306話「キンタローの子孫、ナッセをスカウトする!?」
授業中、オレはテーブルに頬杖ついてボケーッとしていた。
すると隣のヤマミが肘鉄でつついてきたぞ。横目でじーっと見てきている。
「ナッセどうしたの?」
「……いや、一年生が絡んできて思ったんだが……。卒業した二年生とはあんま絡まなかったよなーって」
「それはそうね」
一年生として入学した当時、入学式でも顔を合わせる機会はあった。
しかし音沙汰もなく、知らん内に夏大会『仮想対戦・甲子園』の地区予選で初戦敗退したってだけだ。
卒業間際にサプライズで団体戦をやろうとなった時に、二年生から拒絶されて中止になった。
あんま碌に覚えてねぇ……。
クマみたいなシガレってヤツがオレにビビって逃げ出したくらいしか印象がない。
「というか、もっと交流イベントはあったと思うけど、人造人間大侵攻やヤミザキの日本征服が続いてそれどころじゃなかったでしょ」
「それもそうか」
しかし今は違う。
一年生が絡むようになって、そのクラスメイトが徐々に明らかになっていったぞ。
最初はインドピース編で登場したコンドリオンと、【第一部】本編に出ていた藻乃柿ブンショウの娘であるエガラと、マイシの妹であるナガレ、妙な異星人っぽいカグイヤーンだけだった。
「だが青が特徴のミキオと赤が特徴のサラク、ピンク猫の獣人ミャコとミナト、そしてぼっち嬢様モエキ……と判明してきたぞ」
「厄介なのはミキオね。変に絡んでくるわ」
「でも、カルマホーン生えてねぇから悪いヤツじゃないんだろ?」
「そうね」
ようやく今日の授業が終わり、夕方頃になって生徒たちが帰路につく────。
「待てだす!!」
またか、とゲンナリと振り向くと、二メートルを超える大柄な筋肉隆々の大男。なのに〇に“金”文字が書かれた赤い腹掛けをつけた変態が仁王立ちしていたぞ。
黒髪オカッパで、ツリ目の強面。
「一年生として入学した坂田本家の坂田キンゴローだす!! クラスは戦士だす!」
野太い声で堂々と名乗ってきたぞ。ドン!
オレはヤマミと一緒にジト目でしばし止まっていたが、キョロキョロ見渡す。
実は他の誰かを呼び止めたのでは、と望みに懸けているのであるぞ。
「お前らだす! お前ら!! 英雄のナッセだろだす!?」
ビシッと指差さしてきた。面倒くせぇ……。
ゲンナリな気分でヤマミを見やると、彼女も同様にウンザリしてそうな顔を向けてきた。
「あ────……用事あるんで、また今度でいいですか?」
「私も同じく」
「待てだああああすッ!!!! クラスメイトで馴染めず困ってたんだから、ちったぁ相手してくれだっすううううう!!!」
涙目でドンドン地団駄踏んできて、地響きが断続的に広がっていく。
またぼっちキャラかよ……。
まぁ、あの格好じゃドン引きされて敬遠されそうではあるが……。
怖い顔の上に恥ずかしいカッコしてるし、オレだって絡みたくねぇよ。
「坂田キンタロー……。静岡県小山町で生まれた有名な偉人よ。あの酒呑童子を討ち取ったとか聞いてるわ……」
「ほう、よく知ってるだすな!」
「その子孫って事か……。本家とか言ってたし」
「あたぼうだっす!! このワッスこそが正当なキンタローの血を引きし子孫だっす!」
「すげぇな。じゃあこれで……」
褒め言葉でキンゴローが照れてきた時に、切り上げようと手を振ってオサラバ……。
「待て待て待てだっすううううう!!!!」
「えーなんだよ……」
「いい加減にして欲しいわ」
キンゴローは思い詰めた顔でしばし思案してから、こちらへ合掌する。
「頼むだす! ワッスと仮想対戦でチームを組んでくれだっすううう!!」
「なんでオレと!?」
「これから後に、日本を中心とした仮想対戦の重賞を獲得し、いずれは世界の重賞にも挑戦して日本最強を掲げたいだす!! その為にもナッセさんとヤマミさんの協力が必要だす!!」
もうやだ! こちとら異世界へ冒険したいって時に、そんな誘い嫌だぞ!
