228話「如来王篇② 多次元ァ!?」
際限なく時を加速していって宇宙が寿命を迎えてしまった。
そしてナッセたちは何故か新しい世界にいたぞ。
「すまん……の……」
なんと木と化したダクライが掠れた声で謝ってきたぞ。
ヤマミは「あのダクライでさえ……」と切羽詰った顔をする。
とはいえ、意識を辛うじて保って喋ってくるのは彼以外いない。マジンガもジャオウもカレンも全て“ウゴゴ木”になっちまったァ……。
すると何か忍び寄ってくる気配がして振り向くと、ギョッとした。
なんと“インド人顔”がどアップだァ! ゲェー!
《お前たちが来るのはまだ早いァ……》
ピンクの蓮の上で立つ巨人。寒色肌で不気味に“インド人顔”。変な装飾の服。特記すべきは千手観音みてーにユラユラと無数の腕が見えている。顔も時々二つ三つに見える事がある。
まるで同じ人間が複数重なっているみてェだ。
「この人も如来王!?」
「あァ……」
《いかにも! 私は如来王が一人『維持神』であるァ……!》
オレ、ヤマミは妙な巨人を前に息を呑む。驚きの連続しかない。
しかしアクトはこんな時も妙に冷静だ。
「あっちも似たようなものだぞー!」
「なに? “インド人顔”って流行ってるの?」
あちこちいる如来王たち。“インド人顔”に象の鼻があったり、口がふぐりだったり、多種多様。しかも無数の腕が踊っている。
足が無数になってるのもいる。
どういう仕組みか分かんねェけど、夢を見てるみたいだぞ。
「多次元だなァ……」
《いかにも》
オレは「多次元?」と怪訝に目を潜める。
「ここは前の宇宙よりも、複数重なっている次元の境界が限りなく薄いァ……。自分ってェのは複数の次元にそれぞれ存在してるモンだァ」
《ほう……?》
「だから、複数重なっている自分が同時に見えちまうワケだァ……」
《うむ。アクト殿はまさしく極楽浄土を理解してるなァ……》
よくインドで複数の腕や顔を持つ神の絵が窺えるが、実態はここでの如来王を表していたのか。
誰かがここから戻ってきて描き下ろしたのだろうか?
それにしても多次元で複数の自分かぁ……。
するともう一人のオレがズレて見えてきてギョッとした!
ヤマミを見ると、やはり顔とか腕とか複数にユラユラ。オレの腕も見ると複数になっててビックリ。
「キュッと一人に抑えなァ、錯乱して廃人なっちまうぜァ……」
思わず緊張して、気を引き締める。複数の自分が消え、元通り一人だ。
《それがよかろう。自分を見失って自我が散乱すれば“ウゴゴ木”になるぞ》
思わず、あちこち点在する人の“ウゴゴ木”を見てゾッとした。
ヤマミと見合わせて冷や汗をかいてしまう。
「あァ……。ムリヤリ普通の人間まで連れてきたんだァ……。本来なら来てはいけないはずの場所だからなァ……」
「オレたちが平気だったのは!?」
《上位生命体として耐性があったからだろう。ここでは普通の生物など一秒と持たないぞァ》
ド ン!
「!!!」
「ちょっとー! ここどこなのよー!」
声に振り向くとリョーコが走ってきたぞ?
こちらにも気づいて「アクト、ナッセぇ!?」と綻ばせてやってきたァ!
「ってか、リョーコ平気なん??」
「なになに??」
キョトンとするリョーコ。普通の人間なんだよな?
《むう……あの日本人かァ!? まさか……そうかァ…………》
「なんだよ! 勝手に納得してさ!」
「何の理由か知らねェが、リョーコも素質があるって事だなァ……」
ヤマミは怪訝な顔で「あなたも妖精王だったの?? それとも竜王?」と聞く。
「何の話??」
リョーコは怪訝な顔で首を傾げる。
オレは「まぁまぁ。平気ならいいじゃないか」と宥める。ヤマミは納得いってないみたいだが……。
「ともかく無事なヤツ探していこう」
「ねぇ、何の話か分かんないから説明してよー!」
オレはアクトと一緒にリョーコへ説明した。かくかくじかじか!
「時の加速、そして宇宙が終わって、極楽浄土ねぇ……。気絶している間にびっくり展開だわ」
「オレもだぞ」
まだ頭の整理が追いつかないけどな。
「それにダウートもどこかにいるはずだわ……。六道石を取り返さないと帰れないでしょ」
「そうか! そうだよなー!」
「あァ……、まずそこだな」
ここに来たのだって『六道石』の効力だもんな。
しばらく歩いていくと、もう一人のオレとヤマミが横たわっていたぞ。
戦争開始時にダウートへ挑んで瞬殺されたままだ。
「治療班が回復魔法をかけてくれたみたいだけど、再起するまで時間はかかるなぞ」
「確かアクトの作戦でヤマミのアバター能力で増やしてんだよね?」
「ブラックローズ・アバター……。これを維持する為に戦いを控えてたけど」
こうして具現化させてるだけでも少しずつ消耗し続けているっぽい。
「そのまま維持しとけァ」
「分かったわ」
「……もう戦えねーけど、まだ維持するんか?」
「あァ……。しばらくな」
「ふう、相棒が考えた作戦だし、最後まで信じるぞ」
「そうこなくちゃなァ!」
アクトはニッと笑う。
確か作戦ではオレたちのアバターを先行させてダウートに『六道石』を奪わせる。そんでアクトが合図したらアバターを消す手筈である。
オレのアレがどうなるか、アクトはまだ明言していない。
「そうじゃなきゃ、ダウートの野郎を出し抜けねェからなァ……」
トーテムポールのように“インド人顔”が縦に重なった如来王。“インド人顔”が横に重なって並ぶ如来王。のしのし歩く木が複数の“インド人顔”を実のようにぶら下げている如来王。
奇形としか思えないが、アクトの話だと如来王しかいない世界ってた。
「コイツらって、前の世界から昇華した如来王なんだよな?」
「あァ……、六道石を使わず、“インド人顔”の修行を極めた人間だからなァ……」
“インド人顔”ってなんだよ……。そこ突っ込むべきか?
「そして、前の宇宙から進化した新しい宇宙がこの世界なのだ!」
「!?」
はっと声の主に振り向くとゴゴゴゴゴゴッと周囲を吹き飛ばして煙幕を広げながら、巨大な偶像化を具現化したフールニィが現れたぞ!
仮面の男! ダウートの幹部!? まだ残ってた!?
「極楽浄土! 如来王! その創造力を我々“土星人”が貰い受ける!」
ド ン!
「!!!?」
まさかの“土星人”乱入でオレはびっくりだぞ────!?




