217話「大決戦篇㉘ 覚醒ァ!」
「おまえも……妖精王か? それとも竜王か?」
「ただの……人間。それも普通の日本人としてね」
リョーコは顔を起こして不敵な笑みを窺わせる。
ウェールザは冷や汗いっぱいにドクンと動揺の心音を響かせた。
見る見る内にリョーコの傷がシュウ────と煙を立てて消えていく。数々の致命傷を負ったというのに、それを急速に治すなんて、目を疑うしかない。
やはり、私の決意は正しかった…………!
冷や汗をかきながら納得の笑みを浮かべる。
なぜ、圧倒的な力で本気を出してまでリョーコを打ち負かそうとしたのか、実は疑問に思っていた。
本当なら『万覇羅』で純粋に力比べしても良かった。それでなくても『万覇羅弐』を出しても、多少手加減してても絶対に負けない勝負だった。
本気を出して徹底的に叩きのめした自分の判断が不思議に思っていた。
だけど……たった今、確信した。
リョーコから莫大なフォースが溢れてきて、周囲を揺るがすほど!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
やはりリョーコの力は、四首領にも届き得た!
立ち上がったリョーコは風貌が変わっていた。
金髪のオカッパがややハネ気味。全身の褐色肌に、そして顔面の左目を中心に太陽を象ったマークである日章が白肌として浮かび上がっていた。
そしてナッセやアクト以上の、凄まじいフォースがとめどもなく溢れている。
理由は分からないが……、真の日本人として覚醒したんだ……!
「続けよっか?」
百戦錬磨のように落ち着いた戦士の顔をするリョーコ。
戦慄を感じたウェールザは戦意を漲らせて、剣を振るう!
「よかろうッ!! 夢境嵐総劇────ッ!!」
ウェールザの周囲を回っていた全ての剣が牙を剥いて、リョーコへ殺到!
鋭く射線を描いて、蜂の巣にせんばかりの勢いだァ!
「素手だろうが容赦はせぬッ!!」
「あ、それ心配いらないから」
するとリョーコは片手を伸ばす。腕から日章紋の一部が走っていって掌から飛び出していくと斧を象っていく。
金属質に煌き、それを旭日のマークが覆う。赤い丸を中心に放射状の帯。まるで旭日旗かと思わせられる形状。
まさに日本を象徴するかのような斧だ!
「なん…………だと…………!?」
「『大和斧』! たった今つけた!」
リョーコはその斧を超高速で振り回して、無数の剣を粉微塵に砕いていく!
恐ろしく正確無比な上に超高速……!
瞬時に間合いを詰めたウェールザは広幅な大剣を振り下ろす! しかしリョーコの斧が薙ぎ払って砕いてしまう! バゴァッ!
唖然とするウェールザ!
「バカな! この『天網羅大剛剣』を容易くッ!?」
今度はウェールザの両手に大きな刃を伸ばした手甲を具現化させた!
「ならば、手数で勝負ッ!! 『天網羅壊刃』で夢境多刃劇ッ!!」
刹那の間に数百数千もの乱打を見舞う!!
しかしそれさえリョーコの目は捉えていて、片手斧一つでババババババババッと難なく捌いてしまう!
その激しい攻防で、足元の地盤が抉れ続けて破片が四散! なおも地響きは続く!
周囲にも余波が飛んでいって、あちこちが爆ぜていく!
ドゴ、ドゴガ、ドゴ、ドゴゴ、ドゴン、ドゴ、ドゴ、ドゴゴガッ!!
余波だけで勝手に地形を崩していく勢いァ!
まさに天変地異級ッ!
「あああああああああああああああああッ!!!」
それでも白目で必死に吠えながらウェールザは猛攻を止めない!
リョーコはなに食わぬ顔で裁き続けている! その眼光は鋭くウェールザを捉えて離さない!
ガカァンッ!!
ウェールザの両手甲が粉々に!?
「…………ッ!! だが、負けぬ!! 負けるワケにはいかぬッ!!」
それでもダウートを、そして目的を果たさせる為に、背後から数万もの剣を具現化!!
