235話「如来王篇⑨ 待てァ!」
ダウートは六道石を掲げて、徐々に輝きを増していく。
「待ちなァ!」「待てぞ!!」
そうはさせん、とオレとアクトとヤマミが疾風のように現れてダンッと屈み込むほどの着地。
しゃがんでいる姿勢から身を起こして悠然と立ち上がる。
何故か風が吹いてきてビュオオオオオ演出。
「おう……久しぶりだなァ……! インドの英雄ダウートさんよァ!」
「ずいぶん遅れて済まなかったなぞ!」
ヤマミも睨み据えたままオレたちの後ろで控えているぞ。もちろんアバターの維持の為にだ。
リョーコは置いてきた。一応回復させたが、ハッキリ言ってダウートとの戦いにはついていけないだろ。斧ないし。
「あァ……! 今更、有象無象どもがァ……」
そんなオレたちをダウートは訝しげに見やる。
「お前とやりたかねェんだけど、アクトと一緒ならやれっぞ!」
「ってェ事だ。決戦と行くかァ?」
星屑を散らして太陽の剣を形成。アクトも鞘から刀を引き抜いて、共に構える。
「フッ! 悪いが、貴様らの相手はしておれんなァ……。まず第一に『時計塔』を使ってみんな連れて行ったのはァ……ここに置いていく為だァ!」
ド ン!!
「!!!」
息を呑む。つまり……!?
「この完全な『六道石』を持っている俺は、ここで如来王となって『天網恢恢』を得て、元の世界へ還る。最初っからその筋書きだァ……」
「な!?」
「……やっぱかァ」
アクトは読んでいたらしく、冷静だ。
「一欠片も六道石も持っていない貴様らは仲良く暮らすがいい。ここで永遠になァ……」
「くっ! そ、それじゃ……一欠片さえあれば、なんとかなるのかッ!?」
「残念ながら六つ全てがこの手にある限り、貴様らが還るは不可能ァ……」
これみよがしに笑い、輝いている六道石を見せつける。
一欠片でもこっちの手にあれば、戻れるって事か。
しかしドスンと如意棒を立てて、地面を揺るがす。膨れ上がる威圧。恐ろしい形相で睨んでくる。
「それとも……最期にここを自分の墓場にするのが望みかァ……?」
ド ンッ!
「!!!!」
巨人のような体躯! 高圧的な物言い! これこそが四首領たる迫力!
震える体をこらえ、オレはキッと睨み返し「最期はねェ!!」と吠えた!!
「なんたって異世界へ行くという夢があるからな!!」
「うん! 私とね!」
オレとヤマミは意気投合で夢を語る!
アクトはジト目で「俺はいいのかァ……」と突っ込む。焦って「相棒もリョーコも一緒に、な」と付け足す。
すまん。忘れてたワケじゃねぇんだ……。
「じゃあ揃ってくたばれァ!!」
ダウートが大地を震わせるほど威圧を漲らせて、如意棒を軽やかにブンブン振るう。それだけで烈風が吹き荒ぶ。
そしてズンと一歩踏み鳴らして大地がボコンと陥没。
戦慄を感じさせる殺気満ちた形相。ビリビリくる!
「やっぱ威力値125万は伊達じゃねぇぞ!!」
オレはまず妖精王化して『次元法』を発動し、凄まじいフォースを噴き上げたァ!!
大地を小刻みに揺るがし、旋風を巻き起こして花吹雪が吹き荒れる!
ダウートも見開いて冷や汗すらかく!
「オレの基本威力値は30万! そして自分9体で9倍の270万!!」
「この馬鹿がァ!!」
なんとダウートも全身を黄金にして、千手観音のように複数の腕が揺れる!
「貴様らができるならァ……俺もできるという事だァ!!」
ダウートの威力値はァ……常時万覇羅で62万5000! 万覇羅弐で125万!!
故に5倍の625万ァ!! 黄金化で総合値2倍の1245万!!
ド ン!!
「これが限度とは言え、貴様らが届くようなレベルではないァ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴァ……!!!
極楽浄土が震え上がるような凄まじい怒気と威圧!!
まるで大陸を崩すほどの勢いだァ!!
もはや神々とも錯覚するほどに天上の威力値ァァァ!!
「ヤマミ! 『連動』を!!」
「うん!」
ヤマミと手を繋ぎ、更に凄まじいフォースを噴き上げたァ!!
「これで威力値540万!!!」
ド ン!
