309話「まーたぼっちからの相談かよ!」
例の喫茶店で、また一年生と相談してるぞ。
今度はキンゴローほどではないが、体格のいいブサイクな大男。ドラゴリラも真っ青なほどに鼻穴が大きく両目が寄せられたカバ男。
キリっとした顔でオレたちに一度お辞儀する。
「オラァ……一年生の飼葉ピイロと申す! クラスは蛮族と申す! 相談があり申して!」
「ってか、いつからオレたちは相談役になったんだぞ」
「ホントそうね……」
隣のヤマミも目を細めて呆れている。
「ぬお!? 絵に書いたようなリア充で、気軽に誰とでも話せて困っている人を多く助けてて、大魔王を倒したほどの英雄として誰からも好かれている偉人だと聞き申したが!?」
オレも呆れ果てるしかない。
こないだのモエキが言ってたのと同じじゃん。
「それ誰が言ったんだぞ?」
「創作士なら、誰もが口を揃えて申しておった」
「私たちは聞いてないわよ……」
「そりゃ、当人を前に恐れ多い。あの大魔王を倒したという英雄さまですからなぁ。仮想対戦センターでも対戦したくなくてサレンダーしたという伝説も聞き申した」
「それリョーコとアクトの時だろ……。なんでオレたちにすり替わってんだよ」
「なぬ? 誠か?」
「オレたちが妖精王って知ってるだろ? 種族値が高くて参加禁止されてんだぜ?」
するとピイロは首を傾げる。そして見開いてなにか閃いた仕草を見せた。
「ああ。その事でしたら、つい最近解禁されましたぜ。仮想対戦センターで新しく『EXバトル』が開設されて、そこでは種族値も血脈の覚醒者も関係なくバトルが可能になって申す」
「えぇ……」
ジト目で引く。
恐らくS・Cシステムによる剽窃の為に働きかけた解禁が、そのまま働いているって事だろう。
元々はオレのスキルを剽窃する為だったらしいな。
……だが目標だった無効化を奪おうとしたら、逆にシステムとデータ丸ごと消し飛んで解散したとかなんとか?
で、その後もそのまま参加オッケーの方向へルールが改定された。
「もちろん、新しいグレイドA級グランプリバトルも創設されてます。ただグレイドA級クラシックバトルには参加できないようですが」
かいつまんで説明すっけど、グレイドA級は最高峰の重賞。もちろん下にグレイドB級、グレイドC級などの重賞もある。
クラシックは十七歳限定で一度しか出られない重賞。三大重賞バトルがある。
グランプリは一定年齢以上の創作士が挑める重賞バトル。
小学校、中学校、高校、学院限定の『甲子園』『明治魔導聖域』も一応は学生限定クラシックバトルに分類される。
……ここまで仮想対戦の設定が広がるとは思わなかったぜ。メタァ!
最初はワール〇トリガーみたいな感じだったのにな。メタァ!
「まぁ、興味ないし別にいいが」
「ええっ!? もったいないと申す! 夢の百冠創作士も実現しそうです」
グレイドA級重賞バトルを百回も優勝すれば百冠ってなる。これ豆な。
十冠はともかく、これを実現した創作士は未だいないんだそうだ。
毎年周回するみたいな感じで優勝しなければならないし、研究されて攻略されるし、新しい強豪もどんどん出てくるから難易度高い。
ただ引退するまで単純に五〇〇〇戦以上できるらしいと聞くがな……。
「それはいいから、どんな相談なの? まさかクラスでぼっちだから何とかして欲しいとかじゃないわよね?」
ヤマミに言われ、ピイロはギクッと竦んだぞ。図星かよ……。
つーかぼっち多くねぇ?
モエキ、キンゴロー、カグイヤーン、そして今回のピイロ。
もうこのグループで友達になれよ。これで一気に解決してくんねぇかな?
「オラァ、こんな見た目で怖がられて友達できないのが辛いで申す!」
「じゃあさ、似たような境遇でモエキ……」
「いやいや、悲鳴を上げながら縛ってきて爆撃してくるんで却下と申す」
「カグイヤーンも友達欲しがってたわよ」
「いやいや「イケメンになってから出直して参れ」とにべもなく断られたで申す」
「キンゴローなんかどうだ? 同じようなもんだろ??」
「……自分よりデカくて怖いで申す」
目を泳がせてモジモジとするピイロ。意外と小心者だな。
「話は聞いただす!!」
「うむ! これは逸材!!」
となりの塀から顔を出すように、フクダリウスとキンゴローが席を立ってきたぞ。
これには驚いた。偶然にも一緒に来てたのか……。
「隣から失礼する……」
ズンズン歩み寄ってくる巨漢。二人もいると圧巻だなぞ……。
「仮想対戦でチーム作ろうと思っていてな、三人目が欲しかっただす! いつもコソコソ避けられて嫌われてると思っていたが、そうでなかったようだす!」
「ウム! 見たところ、カバに変身できる蛮族。資質もある。鍛えれば戦力になるぞ!」
「わはははは!! よし! これでチーム結成だっす!!」
「善は急げ、だな。行こう」
「え? え? え?? ちょっ……」
ガシッとピイロを掴んでズルズル引っ張っていくフクダリウスとキンゴロー。
「嫌だああああああああああああああああああああ!!!!!」
「良かったな。意気投合できる友達ができてさ……」
「がんばって」
オレとヤマミは生暖かい笑顔で手を振って見送った。
「薄情者おおおおおおおおっ!!!」
ピイロは泣き叫びながら引きずられていった……。
後日、チームを結成したらしいと聞いた。そしてシゴかれたとかなんとか……。
これで三大巨漢チームとして仮想対戦で、その名を轟かす……かも知れない。
「これにて万事解決って事かな? たはは……」




