256話「そーゆー設定の世界なのかよォォォ!?」
「ホオオオオオオオオッ!!!」
上空をデッカいフクロウのようなモンスターが飛行しているぞ。
『リバースヘッド・アウル』(飛空族)
威力値:25000
フクロウみたいな容姿の巨大な化け物。二つの頭部が上下にあり、尾や足が存在しない。翼が四つあって上下の頭部がクルクル回るように飛ぶ事もできる。腹の三日月の紋様を放って眼下の敵を一掃する。
精神生命体なので、物理攻撃はほとんど効かない。光か闇の霊属性で攻撃しよう。
ホウホウと共鳴音が響く。中級特上位種。
オレもヤマミも帰宅中にエンカウントしたので駆けつけると、既に他の創作士が数人で交戦中だったぞ。レイドバトルか。
上空の巨大フクロウを見上げて、かつての巨大な女王人形と遭遇した事を思い出した。あんまりいい思い出ではない。
「来るぞ!!」
三日月の刃が雨のように降り注いできて、建物も道路も穿って爆ぜて、破片を散らす!
創作士たちは剣や魔法などで弾いたりして凌いでいる。
「ぐああっ!」「きゃあ!」「ぐっ!」
威力が強すぎて、血飛沫を散らすほどダメージを負うのもいる。
「ぎゃあああッ!!」
とある男が左腕を切り飛ばされ、右目から血が噴く!
そのまま倒れて動かなくなる!
「スターライト・キャノンッ!!」
慌てて光の剣から刀剣波を放って、フクロウをボーンと破裂させたぞ!
一撃で終わった事に他の創作士は唖然とする。
その中の人は慌てて重傷者へ駆け寄る。
「コロピ!! 大丈夫か!!」
「……ああ」
横たわっていたコロピかというハゲ男は上半身を起こす。
右目が潰れ、左肩から腕がない。生きているのが奇跡なくらい。
緑と顔色悪いしな。
「いいからポーションよこせ!」
「……分かった。ほら」
仲間からドリンクを受け取り、ゴクゴクと飲み干す。
これは体力を回復させる効力を持つ回復アイテム。オレたち創作士にとっては生命線だぞ。
いくつか種類があって『ヒール・ポーション』『Hヒール・ポーション』『EXヒール・ポーション』は普及されている方だ。もちろん回復量は名前の通りに違う。
……今更な設定だが。
「かああっ!!」
飲み干したコロピは右手で左肩を抑え、気合いを入れるとズッと左腕が超速再生されたぞ。濡れている。
当たり前のように「目も行くぞ」と言い、ズッと右目が元通りになった。
オレは目を点にした。
当人は「ふうっ」と立ち上がって、何事もなくこちらへ「助かったぞ」と、再生した方の手で振ってくる。
エンカウント空間が収束して、通常の空間へ戻った。
「いや、回復アイテムでHP回復は分かるけど再生できんの?? いつからナ〇ック星人みたいなのになってんの??」
「当たり前じゃない?」
ヤマミの返答に、思わず振り向く。
「なに? 初めて見るような顔??」
「いやいや、こんなの初めて見たっつーか??」
「創作士センターで回復カプセルある時点で察しなさいよ……」
目を細めて呆れられる。
回復カプセルは、創作士センターに設置されているもので人間一人が入れる大きさ。どんなケガもたちどころに全快してしまうスグレモノ。
四肢欠損だろうがなんだろうが、生きてさえいれば五体満足で回復できる。
ちなみにMPも回復できる。
とあるレストランでオレたちはパフェをいただいていた。
「星獣とか、四首領とか、色々大変な事が起きてたから気付かなかっただろうけど、現実よ」
イチゴパフェを楽しみながらヤマミはクールぶって言ってのける。
オレはチョコパフェに刺しているポッキーを手にかじる。
「っても、オレがいた並行世界じゃあ四肢欠損は一生モンの傷だったからな」
「そうなんだ」
「目も再生できねぇ」
「そう」
だから、普通に再生できるこの並行世界に違和感を感じた。
「飛蚊症って知ってるか?」
「ええ。視界に虫のように薄い影みたいなものが泳ぐ症状ね」
「……元の並行世界じゃ、ずっとそんな状態だったんだ。でも今では激しい戦闘の後に症状が出る事があるけど数日で治っちまう」
「目の内部が再生されたからね」
「そう。そんなのがオレにとってはおかしな話だよ!」
硝子体が濁る事で視界に蚊が飛んでいるような影がゆらゆらする。視界をずらしても影が少し遅れてついてきて、まばたきをしても消えない。
原因としては加齢、頭を強打された事による衝撃、網膜剥離などだ。
緩和される事はあれど、完全に無くなる事はない。
「それってネガ濃度が、あなたのいた世界より低いからじゃないの?」
「あ……!」
オレのいた並行世界じゃネガ濃度が80%以上だった。
「ネガ濃度が高ければ高いほど『可能性が減っていく』でしょ?」
「そ、そうだったぞ……」
逆にポジ濃度が高ければ高いほど可能性は増えていく。
これはローファンタジー編の追憶編で実証済みだぞ。メタァ!
「ネガ濃度が高いほど、怪我や病気の種類が多くなり治りにくくなる。できる事も少なくなっていく。当然レベルの概念もないから魔法やスキルが存在しない事も多くなる。そんな所で暮らしてたんでしょ?」
「あ、ああ……」
「ぐわー!」
どこからか声がして振り向くと、ナイフで指を切り落としたらしい男性が喚いていた。いや、どうしたらそんな切断ができるんだよ?
恋人っぽい女性が「大丈夫? ナース!」と回復魔法の光を当てると、ズッと男の指が再生された。
同じ指が二つあるような光景に、オレはドン引き。
するとガッシャアアアンと人の生首がガラスを破ってきて、床に転がった。
「きゃああああああああ!!」
「やぁ、済まない。強いモンスターと戦ってたら斬り飛ばされちゃったよ」
生首が平然と喋ってるぞ……。
「ぬああああ!! ベルナースゥゥゥゥ!!」
生首がそう吠えながら上級回復魔法を自身にかけると、首の切断面からズッと濡れた全身が再生された。
フルチンのまま立ち上がって「驚かしてすまなかったな」と、手を振ると何事もなく出て行ってしまう。おい。
「回復アイテムや魔法に頼らなかったら、再生は数週間かかるわね」
「いやいやいや待って待って! ここそういう設定の世界!!?」
「設定? 変な事言うのね……」
オレが慌てても、さそも当たり前のような顔で傾げてくるヤマミ。
※描写が省かれてるだけで、実際はそんな風に再生してますw




