望(アモウ)ロジロウも誘ってみたけど、ダメだったしなぁ」


 ナッツは俯く。

 実は『149話「闇の交錯⑧ 闇に魅入られた末路」』で登場したナッセのコスプレした大男の本名が『阿望(アモウ)ロジロウ』だったのである。

 しかし様子が変だった刻劉(コクリュウ)ジャオウの流星進撃(メテオラン)でボコられて回復装置送りになった。

 あれ以来、ナッセのコスプレを辞めてしまった。

 今は別のキャラのコスプレに入れ込んでしまっているようだ。

 よりによって、なんでプリキュ……なんでもない。最推しならいいんだ。


「とにかく、このゴールデンウィークを使ってナッセに弟子入りしなきゃ!」


 キッと決意を固めた目を見せた。

 大阪駅へ着いたナッツは賑やかな夜景を目の当たりにした。

 腕時計を見やって「まだ十九時か」と安堵し、アニマンガー学院へ向かう。いや遅いだろ!?



 夜でも人々が多く、迷うほどの入り組んだ都市。

 ナッツ自身も戸惑いつつもキョロキョロ見渡しながら地図を何度も確認して、足を進ませていた。

 すると地面から黒い点がポチャンと発生し、それは黒い円となって広がっていく。


「エンカウントだぞ!」


 ナッツは緊迫しながら右手の刻印を灯らせて、ショートソードほどの星光の剣(スターライトセイバー)を生成した。

 大阪駅付近ではいつものスライムやクミーンが複数出現してくる。

(コピペで済まぬ……)


城山式(ジョウヤマしき)スターライト・流星進撃(メテオラン)!!」


 ナッツはナッセのように光の剣を正眼に構え、カッと眼光を放ち駆け出す。

 同時に等しく見えるような……とは程遠いが、凄まじく急いで連続斬りを繰り出して、ことごとくモンスターをズバズバズババッと両断していく。

 そして最後に跳躍して、足裏から空中手裏剣を生み出す事で空を駆け上がって剣を振り下ろす。


「うおおおーっ!! 城山式(ジョウヤマしき)スターライト・フォール!!」


 残った一匹のクミーンを叩き潰し、地面に亀裂を走らせてクレーターに窪ませた。

 足と振り下ろした剣で着地した形となったナッツにジーンと痛みが響き渡って「いだだだだ~!」と涙目になったぞ。

 光の剣を消すと、両膝に手をつけて息切れした。


「はあっはあっはあっ、モンスターより星光の剣(スターライトセイバー)の消耗の方が辛いぞ……」


 ショートソードほどの星光の剣(スターライトセイバー)でもこれだから、バスタードソードほどの太陽の剣(サンライトセイバー)はマジで消耗ヤバい。

 なのでこれだけは流石に再現できない。

 なんでオリジナルのナッセは平気な顔をして振り回していたんだろうか……?

 むしろ光の剣タイプのブッキーにした方がコスパ良いんじゃないかって、頭を駆け巡った。


「まぁいい。ナッセ本人に聞けば理由が分かるかもぞ……。たぶん?」


 そしてついにナッツは夜の静かなアニマンガー学院前に着いたぞ……。



「またなの!?」


 アニマンガー学院の薄暗いエントランスに着くなり、カウンター上にいた受付嬢の妖精がうんざり顔を見せてくる。


「す、すみません……。どうしてもナッセに会いたくて」

「まぁいいわ。こっちとしてはヒマだし。上位生命体である妖精として生きている以上、通常生物の生態のほとんどを消失してしまってるからね。三大欲求ほぼないし」

「え? ……なに?」

「こっちの話。で、あんたもナッセさまに会いたいのよね?」

「うん」


 ナッセのコスプレした出っ歯メガネ男をジロジロ見てニヤケ顔を見せる。


「ははぁ~ん、ナッセさまのファンね。前にも友達だと()()してた小僧も来てたからね。住所は……」

「友達……??」


 紙切れに住所をカキカキしている妖精に聞いてみる。


「なんかくろうに刀心伝の主人公を真似た小僧が来ててね、ナッセさまに会いたくて友達を装ってたのよ。今頃、会えてるかな~?」


 上機嫌なミサカは紙切れをナッツに渡した。

 受け取ったナッツは「間違いない……。テンスケだ……」と確信した。

 先を越されてなるものか、と駆け出していった。それをミサカはハンカチを振って見送った。




 ナッセの住むマンションのエントランスにいる管理人オバサンが呆れた顔を見せていた。


「ちょいと、アンタも? あのねー、アポイントメントとってからにしてよね。今ナッセは出かけてていないから」

「え……!?」

「五時間くらい前にサムライみたいな男も来てたけど、ガッカリして帰っていったよ」

「い、いつ帰ってきますか??」

「ナッセの方かい? ……さぁね。夕夏(ユウカ)家へ帰郷していったからゴールデンウィーク中には帰ってこないと思うけどね」


 テンスケと同じように愕然と膝をついて項垂れてしまう。

 そりゃそうだ。ゴールデンウィークなんだから、旅行とか帰郷とかしてておかしくないよな。

 くっそ!! なんで見落としたんだ!!


 どうしようもないので、トボトボしながらホテルを見つけてチェックインした。

 重い足取りで一室へ向かう時、思わぬ人物に見開いた。


「「あ!!?」」


 なんとテンスケだった。思わず互いに指差して見開く。

 全くの偶然か、ナッセとすれ違った二人の男が同じホテルでバッタリ会ったのだった。

 しかもチェックインした部屋も隣り合わせだった。


「ナッツ!? お前もナッセに会いたくて、でござる!?」

「おお! 本物のナッセに近づきたくて弟子にしてもらいたかったんだ!」

「……弟子に?」

「ああ。オレはもう三年生だ。これからの将来何も考えてないからね」

「うお、思い出したくないでござる……」


 テンスケもナッツもマジンガたちと同級生であるぞ。

 二年間の参加が許される学生限定のクラシック大会にも、もう参加できない。


「だからこそ、ナッセに弟子入りして強くなって将来を切り開きたいんだ!」

「そうだったのか……。拙者はカッコよくて強い技を教えてもらいたかっただけなのに、すごい事考えてたんだな、でござる」


 しかしナッツも首を振る。


「いや、テンスケとそう変わらんと思うよ。そりゃカッコよくて強い技には憧れるしね」

「そうそう」


 二人は意気投合して、笑いながら夜へ散策を繰り出しに行った……。はっはっは!





「やっ、やめてくれっ!!」


 腕に覚えがあるモブ創作士(クリエイター)は怯えた顔をしていたが、トゲトゲの金棒にガッと殴られて吹っ飛んでしまう。

 血飛沫が飛び散り、宙を舞ったモブ創作士(クリエイター)は数十メートル先の街灯に身を打ち付けた。

 街灯の柱が曲がってバチバチっと灯りが点滅して、フッと消える。

 静寂する闇が覆う……。


「ゴールデンウィークでナッセがいない今こそ、大阪を蹂躙する時よ!」


 トゲトゲの金棒を肩に乗せた三メートルの大男が赤く両目を輝かせた。

 そして側には黒いシルエットの男が二人いた。ついでに後方にも笑みを浮かべる黒いシルエットの女もいた。


「フフフ……、血が滾るぜ……」

「大阪っていいですよね。盛大に火を焚くと盛り上がれそうです」


 血気盛んな男。そして冷笑を浮かべる男。

 そして三メートルの大男もニイ……と好戦的に笑む。


「フッ! 猛者蠢く日本を獲る!! この死々王(シシオウ)シジツがな!!」


 ド  ン!!

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