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265話「無限列車編① 悪夢の幕開け」

 あちこち階段が入り組んでいて、多くの部屋が上下左右に並び、明かりが所々灯っている、不気味で広大な赤い迷宮……。

 これこそが『無限迷宮』なる亜空間なのだーっ!

(鬼〇の刃のパクリとは言わんといてw)


 こんな無限な迷宮でただ一匹、高台で立っていたぞ。

 つぶらな黒目、にっこり優しそうな顔、デフォルメな太ったクマ。

 されど全身は赤く染まっていて、更に深紅のチョッキの背中には極悪王(ゴクアクオウ)と禍々しい三文字。


「クマー!」


 すると五人の幹部が瞬間移動のようにババッと馳せ参じた。


「ははっ! 赫怒(セキド)さま!! 我々はここに!」


 シバイシタイ、カグイヤーン、ルイト、ネムイーゼ、ステェキ先輩。

 いずれも極悪王(ゴクアクオウ)の下で暗躍していた者どもだ。面構えが違う。


『シバイシタイ』

 六つ目のカブトムシみてーな不気味な風貌している。

 六つある金輪際(こんりんざい)填星眼(てんせいがん)でエロ関係の能力を複数持つ。

 土星で腹を切って死んだはずが蘇っていた。なぜかこんな所にいる。

 威力値:560000


「腹が痛いんで有給とっていいですか?」



『カグイヤーン』

 長身の女性で渦を巻くような着物。白い肌。額からはウザギの耳のような角を生やす。無表情。

 額に金輪際(こんりんざい)填星眼(てんせいがん)

 年末のコミケに間に合わせるべき、必死に漫画を描いている。

 副業として赫怒(セキド)さまの下で働いていた。大人しく従っているのは給料がいいから。

 自分の亜空間を6つも所有している。

 威力値:380000


「こんな忙しい時期に呼ぶな。まだ漫画描き終わってないぞ」



『ルイト』

 髪も肌も白い少年。赤い目。キレやすいモラハラ。ままごとが好き。

 特殊魔法『織糸魔(オイトマ)』で糸による多種多様な能力が使える。

 斬糸(ブレイト)(糸を振るって輪切り、もしくはサイコロステーキにしてしまう)

 繰得糸(クリエイト)(対象を糸を絡めて縛ったり、切断したり、移動に使ったり)

 縛糸(シバイト)(対象を糸で絡めて縛り上げる関節技。え?)

 振廻糸(ブンマワシイト)(糸で捕らえた対象をブンブン回す)

 熱糸(アツイト)火魔法(ホノ系)を付加させた赤い糸)

 冷糸(レイト)氷魔法(ヒェラ系)を付加させた白い糸)

 輝糸(カガヤイト)光魔法(レヴ系)を付加させた輝く糸)

 暗糸(クライト)闇魔法(メア系)を付加させた黒い糸)

 遅糸(オソイト)(粘着性のある糸で動きを鈍くさせる)

 殻糸(カライト)(糸で自らを包んで防御力アップ)

 手話糸(スパイト)(糸電話の要領で遠くと会話できる糸。盗聴もできる)

 再生糸(サイセイト)(体を糸状に変換して修復する。※ルイトは使えない)

 威力値:21000


「これから僕はママとオギャりたいんだが……」

「あの? 赫怒(セキド)さま、腹が痛いんで有給とりたいんですが……?」


 空気を読まないシバイシタイに、ルイトは怪訝な目を寄越す。

 こんなヤツいたっけ?

 気づいたら混じっていた。



『ネムイーゼ』

 黒髪三七分け。坊ちゃんみたいな風貌で紳士服。両手の甲に魔眼がある。両手魔眼流行(はや)ってんのかな?

 トコトン幻惑術でハメるタイプ。

 全く幻惑術が効かない相手にはメチャクチャ弱い。肉体労働チョー苦手。

 寝夢湅眼(ネムネメ)(魔眼。虹彩は灰色で瞳孔が下弦の三日月型。凝視された生物は酔夢の幻惑術にかかる。その甘い夢で精神が溶かされると死ぬ)

 威力値:160


「うふふ! その可愛らしい赫怒(セキド)さまは今日も魅力的ですね~」



 すると鞘から刀を抜く少年がスタスタと歩き出したぞ。


賽転(サイコロ)ステェキ(先輩)』

 なぜ先輩かというと先輩だから。黒髪おかっぱ。ツリ目。卑しい笑みしてる。

 安全に出世したい。

 実は呼吸法と全ての型を同時に発動し、かつ常時に発揮できている先輩。すげー。

 肺の呼吸(口から空気をスーハーして酸素を体内に取り込む)

 肉の呼吸(上記で取り込んだ酸素を血管を通じて全身の細胞が吸収する事でエネルギーを得る)

 (いち)の型・禁宍(きんにく)(全身の筋肉を巧みに伸縮させる事で歩いたり、走ったり、物を持ったり、刀を振るったりできる)

 ()の型・穏清(おんせい)(喉を巧みに使い、口から言葉を音にして発生させる)

 (さん)の型・史核(しかく)(両目の眼球を巧みに使い、外部の情報を脳に取り込む)

 ()の型・蜀斯(しょっかく)(肌で外部の質感を感じ取る。熱い、冷たい、痒い、痛いなど複雑な感知能力も有する)

 ()の型・朝狢(ちょうかく)(耳を巧みに使い、外部の音を聞き分ける。生物の声も聞ける)

 (ろく)の型・御學(みかく)(口から摂食して、舌で美味しいか不味いか見分けれる)

 (しち)の型・仇角(きゅうかく)(範囲が限定されるが、鼻から取り込んで匂いで判別できる)