全身全霊尽くし、その後で力尽きる覚悟でもって目の前のリョーコを打ち倒さんと猛る!
「これが私の全力! そして我が奥義を受けてみよッ!! 夢境万華鏡劇ッ!!」
台風のように周囲を吹き飛ばす烈風を巻き起こすほど、幾万もの剣がリョーコ一人へと鋭く襲いかかるッ!!
これを喰らえば地図を描き変えかねないほどの超絶大破壊力だァ!!
「いっせ──のォ……」
今更、斧を引いて身構えつつ溜めに入るリョーコ!?
遅いッ! 遅すぎるッ! 隙だらけだッ!!
ドゥンッッ!!
リョーコを中心に大地を震わせるほどの爆裂が膨らむ! 稲光を迸らせるほど、濃厚で圧縮されたフォースを前に、襲い来る剣など全て粉々に吹き飛ばす!
「な!? なにッ!!? ……奥義さえッ!?」
キッとリョーコはウェールザを狙い定めるように睨み据える!
「クッ!!」
「必死なのはあんただけじゃない! あたしだって、ナッセとアクトと一緒に異世界へ行こうって、もう一つの夢がある!! だからここは絶対勝ーつッ!!」
「異世界!! 転移!? 夢だとッッ!!?」
ナッセが好きだという気持ちはともかく、親友二人と一緒に異世界を股にかけて冒険しようって、強く輝ける夢を抱く!
それを叶える為に、私は全力を出して突き進むんだッ!!
恐怖したウェールザは反射的に飛び退き、全身を包むように重厚な全身鎧を具現化! そして前方を分厚い巨大シールドを十枚具現化!!
威力値と速度はゼロになるが、山を砕くほどの破壊力にもビクともしない極大な防御力を誇るッ!
「これが難攻不落とも言える磐石の防御布陣! 全身鎧の『頑羅不動鎧』! そして盾の『頑羅盾』ッッ!!」
絶対に耐える!! 私よ気張れ!!
「クラッシュバスタァ────ッ!!」
嵐が巻き起こったかのように、リョーコが駆け出すだけで周囲が余波で荒れる! そしてリョーコは渾身の力で斧を振り下ろす!!
それは十枚もの頑強な盾を木っ端微塵に砕き、あっという間にウェールザの腹へ直撃!!
難攻不落と謳う全身鎧すら粉々に吹き飛ばされたァ!!
集約されたフォースがウェールザに叩き込まれ、リョーコは一気に振り抜いた!!
「ぐがああああああああッ!!!」
マッハを超えて吹っ飛ばされたウェールザは盛大に吐血し、後方の障害物をドンドンドドドンドンッと突き抜けていって、果てに地平線の彼方で飛沫を吹き上げた! ズドオオォォンッ!!
ウェールザ自身、超巨大なクレーターの中心に沈んでいるのを察するまで時間がかかった。
途切れそうな意識を必死に引き留めて、状況を把握。
「ぐ……ゲホッ、グゴホッ!」
…………ゆうに威力値は一〇〇万オーバーは確実か。
まるで……本気を出したマスターと戦ったみたいだ……。
か……勝てんな…………。
むしろ……防御に徹したおかげで…………助かった……。だが…………。
「戦えな…………グホァー!」
滝のような吐血!
全身が痺れてて触覚も機能せず、電撃のような激痛が走りながらで動けない。
下手すれば死ぬかも知れない。
防御してなければ、肉片残さず消し飛んd……。
ウェールザは変身が解けて全裸のまま落ちた。ガクッ!
そして宮殿境門はゴゴッと崩れていく。
リョーコは真剣な顔でしばし立っていたが、グラリとよろめいて屈み込む。風貌も元に戻って通常のリョーコになった。
ふうふう、息を切らす。
「終わったかぁ……。ハァ……」
ナッセ、アクト、後はよろしくー……。
ものすごい疲労が覆いかぶさってきたか、リョーコも横たわって意識を手放した。
まさかのダブルノックダウーン!?
しかし『宮殿境門』は壊されている!
この戦いリョーコの勝ちだ────────ッ!!




