252話「結末篇① 出でよ! 幸運神ァ!」
今まで戦いにも参加してなかったエレーシャという、灰色肌のにこやかな男があぐらをかいて座っている。
クリシュナは振り向いて「いいぞ。始めてくれ」と促してくる。
「……じゃあ行くぞ」
オレは息を飲んで、手に持っている完全な『六道石』を再び六つの一欠片に分裂させて、それぞれをエレーシャの王冠のくぼみにはめ込んでいく。
そして両手を向けて────!
「極楽浄土より出でよ! 『幸運神』!!」
するとエレーシャはカッと輝きだし浮くと、ピンク肌になってニョニョニョニョと巨大化していくァ!?
思わず一同は見上げて驚く。
「『維持神』さま、これは……?」
《うむ。極秘中の極秘じゃ……。効果を全体に及ぼす『時計塔』とは違い、『王冠』は“なんでも願いを叶える如来王”を次元召喚する事ができるんじゃ……》
「生き返らせられねぇってたのにな」
《これが知られればホイホイ願いを叶えかねねん! なるべく避けたかったんじゃ……》
夜空にピンクの輝く巨大な像人間が荘厳と見下ろす。
《よくぞ集めてくれた……。さぁ主よ願いを言え。なんでも願いを一つだけ叶えてやろう》
オレはドラゴ〇ボール知ってっから、口元が緩む。
まんま神龍だもんなー。
原理的には、全部揃えた『六道石』をはめた『王冠』をかぶったエレーシャを媒介に『次元法』で極楽浄土から『幸運神』という如来王を次元召喚し、また『次元法』によって願いを叶えてくれるって感じだぞ。
ヤマミに振り返ると頷いてくる。リョーコを見やると頷いてくる。マジンガたち大勢も何一つ言葉を言わない。
「じ、じゃあ……、えーっと……。オレたちがインドへ来た時みたいな平和な状態に戻してくんねぇか? あ、六道界つーか地獄とかそういうの木星の概念なんで、地球とは切り離したままってオマケで」
《我が主……了解した》
カッと両目が輝いたぞ。
すると急速に周囲が巻き戻しされていく。
バラバラになったインド大陸も完全完璧完遂元通りに、しかも大勢死んでたインド人が蘇った。オレたちの疲労やダメージも服装の汚れや破損も全部消え去って元気満タンだぞ。
もちろんコンドリオンもディアルフも完全蘇生。
「え? え? 僕は死んだはずでは……??」
「兄貴ァ~~~~!!」
戸惑うコンドリオンに、ディアルフが嬉しそうに抱きついたぞ!
これで兄弟として生きていけっぞ。良かったな。
《ディアルフの病巣はサービスで取り除いてやったぞ。ついでに病弱もなくしておいた》
「サンキュー! 『幸運神』さま!」
そしてダウートが倒れている状態で現れて、オレたちはギョッとした!
「だ、ダウートッッ!!?」
「寝てる??」
「起きたりしないでしょーね??」
ダウートは目をつむったままで起きる気配もない。
それでもリョーコはオレの背中で肩を握ったまま疑心暗鬼……。
《一応……ダウートは寝かしたままで蘇生しておいた。いきなり戦いになるかもしれんからな》
「おおー助かる!」
《だが、完全にダメージを回復できてないのもいるから、な》
ジャオウが倒れているのを見て「なんでだ?」と聞いてみる。
《この進化前の世界では『次元法』は不完全だからだ。ジャオウは大量の黒龍を無理やり詰め込んだ負担が重すぎた。まぁ今回の願いで軽減されているとは思うが、二度と無茶はしない方がいい》
なんか幸運神がアクトの方へチラッと見やっていたぞ?
アクトは首を振っていた。
言葉も出さないやり取り……。気になるなぞ。
「何かあったのかぞ?」
《……なんでもない。さて、木星の星獣は元の惑星へ還すぞ。それで地球人のインド人化は解除される》
「あ、ああ……。サンキュー」
神妙に静かになる幸運神がなんか引っかかる。
上空のミニ木星が徐々に星獣へ戻ると、遥か宇宙へ飛び去っていってしまった。
これで元通りになったぞ。イエー!
《主よ願いは叶えてやった。ではさらばだ》
シュシュシュと元のエレーシャへ縮んで、『王冠』にはめられた『六道石』が抜け出て、五個の一欠片は上空へ飛び上がるとバシューッと四方八方に飛び散った。
おそらく六道輪廻の六界それぞれ還っていったのだろう。
……しかし『六道輪廻』は地球から切り離されたままなので、二度とここでは『六道石』は全部揃わない。
ダウート自身が奇跡Dランクの『盗り寄せバッグ』を壊したので、奪う事もできない。
エレーシャは「念のため」と『王冠』をグシャッと壊してしまう。
「え? いいんか?」
《なーに、木星で腐るほどあるからな。心配せんでいい》
つまり、この奇跡は地球では一度きり。
オレの手の一つの『六道石』は人間道のもの。それをアクトに差し出すが、首を振ってきて拒否される。
「俺はインドに愛想つかしてるからなァ……。だからコンドリオン王子にやるといいァ……」
「分かったぞ」
「じゃあ預かりします」
コンドリオンはオレから一欠片を受け取り、ペコリと頭を下げる。
八武衆はオレとアクトに感謝してきたぞ。
「まだ決着ついてねーからな!」
サマァツは口から火の玉を吐いて指差してくるが、ウェールザに「恩人だ。やめとけ」と諭される。
ディアルフは「またな~~! あひゃっひゃっひゃ」と上機嫌だ。
フシュール、ブラァーザは大人的笑みで手を振る。
ラジュタは思う所があるのか終始だんまり。
引き締まった顔のタツサダはオレへ指差す。ビシッ!
「次こそは園児の素晴らしさを思い知らせてやろう」
「あーそうですか」
こうしてインド政府軍とダウート軍は和解して終戦した。
その後、オレたちは「バイバーイ!」と手を振って別れ、泊まっていた宿へ戻ってぐっすり休んだぞ。
一方で、ダウートにセクハラして殺された九武神・男愛好ラッシー・ブーマタボクは未だ死んだまま……。
そして畜生道にいたぞ。
「えぇーっ!? ワテは対象外かいなっ!?」ガビーン!!
畜生道にいる以上、そのうちゴリラになるだろう……。うほっ!