 (はち)の型・粋明(すいみん)(数時間の睡眠によって体のメンテナンスを行い、回復できる)

 (きゅう)の型・聖翼(せいよく)(条件は厳しいが、未来へ生命を繋げる為の大事な能力)

 (じゅう)の型・寿能(ずのう)(脳を巧みに使って、記憶や学習、思考などを行う)

 サイコロステーキ(自分が死ぬ)

 威力値:2100


「へっ! このままだと完結まで明らかにされなさそうなので上記で説明しておいたぜ」


「お前っ! 赫怒(セキド)さまに無礼だ! 頭が高いぞ!!」

「ルイト、おまえビビリすぎ!」

「ちょっと、ねぇ、腹が痛いんで有給とりたいんだけど聞いてない?」


 ビビってるルイトに構わずステェキは赫怒(セキド)さまへ歩み寄っていく。

 訴えるシバイシタイは完全に空気。


「お、部下になったフリして近づいてみたが丁度いい弱そうなボスがいるじゃねぇか。こんなクマなら俺でも殺れるぜ」

「な!? お前はスパイだったのかッ!? 唐突すぎる設定だ!」

「お願い聞いて! 腹が痛いんで有給とって永遠に休みたいのでお願いしたい」


 シバイシタイに、ルイトは振り返って「お前誰だよ!」と突っ込む。


「あ、最近ここへ就職したばかりのシバイシタイです。でも腹が痛いんで有給でずっと休みたいです。辞めるまで」

「それ給料貰うだけじゃねーか!」

「うん」

「ふざけんな!」


 ルイトはシバイシタイに糸を絡ませて縛り上げるグギギ! 縛糸(シバイト)だ!


「また腹が裂けそう! いたいいたいいたたたたた!」

「いいから働けー!」

「いやだー!」


 彼らを尻目に、ステェキは赫怒(セキド)さまに対して自信ありげな笑みを浮かべた。


「お前らはひっこんでろ、俺は安全に大物を狩りたいんだよ。大物さえ狩れば、賞金額も多くなるからな。俺はぼっち状態だが、とりあえず俺はこのクマ一匹を倒して帰還するぜ」


 刀を振るおうと駆け出す。

 赫怒(セキド)さまはビキビキと血管が浮かんで、額から仰々しい角が生えてくる。


「クマー!」


 なんとステェキはサイコロ状に分割されて飛び散った。

 ルイトはガタガタと恐怖に震え上がるしかない。


極悪王(ゴクアクオウ) 赫怒(セキド)さま』

 見た目は可愛らしいクマの風貌している。全身真っ赤で、更に深紅のチョッキを着ている。

 怒ると血管が浮かんで、額からツノを出す。

 基本的に傲慢な独裁者。

 気に入らないとすぐ癇癪(かんしゃく)起こして誰か惨殺する。

 威力値:103000


 ズズズズズズズ……!


 威力値10万級の凄まじい威圧が膨れ上がってくる……。

 ルイトにとっては天上の神のようにも見えて、恐れおののく対象。



「コミケまで時間がない。追い込む為、この副業は辞めさせてもらう」


 なんとカグイヤーンが大胆不敵に立ち上がり、退職届けの封筒を差し出す。

 赫怒(セキド)さまは激怒を顕にしている。ゴゴゴゴ……!


「クマー!」

「クマクマうっせぇよ! カグイヤーンパーンチ!!」」


 カグイヤーンは赫怒(セキド)さまの腹に強烈なワンパンを叩き込む。


「ギハッ!」


 赫怒(セキド)さま、腹を貫かれあっけなく死んだ。



「な、なんて事を!? う、う、うわああ、体が崩れるぅぅぅ……」

「あらら? 無限列車の運行はこれで終わr」


 ルイトとネムイーゼは赫怒(セキド)さまの魔力による隷属の為、一緒にくたばった。





 二〇〇九年十二月二一日。


 オレはヤマミと一緒に富山行きの列車に乗り込んでいて、ついさっき発車された。

 ガタンゴトン揺れられて、流れていく景色を眺める。


「今だから言うけど……」

「なに?」

「この列車で、行方不明多発してる」

「え? そうなん?」


 ヤマミがそんな事言い出したからビックリして見渡してしまったぞ。

 普通に乗客がちらほらいる車内。至って異常なし。


「命からがら逃げ出せた人の話だと、いつの間にか異次元空間へ迷い込んで、列車は延々と走り続ける。だから無限列車ってね……」


 なーんか某漫画のアレと被るけど、こっちは違う理由だなぞ。


忽然(こつぜん)と大勢の乗客が列車ごと消えて、未だ行方知れず」

「逃げ出したヤツが行方知ってるんじゃねぇのか?」

「ええ、極悪王(ゴクアクオウ)と呼ばれる赫怒(セキド)さまが真の黒幕。恐怖統制で部下を従わせ、全国で暗躍している悪魔組織。たぶん独自の亜空間を持っていて、そこに拉致(らち)されてしまったのかも」

赫怒(セキド)さま……」


 思わず息を飲んだ。

 ダウートの事もあってか、四首領(ヨンドン)級の大物かと想像してしまう。

 インドの時みてーに六道輪廻なーんてのが起きててもおかしくない。


「気を引き締めるかぞ」

「ええ」


 いつ何が起きてもいいように、感覚を研ぎ澄ます。




 …………しかし、富山へ普通に着いてしまったぞ??


 ついでに今日を境に列車ごと消える事件は起きなくなっていた。

 つーか何だったん? 都市伝説だったん??




 ~無限列車編・完~

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