「それがどうしたァ!!」
「まだ終わってねーぞ!! 見てろ!!」
「おい! ナッセァ……!」
アクトが呼び止める間もなく、オレは更なる倍増を求めた。
多次元空間の万華鏡でオレたちとヤマミたちがユラユラと手を重ね合っていく。たまにさり気なくキスをしてるヤツもいる。(おい)
その結果2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×10×2×2×10×2となって、倍々ゲームが重なり合ってしまうァ!
「複数のオレと複数のヤマミで威力値9600万!!」
《えっ!?》
維持神も目を点にするァ……。
極楽浄土を揺るがし全員ビックリ! インド人もびっくり!
なおも空震は激しさを増し、烈風が巻き起こり、天をマジで衝くほどの極太フォースが吹き上げすぎたァ!!
あちこちいる如来王が「ぎえー!」と烈風に吹き飛んでいく!
創造神も大きく見開いて口を開けて絶句!!
《お、教えた馬鹿は誰だっ!?》
《……そ……そうなるとは……お……思わなかったんじゃ……》
維持神は顔面真っ青で冷や汗タラタラ。
「ぬうァ!!?」
「待って待って!! 一旦落ち着こうなァ!? リア充ァ!?」
壮絶な威力値にダウートも唸り、アクトは慌てて必死になだめてくる。
創造神は《えぇ……》とドン引きだぞ。
だがまだ倍増の余地があるぞ。この際限界まで……。
「更に並行世界にも干渉して、そこから大量の自分を重ねて、更に連動も行う!!」
「ちょ待ァァァァ!!!!!!」
アクトが慌てて呼び止めるも虚しく空を切る。
数千億ものオレとヤマミが一斉に連動!!
「その結果────! 威力値は19京2000兆!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴァ!!
ハイファンタジー編の66兆6000億の全盛期マリシャスさえ真っ青の天文学的なフォースが爆裂して、極楽浄土耐え切れず破裂しそうァ!!
ダウートは顔を歪ませて「っち!!」と舌打ち!
「そこで一生インフレゲームをやってろァ!! 付き合いきれん!」
すぐさま『六道石』を掲げてフッとダウートは消えたァ!!
その瞬間、オレとヤマミはフッと全てを解除した!
今までが嘘のように静まり返って、極楽浄土は平穏を取り戻した。
「アクト、これでいいんだろ?」
「ちいっとやりすぎだがなァ……」
「たはは……」
苦笑いで返す。
あとがき
ほ……本当は……『次元法』で色々……できる予定だったんだ……。
『空蝉』
全部本物なのに本体は一体。本体はいずれか一体と固定じゃないので、全滅させない限り絶対倒せない。
これはシュレディンガーの猫のように、どっちか死ぬと生き残った方が本物になる、という法則だからである。
『縮地』
次元で折り曲げて遠く離れた位置とガチで縮める事で、自身の座標を転移できる。
この際、グニョ────ンと景色が伸縮されて見えるのだという。
『擦れ違い』
通常空間でも複数の次元が重なっている。
ちょっと隣の次元へ移ると当たり判定が変わる為、攻撃がすり抜けて見える。
当てるには同一の次元へ移動するしかない。
『影世界』
影の世界へ入り込む。その中は立体になっている。当たり判定をそのままにすれば、通常空間にも物理法則を適用できる。
『一面融合』
凹凸のある地形などを次元によって真っ平らにできる。その上を歩くと外部の人には歩行者がカクカク変形して見える。
角度の大きさに関係なく平らにできる。
ちなみに凹凸のある壁をこれでやって、手早くて完璧な塗装も可能。
『媒介扉』
これから開ける扉と、任意の扉を繋げて時空間転移できる。
いわゆる擬似どこで〇ドア。
『表裏』
完全密封の物体を傷つける事なく、中身を取り出せる。
あるいは球殻の表と裏をひっくり返せる。生物にやるとグロイから注意。
『絶対切断』
空間ごと切断する。生きたまま真っ二つにできる。元に戻せる。
『固形化』
次元で水など流動的なものを固形化する。その際、次元によって熱伝導が作用しないので溶岩のブロックも素手で掴むとかも可能。
相当な鈍器にもなる為、これで殴ると痛い。
『領域収縮』
自分を中心に数メートルをそのまま固定して、周囲をミクロまたはマクロにする。
通常のまま小さくすると物質の密度が濃くなっていくのでミクロの世界へ行くのにも限界はあるが、この方法ならその制約を受けない。
これなら素粒子よりも小さな世界に行けるぞ。
た……ただのインフレ促進に……な……なっちまった……。す……すまねぇ……。
こ、こんな事……になるなんて……、オ……オラも……思ってなかったんだ…………。