「悪いが、オレには目的があるんだぞっ!! ムリムリっ!!」
「そうよ! 他を当たって!!」
「あああああああああああああああああッ!!!!」
駄々っ子のように絶叫するもんだからうるさいし、周囲の人も驚いて逃げ出していくぞ。
そんな時にフクダリウスが「なんの騒ぎだ?」と現れた。天の助けだ。
フクダリウスだって大柄な大男。
「あの! キンゴローって坂田本家の人です! フクダリウスさんに用事があるそうです!」
「ええ、よろしく頼むわ!!」
すかさずヤマミの黒い花吹雪が渦を巻いてズズズズズとオレたちを吸い込んで掻き消えた。
取り残されたフクダリウスはため息をつきつつもキンゴローへ振り向く。
「……ワシに話とな?」
「ええええ……。ワッスはナッセさんたちをチームに加えたかっただっす……」
「諦めろ。ナッセとヤマミは学院卒業後に異世界へ旅立つのだ。邪魔せんでくれ」
「な、なんとか説得してくれだす!!」
「ダメだ! 諦めろ! それともワシでは不服か?」
するとキンゴローは「うぬううううう!!!!」と唸りあげて、凄まじいオーラを放射して威圧が膨れ上がっていく。
ギリギリと歯軋りして、ブッキーを取り出すと巨大な戦斧に変形した。
なんと一万五〇〇〇もの威力値を発揮してきたぞ。(え? しょぼ)
「力不足だす!! 妖精王ナッセとヤマミだからこそ、誘っただすっ!」
「そうか……! 見くびられたものだ」
フクダリウスは目を瞑ってフッと笑う。
仮想対戦センターで、歓声が湧き上がる。
なんとフクダリウスとキンゴローがソロ対戦する事になったのだ。しかし……。
「ぬうんッ!!!」
オーラ漲るフクダリウスの剛力一閃が、キンゴローを切り裂いてドンと棺桶化させた。
あっという間の決着に観客も「えええええッ!?」と驚きで湧き上がった。
しかもフクダリウスの十戦中完封完全完勝……。
二年生の中でも最強クラスと言われるフクダリウスの強さが、より際立った結果に終わった。
ソロ対戦が終わって、土下座のように沈んでいるキンゴローにフクダリウスはため息をつく。
「世界への仮想対戦の挑戦、ワシも参加するのはやぶさかではないが……?」
「お願いだす……!! お師匠さま!!!」
「む?」
泣きそうなツラでキンゴローは縋り付く。
「頼むだす!! ワッス弱いままでガマンならなかっただっす!! 鍛えてくれだす!!」
「ふむ、話を聞こうか? なぜそんな必死になってるのかを……」
「はいだす!!」
どうやら坂田本家だというのに、キンゴローの父キンメキは日本全国の仮想対戦でグレイドAクラスの重賞を一つも獲れず屈辱の引退になってしまった。
一応グレイドBやグレイドCはいくつか獲ってはいるが……。
それでも数多くの親戚も「落ちぶれたか」とガッカリする始末。
その無念を晴らすべき息子のキンゴローが奮起すべき、わざわざナッセのいる大阪の学院に入学したのだ。
そこで優勝経験のあるナッセたちをチームに引き込めば、返り咲く事ができると考えた為である。
しかしフクダリウスにも敗れた。
「気持ちは分かるが、ナッセは諦めろ。代わりにワシが引き受けよう」
「本当だっすか!?」
「グフフッ! 実を言うとワシも将来どうするべきか悩んでおったからな」
フクダリウスの方も、オカマサとドラゴリラがいなくなってソロになっていた。
そのまま家族と山奥で地道に畑でも耕そうと思っていた。だが、ここに来て新しい夢ができたのであったぞ。
「ともに世界を獲ろうではないか……!」
「はいだす! お師匠さまああああっ!!」
感激したキンゴローはフクダリウスと熱く握手した。ギュッ、バキキッ!
「ぎゃああああああああだあああすっうううっ!!!」
思いのほかフクダリウスの握力が強すぎて、キンゴロー涙目で絶叫したぞ。




