267話「魔女たちの楽しい深夜パーティー!!」
地元の家にもスーパーファミコンがあったのでオレはヤマミと一緒にゲームをしていた。
極上パ〇ディウスとかいう、変なキャラのシューティングだ。
二人プレイで進んでいる。
「そういえばさ」
「うん」
画面では猫の海賊船と戦っている。
「今日クリスマスだっけ?」
「クリスマスイブ。前夜。明日が本番のクリスマスよ」
「そうだったんか」
「うん」
巨大なペンギンのボスを撃破して次のステージ。お菓子の城でケーキとかある変わった面だ。
ここのボスはキツいんだよな。
「さすがにプレゼントはないか。オレたちもう大人だしなぁ……」
「私はもらった事ないけどね」
「え? 夕夏家はクリスマスやらないん?」
「やらない。今年まで父さんは理不尽な支配体制を続けてたから、クリスマスなどの行事はムダだと思ってたんでしょ」
あー、そうだった……。その頃のヤミザキはすげー強欲で悪い人だったわ。
「あっ!」
ボ────ン!
結局7ステージでゲームオーバー。弾幕スゲーよ。
一通り済ませると、電気を消して二人並んで寝たぞ。ぐーぐー!
なんか違和感がして、オレとヤマミはハッと目を覚ます。
身を起こすと、SFチックなカプセル状のベッドの上にいた。
「地元の家で寝ていたのに……?」
「まさか……」
ここは薄暗い基地のような内部。金属の壁には電子路みたいなのが屈折しながらラインを描いていて、断続的に光が走っている。
周囲の壁は円を描いていて、床は灯る紋様。『客間の部屋』と書かれているぞ。
「ヤマミ……!?」
「ええ、ここは『洞窟』システムを管理する中枢部のどこか」
「突然なぜ?」
気づいたらここにいた。
「はろぉ~! ナッセ、ヤマミィ~」
「相変わらずラブラブな二人だぜ……」
ドアが上へシューと開かれると魔女アリエルとヤミロが入ってきたぞ。
「どういうつもり?」
「もうすぐクリスマスだからぁ招いたのよぉ~~」
不機嫌なヤマミに対しても、アリエルは艶かしい笑顔できびすを返していく。
「ククク……まぁ来な」
ヤミロも猫背でヒタヒタアリエルの後へ続く。
オレはヤマミと顔を見合わせる。コクリと頷く。ヤマミはため息。
パノラマのように大窓が左右に広がってる。そこからは魔界オンラインの全貌が見下ろせた。
多くの悪人が領土争いで殺し合いしている。
深夜という雰囲気に合わせて、ロウソクだけで灯している薄暗い部屋だ。
嬉しそうな顔のアリエルがパチンと拍手。
「え? パーティーやりたかった?」
「そうよぉ~」
まさか魔女アリエルのサプライズにオレは驚いた。
丸テーブルでオレ、ヤマミ、アリエル、ヤミロで囲んでいる。色んなジュースやケーキ、パフェなどが並んでいるぞ。
豪勢なエフェクトか、キラキラしているように見える。
深夜だからか背徳感を感じるぞ……。
「オレはクッキーの弟子なんだけど、いいのか?」
「子どもには罪が無いからねぇ~」
うふふ、と親戚の子どもを愛しく思うような恍惚とした顔だ。
……妖精王って、従来の生物のように性行為で繁殖するのではなく、親からの妖精の種を摂取して眷属を増やす方法だっけ?
ややこしいが、血が繋がってなくても妖精王として変化した自分は子どもという扱いになるっぽい。
「オレはクッキーの息子で、ヤマミはアリエルさんの娘、って事か」
「その通りよぉ~~!」
「ククク……、まぁその認識でいいぜ」
オレがチョコパフェを美味しく頂いていると、アリエルが背中から抱いてきて頬ずりしてくる。
これも親戚の子どもを愛でてる感じだコレ。
「妖精王ってぇ~、なかなか増えるものでもないからねぇ~」スリスリ!
「アリエルさん! ちょっと!」
ヤマミが食ってかかるが、逆にアリエルに捕まってしまう。
そしてオレとヤマミを両脇に交互頬ずり。
「彼氏だもんねぇ~~」スリスリ!
