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263話「魔眼ショップ㊦ だわさ店長アイミちゃん!」

 魔眼ショップには二人が運営してるみたいだぞ。

 アイさんがハイテンションなロリで、妖精の店長アイミちゃんがクールなロリ。

 全くの正反対な性格……。よく一緒に店やろうとしたな。



「バカはさておき、あなたたち妖精王ね」

「分かるのか?」


 アイミがさらっとオレたちの正体を見破ったぞ。


「なんじゃと──────っ!!? 妖精王ぉぉ────っ!!?」


 大げさにびっくりポーズでアイさんは叫ぶ。

 結構な顔芸で世界観が違うかと思わせられる。


「私たちはあなたたちで言う異世界からきた異世界人だわさ。チキューに興味を持ってアイさんと一緒に旅行したら快適すぎて、永住を決めたんだわさ」

「美味しすぎて食べられるのやめられんわ────! が──っははは!」


 アイさん、無駄に大笑いすんのな。


「そう、だからここでショップを開いたのだわさ」

「オープンして七日間、開店開幕の客以外で客はおまえたちが初めてだぞ────っ! 開幕でも全然売れなかったけどな────っ! がーっはははは!」

「口閉じてて」


 オレたちは呆然……。


 この二人は異世界からダンジョンを通ってやってきたのだ。

 ここは料理が豊富だから分からんでもない。


「本来なら『魔眼』を売りたいところだけど、妖精王にはムリだわさ」

「えっ?」

「ええ────っ!!? なんでなんでだぞ────!?」


 一番驚いてくるのはアイさん。アゴが外れねーんかってくらい、大きく口を開けてるぞ。

 いちいちオーバーな顔芸が面白い。


「上位生命体には魔眼が機能しないのだわ」

「……そうなんか?」

「そうだぞ────!」


 アイミちゃんは羽を羽ばたかせてやってくる。そして自分で自身の目を指さす。

 四輪の花マークの瞳。柄目と呼ばれる。


「魔眼みたいなものなのよ、上位生命体の目は」


 オレはボウッとフォースを噴き上げて、足元の花畑を広げてポコポコ泡を吹くように咲き乱れ続ける。そして銀髪ロングに伸び、瞳に星マークが浮かび、背中から四枚の羽が浮く。


「ほえぇ────っ!! 本物だぁ────っ!!」

「いちいち驚かない」


 オレの変身にオーバーリアクションと顔芸するアイさんに、アイミさんは頭に怒りマークを浮かばせる。

 手鏡で自分の目を見ると、柄目なのが確かに窺える。

 淡く灯る虹彩に星マークが浮かんでいる。そういやヤマミは月マークだったっけな。

 まさか自分がそうだとは思ってなかったぞ。


「そう、それ。“見えないものが見える”“遠くのものが鮮明に見える”“動きがゆっくり見える”という感じかしらね」


 言われてみれば確かに思い当たるフシあるなぞ。

 変身してなくても多少は見え方がおかしく感じる。変身すれば更に顕著だ。


「“魔眼”ってのは要するに、上位生命体からのギフトみたいなものよ」


 アイミさんの説明によると、オレたちみたいな上位生命体にとっては常時魔眼状態のようなもの。

 しかし生まれる子どもは親の影響を受けて“魔眼”を開眼する事がある。

 なぜなら普通の人間の遺伝子に組み込まれるから。


 そして上位生命体の目と魔眼は似て非なるもの。


 オレたちにとっては普通に視てる事だが、人間は違う。

 魔法を使うように魔法力を注いで“魔眼”の効力を発揮させないといけない。

 逆を言えば魔法力を注がなければ、ただの目だ。



「ここまで説明すれば充分だわさ……」

「でも人族は遺伝で色々な“魔眼”に発展する事もあるのだ──!!」

「あ……!」


 ジャキガン学院のカイガンの魔眼や、土星人の填星眼(てんせいがん)が思い返される。

 カイガンは『殺されても残機の分だけ復活できる』『リップルレーザーで対象の時を止める』『目からビームを放つ』と多種多様。

 後で説明を聞くと、消耗が激しくて全部は使いこなせないってた。


「発展した魔眼は凄い効力を発揮する事があるけど、ベースが人族だわさ。発動の際の消耗や負担が酷く、持て余す人も割といるのだわさ」

「眼帯していたら、そいつだぞ────!!」

「そうなんだ……」


 アイミちゃんはカウンターへ腰掛けて落ち着かせる。


「ここでは便利な効力を持つ“魔眼”を移植する店。でも移植しても、その人に合うとは限らないのだわさ」

「え────────っ!!?」


 当の店員であるアイさんが驚いてどうすんだよ。


 要するに本末転倒っぽい店だなぞ。

 全員が魔眼に適応できるとは限らない。生来の目ではないんだから多少の不都合は仕方ない。

 そんなリスクを承知に移植されたいと思う人はいないような……。


「売るものはない。悪かったのだわ……」

「って事はオレたちには魔眼を移植できないと?」

「言うまでもないでしょう」


 移植しても、競合して魔眼の持つ本来の効力が消えてしまうだけ。

 徐々に元の“自分の目”に戻ってしまう。

 移植ができるのは人族だけ、と。


「なぁ……移植ってどうやるんだ?」

「普通に摘出(えぐ)って移植。痛みを我慢すれば一瞬で済むだわさ」

「え────……」


 そんな感じで入れ替えんのか……。よけい客来ない気が……。

 するとアイミちゃんはスッとオレの目を見てきた。なんか見透かされそうな雰囲気。


「それとナッセ、ヤマミ、あなたたちは()()人族じゃないのだわさ。肝に銘じておくんだね」

「……え?」

「今はまだ少しの差異だけど、それはいずれ大きくなっていく」


 妙に真面目な話をしてきて息を呑む。

 ヤマミを見やると、なんか分かってそうな冷静な顔してる。


「その目はもう“魔眼”級だわさ」


 衝撃的な言葉に、オレは見開く。



 オレたちは頭を下げて店を出た。

 アイさんが「また来いよな────!! ヒマだ────!」とか言ってたので、アイミちゃんに「ヒマ言うなバカ!」と突っ込まれてたぞ。


「……相当、客来ないんだな」

「そりゃそうでしょ……」


 後ろへ振り返って、寂しげな魔眼ショップを見やる。


「ってかオレたち、魔眼持ってるようなもんかな?」


 ふと向こうへ視点を移す。

 数キロもの遥か遠くの小さく見えるホテルの窓のカーテンの少し開いた隙間から、なんかしてる男女が窺える。腰を振っている男の横目から映る、縦に揺れる女性の背中。

 バックでヤってる……。


「マサイ族もビックリな視力だや……」

「エッチ! 見んな!」

 ぺしーん!


 ヤマミからチョップを頭にもらったぞ。

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