305話「先輩のような後輩!? 巨乳モエキさん?」
朝、ヤマミと一緒に学院前に来ると、二人を見かけた。
「ミャコと……誰?」
「一年生のクラスメイト同士ね。夜宵ミナト」
ヤマミが青年の方の名前を教えてくれた。
するとミャコがこちらへ振り向いて笑顔を見せて手を振ってきたぞ。
「あ! ナッセ先輩…………と、ヤマミ先輩!」
「なんで私には間があるのよ……」
目を細めて不満げなヤマミ。
ミナトはこちらを訝しげに見てきてるぞ。またミキオみてーに突っかかったりしねぇよな?
とはいえ、顔立ちが整っていてモデルみてーにイケメンだぞ。
構わずヤマミが愛想笑いしながら、サラッと後ろ髪をかきあげる。
「随分と仲良しね」
「ああ。知り合ったばかりだけどね。ミャコは目が離せなくて可愛……、じゃなくて、ゴホン!」
「み、ミナトっ!?」
可愛い言われてミャコは赤面してあたふたしていき、ミナトも赤面して目を泳がせる。
見るからに二人とも動揺してる感じだ。
なんだかウブで初々しいなと、懐かしく思う。最初オレたちもそうだったなぁ。
「オレたちも最初そうだったけど、でぇじょうぶだ。純真な愛は繋がれるさ。がんばれよー」
「「はわわわわわわわわっ!!!」」
励まそうと思ったんだが、逆に二人は茹で上がるほど赤面してバタバタしてしまったようだぞ。
通り過ぎていくコハクが「もげろ! もげろ!」とブツブツ呟いていたぞ。
「朝っぱらから、なにやってんの? バッカみたい」
キツい声に振り向けば、やはり青いのが特徴の冷めた目のミキオだ。
フッと鼻で笑ってくる。
「あー、二組ほどリア充よろしくイチャイチャしてんのかい。おめでたいよ」
「本当は羨ましいって正直に言いなよ。陰キャ正義サマ」
ピリッ!!
横槍入れてきたのは、やはり赤いのが特徴のサラク。ニヤニヤしてて口元の魚の骨が揺れる。
カチンとしたミキオは険悪な目を向ける。
それに構わずサラクは手をパタパタ振るう。
「先輩さんも相手すんなよー。コイツ構ってちゃんだから」
「いつもいつも偉そうで逆撫でしてきて、そういうのムカつく! あんたぼっちなのはそれが原因でしょーが! ちゃんと性格直せよ!」
「あーそうですかー。昨日ボロ負けしてちゃ、そんな説教虚しいだけじゃん」
「てめぇッ!!」
殺意膨らんでミキオはブッキーを取り出してサラクへ飛びかかる。
するとムチのようなものがしなってきて、ミキオとサラクの手足と胴体にグルグル巻きついて吊るし上げてしまう。
「ぐっ!」
「てめ! 離せよ!!」
オレとヤマミとミャコとミナトは呆然とする。
「おやめなさい! 全く相変わらず落ち着きがないわね……」
金髪ロールの優雅な身なりの女性が、アサガオの花を添えた植物造形のブッキーを手にしながら歩いてきた。
ムチみたいに変形させて、それを伸縮自在に操って二人を縛ったのだろう。
おっとりしていてタレ目の優しい顔立ち。
そして巨乳でボイーンとしておる。一年生では一番大きいかもぞ。
「あらまぁ。先輩ですわね。私は美牧モエキです。よろしくお願いします」
丁重にお辞儀してきてボヨンと胸が垂れる。
離せー、ともがく二人にキッと睨む。アサガオの花を模した拳銃に変形させて、光弾を二連発。
吊るしていたムチが切れて二人がドスンと落ちる。
「ケンカするなら場所を選びなさい!」
そう言いながらモエキは武器に変形させたブッキーを元に戻して懐にしまう。
「ムチで縛ったりする能力に加えて、花の造形銃か……」
「手慣れているわね」
「あなたたち英雄と比べれば、本当に拙いものではあるけれども」
ニコリと微笑んでくるモエキ。
まるで先輩のような後輩だなぞ。なんかシッカリしてる嬢様ってキャラか。
一年生を纏めてそうなリーダー格にすら思えてしまう。
「もしケンカがしたいのでしたら、私もお誘いくださいませ。まとめてお相手しますわよ」
「「ぐっ!!」」
モエキにキツく言われ、苦い顔のミキオとサラクは顔を見合わせるとフンと背け合う。
そしてズカズカと学院へ入っていったぞ。
ふう……、モエキってやつのおかげで面倒にならずに済んだぞ……。
しかし二人を相手にするほどだから、相当な腕前と見込める。ベテランな雰囲気が漂ってるしな。
「それでは失礼いたしますわ」
頭を下げて学院へ優雅に歩いて行った。凛としてるな。
呆然とするミャコとミナトはハッと我に返ると、そそくさと後に続く。
オレはヤマミと顔を見合わせる。
「一年生も曲者ぞろいね」
「ああ。本当に個性豊かだなぞ」
後ろから遅れてカグイヤーンが悠々と歩いてきたぞ。
着物を模したような軽装に、ウサギの耳を模したツノが特徴の無表情な美女。
風貌からして、かなーり違和感だらけなキャラではあるが特に悪いヤツでもない。
「おはようございます。ナッセ先輩とヤマミ先輩」
「あ、ああ……。おはよう」
「おはようございます」
なんかこっちをじーっと見てくる。
「……友達作る方法知っておるかの? みんな私に絡んでこないのじゃ」
そんな事言われましてもな……、オレだって陰キャのようなもんだしなぁ。
ヤマミも似たようなもんだしな。
ってことで、質問する相手を間違えてる気がするぞ。
「モエキさん辺りがいいんじゃないか? 初めて会ったけどお嬢様で優しそうだったぞ」
「ええ。世話を焼いてくれそうな人格者って印象だったわ」
「そうは言うんじゃがな……」
カグイヤーンは横目で困った顔で話してきた。
前日の学院で女子トイレの中でモエキが「うう……馴染めないわぁ……寂しいわぁ……。ここでもぼっちなのね……」とシクシク泣き言をボヤき続けていたらしい。
授業中は優雅な振る舞いで、誰もが完璧なお嬢様って感じだったのに凄い寂しがり屋だという。
「……思い当たれば、誰かに絡む事はあっても絡まれる事はなかったのじゃ。いつも一人で優雅に振舞っていたが、本当は泣きたくてたまらなかったのかものう」
「そんな事が……」
「見た目によらないわね」
モエキは取っ付きにくい高嶺の花だから、逆に誰も絡めないって感じか?
泣き言から察するに、入学以前でもぼっちだったんかな?
あんな人格者みてーな立派な人なのに……。
なんかカグイヤーンがモジモジして俯いているぞ。
「わら……私も声をかけるの勇気がいるのじゃ。付き合ってもドギマギしそうなのだ。だからミャコとミナトみたいな自然と付き合える友達が欲しいのじゃ」
「他にもクラスメイトいるんだろ?」
「簡単に言ってくれるのう。あ、遅刻するから話はまた後でじゃ」
そそくさと学院へ入っていき、オレたちも急いで続いた。
ほどなくして学院のチャイムが鳴り響く。キーンコーンカーンコーン!