むずがゆいなぁ……。
並行世界渡ってる時は斬り刻まれたりとか、洞窟では闇の重圧で死にかけたりとか、ろくな目に遭っていないんだが…………。
「まぁまぁ、よしよぉし~~」
なんか急に優しく甘ったるいナデナデしてくるぞ。
「あー、実はよぉ……リッチが急に復活したの、アリエルのせいだぜ」
「ちょっ! 内緒ってたでしょぉ~~!」
ヤミロが告げ口してきて、アリエルが慌てふためく。
「あの不自然な復活は……!」
「あなたのせいっ!?」
ヤマミが怖い顔でキッ!
「わ、悪気はなかったのよぉ~! 絶っ対勝てると見てたからぁ~!」
しどろもどろとアリエルが手を振って慌ててる。
ヤミロは「ククク……」としたり顔。
……っても、最初はとてつもなく邪悪な魔女って感じだったのに、これじゃ親戚のおばさんだ。
「おばさんはないわよぉ~」
ジト目でアリエルが膨れっ面。
「アリエル心読めるから」
「ええっ!?」
既に知ってるのか、ヤマミが冷静にそんな事言ってくる。
オレは思わず口を両手で塞ぐ。意味ないのに。
「まぁパフェ美味しいからいいか」
とろけるような甘いチョコ、冷たいアイス、柔らくて甘いクリーム、中のフレークと溶けたアイスとチョコが混ざってサクサクいい味になる。
ケーキも甘いクリーム、酸っぱくて甘いイチゴ、ホワイトチョコの板、ふわふわスポンジと、ほっぺたが落ちそう。
炭酸ジュースでシュワシュワ美味しい。
「ヤミロと一緒にぃ~たくさん作っといたからねぇ~~」
「今回でなけりゃ引き受けねぇぜ……」
嬉しそうに手を合わせて首を傾けるアリエルに対し、ヤミロはジト目で見やる。
かわいい子どもと一緒のパーティーだから手伝ったっぽいな。
ますます親戚みてぇ……。
「せっかくのパーティーに、私を呼ばないなんてっ!!」
気づけばクッキーが腰に手首を当てて憤った顔で現れていた。ドン!
アリエルは悪びれる様子もなく「お二人さんと楽しみたかったからねぇ~」と流し目で笑う。
クッキーはドンと酒樽を叩きつける。
「アリエル! 飲み比べよ!」
「へぇ~~? 勝てると思いぃ~?」
結局、アリエルとクッキーは酒を飲みたかっただけだった。
ガブガブ大量に飲んで、めっちゃ酔って、顔真っ赤にしてフラフラして満足げ。
「いつものの事だから気にしなくていいぜ」
ヤミロはビスケットをバリバリ食っている。
なんだかんだアリエルとクッキーは仲良しなんだなぁと思わせられる。
普段は憎まれ口叩いてても、こうして酒を飲み合う仲。
「ナッセもぉ~大きくなったねぇ~~」
ベロベロに酔ってるクッキーが嬉しそうにこちらの頭を撫でてくる。
眠たいのか、なし崩しにオレを抱きしめてきたぞ。
まるで母に抱かれたような、懐かしい温もり。なんだか気が緩みそうになる。
「私の娘をよろしくねぇ~。たぁ~っぷり愛情を注いでくれると嬉しいわぁ~」
今度は酔ったアリエルがオレの頬をナデナデしてくる。
ついヤマミを見た。恥ずかしくなって目を逸らす。
「なんで目を逸らすわけ?」
ぐいと腕を引っ張られて、顔を間近に寄せてくる。
そんなヤマミが愛しく思う。
アリエルとクッキーは酔い潰れて床に横たわっていた。幸せそうな寝顔……。
「見苦しい物を見せたくねぇ……ここはお開きといこうや。また元気でな」
ヤミロはパチンと指を鳴らす。
気づけば、自分の部屋に戻っていた。二つ並んだ寝床でヤマミとくっついたまま。
「あれ? 家に戻った??」
「ふふふ……続きしましょ? 朝まで寝かせないわよ」
がっしりオレの首を両腕でホールドし、ヤマミが小悪魔的な笑顔を近づけてきている。
────アッ!




