245話「最終決戦篇⑧ 訴えァ!」
ゼェゼェ息を切らしながらも必死にディアルフは拳を振るい続ける!!
「自由ァ~~“トゥーン”多頭龍拳嵐ッ!!」
ディアルフの拳が黒光りする龍を象って、ダウートの強靭な巨体をものともせず乱打をめり込ませて、反対側からボコボコ起伏させたァァァァ!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!
「!!!!」
ダウートも苦い顔で「ぬグァ!」と吐血!
しかし泣きながら憤怒の顔で如意棒を振るう!! 時を越えた超光速連打ァ!!
「全魂乱舞! 時の限界を超えて暴れ回れ!! 如意金箍棒!!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガン!!
「!!!!」
無数の如意棒がディアルフへ集約され、完膚なきまでに全身を打ちのめすァ!!
今度はディアルフが苦悶の顔で「ゴホッ!」と吐血!
しかし両者睨み合いで意地を譲らない激戦を繰り広げていたァ!!
「うおおおおおおおおお!!」「くのおおおおおおおお!!」
黒光りする巨大拳が決まれば、如意棒がクリーンヒットォ!!
互い苦しそうな心身で殴り合い!!
さっきまで本当の親子のように親しんで暮らし続けてきただけに、互い裏切られたショックは計り知れない。
ダウートにとっては我が息子のように育て、親しみを抱いていたのに“悪鬼”に入れ込んだのが許せない。
ディアルフにとっては本当の息子を無視して、自分ばかり愛情を注いできた事が許せない。
食い違いがあるものの、同じ裏切られた傷を抱えている。
「弟として、兄貴を認めさせてやるァ~~~~!!」
涙をこぼし、ディアルフは拳を振るう!
ダウートは見開き、一瞬だが硬直して反撃の手が止まる!
ドゴォン!!
強烈な黒光り拳フックがダウートの頬に決まったァ!!
「ブフォ!」
ダウートよろめく!
ディアルフのそれが精一杯の攻撃だったのか、その後ゼェゼェ苦しい息をして屈み込んでしまう!
「…………なぜだァ?」
殴られて体勢が傾いたままダウートはギロリと視線をディアルフに移す。
「あの“悪鬼”は母を奪い去ったァ……! なぜそうまでして庇う!?」
「と……父さん! 兄貴は……、その母さんを殺したいから殺して……産まれてきたのか……?」
「ぬぅ!?」
血塗れのディアルフは仁王立ちし、口元の血を手首で拭う。
「兄貴はァ……本当は母さんと一緒にいたかったんじゃねェか!?」
「ぬぐ……!?」
「いたかったんじゃねェかァ~~~~!!」
悲しい顔で涙を溢れさせて大きな口で叫ぶ!!
ダウートは苦い顔をし、ズキズキ痛むかのように、手で胸に当てている。
「おれだって本当の母さんと一緒に時を過ごしたかった!! 誰だってそうだ!! そんな母さんを殺してまで産まれたいなんて誰だって思わねェぞ~~ッ!!」
腹の底から叫ぶディアルフの想いに、ダウートは戸惑いうろたえ始める。
オレもアクトも、もちろんコンドリオンもその様子を見守る。
「だ、黙れァ…………!」
「父さんと同じように兄貴だって、母さんと暮らしたかったんだろがァ~~!!」
ダウートは葛藤で震え上がり、怒りと悲しみで混乱に陥り、気が動転していく。
もう認められない!
妻を失った深い悲しみの行き場はどこへぶつければいいのか分からない。
故にコンドリオンを、妻を殺した“悪鬼”という事にしなければ精神を保てない。
「父さんの手前勝手な思い込みで、罪のない兄貴を迫害してるだけだァ~~!!」
「黙れァァァァァァア!!!」
理性が吹っ飛ぶぐらい激怒して如意棒で突き下ろす!!
ドスッ!!
血飛沫が舞う!
ディアルフは見開く! オレもアクトも見開く!
信じがたい光景に誰もが絶句せさずを得られない!
「ゴフッ!」
コンドリオンが身を呈してディアルフを庇い、背中から如意棒を貫かれて大量の鮮血を流していたァ!
当のダウートさえも、この光景に見開いて我を忘れてしまう!
突き刺さった如意棒がスポッと抜ける……。
「あ……兄貴ァ……!」
「……無事か?」
「でも!! 腹が!!」
しかしコンドリオンは安心して笑ってみせる。
「安いもんだァ……僕の命ぐらい…………。僕の弟が……無事で良かった」
ゴフッとコンドリオンの口から大量の血が溢れる。
意識朦朧か、ズルリとコンドリオンはディアルフへ倒れ込んでいく。それをディアルフは受け止めて、途方もない悲しみで胸がいっぱいになる。
「僕を……兄貴として……愛してくれてありがとう…………!!」
短い間だったけど、確かに兄弟愛としての実感をコンドリオンは噛み締められた。
そしてインドの戦士として戦い抜き、弟を守る為に自ら犠牲にした。
……それだけで一片の悔いなし!
「ディ……ア……ル…………」
安らかに笑みながら目を閉じ、インドの戦士コンドリオンここに死す……。
ワナワナ震えるディアルフ。
「兄貴ァァァ~~~~~~~~~~~~~ッッ!!!!」
うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!
大きく口を開けたまま呆然自失してしまうディアルフ。
あまりにも深い悲しみで意識喪失してしまったんだ。コンドリオンの亡骸を抱いたまま空へ向かって口を開けるほどに。
「だ……だはは……だははははははははははァァ……!」
口を震わせながらダウートは泣きながら笑っていく。
依然気が動転したままだ。念願の“悪鬼”殺しが叶ったというのに、心にあらず状態だった。
全身を震わせたまま、ヨロヨロと後退して、額に手を当てたまま笑い続けている。
「だははははは……だはははははははは……だははははははははァ!!」
ほどなくしてダウートは如意棒を立てて地面を揺るがす。
嵐の前の静けさのように、しばし静かに佇む。ショック死したのかとオレは思いかけた。
しかし沸々と怒りと殺意が漲ってくるのを感じた。ゾワッ!
「どうせ皆殺しするつもりだったァ!! 何も変わらんッ! 変わらんのだァ~~ッ!!」
自暴自棄と、ダウートは苦しそうな形相で威圧を漲らせて、黒い稲光を迸らせていく。
やがて大地が震え上がって、空の暗雲が渦を巻いていった。
まるで世の終末とも思えるような雰囲気。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴァ!!!
「……させねェよ!」
そんな折、一人の侍がダウートの前へ立ちはだかった。




