211話「大決戦篇㉒ 紅蓮男ァ!」
四首領ダウートは、ナッセがタツサダに勝った事を見届け僅かな脅威を抱いた。
ついさっき叩きのめしたのが本物か偽物かは些細な問題。
ナッセという男を侮ってはいけない、そんな危機感を覚えた。
《よく聞け! 八武衆! あの路裏魂タツサダがナッセにやられたァ》
ディアルフ、フールニィ、ウェールザ、サマァツはその報告に激震が走った!
それぞれに焦りと驚愕などが表情に浮かび、汗が頬を伝う。
「あっはははははは!! あのタツサダさんがやられたんか~! やべぇ!」
「ほう……」
「やはりナッセという男。ただ者ではなかったか」
「あのロリコンがやられるなんて、ありえるのかー!?」
ちなみにフシュールとブラァーザはオウンゴールを決めた為、正座したまま小さくなってショボンしているぞ。
かつてヴィジャヤナガル王国の首都であったハンピ!
四方に五キロメートルほどの土地に、ヒンドゥー寺院が多数並んでいて、ヤシやバナナの木や巨岩群も目白押し!
赤いマフラーが炎のように揺らめき、ベストとズボンという簡素な衣服で、腹筋が割れているのが見える男。
紅蓮男サマァツは右拳に炎を纏う。ボッ!
「へへっ! 燃えてきたぜ!!」
あの先輩タツサダはとても強くて、いつも勝てなかった。
いつか勝ってやるぞーと息巻いていたのに、ナッセとかいう白銀の少年がブッ倒しちまった。それを聞いて燃えずにいられない。
強気な視線の先には、ジャオウとオオガ。
黒いマントをバサッと放り投げて、割れている腹筋が見える半裸のジャオウが「フン!」とカッコつける。
オオガは「おいおいおいおい! 野郎どもの裸なんざ見たかねェんだよ!」と場違いに憤っていた。
「貴様は黙って、隅っこで蹲ってな」
「スカした野郎だな! 最初にお前から片付けてやろうか!? あぁん?」
オオガは緑色に染まっていて五メートルの筋肉質の体躯、手と足に水かきが、口がクチバシ、頭上には皿が!!
そして背中から頑強な甲羅がメキメキと膨らんできた!!
双眸がキラリーンと輝き、オオガは戦意を昂ぶらせた!
「ヌオオオオオオオオオオーッ!!!」
大気を震わすほどの咆哮で、地面を飛沫が荒れ狂う!!
ジャオウは以前に対戦した事あるのか「魔獣『河童』か……」と呟く。
「へっ!」
それに対してサマァツは「『万覇羅』!!」と叫び、ドクンドクン全身が息吹始めて紅蓮に染まっていく! 周囲に赤い湯気がシュボボボ!
まさに『紅蓮男』通りの風貌だァ!!
ド ン!!
「いいぜ! 二人まとめてかかってこい!」
なんとサマァツは不敵な笑みで、左手でクイクイ挑発する。
ジャオウは殺気立って表情が険しくなり、オオガは激怒の形相に変わり、共に大地を蹴って爆発!
しかし!! サマァツは真剣な顔でドン!!
「豪炎の双爪撃ッ!!」
火炎を纏った両手でダブル引っかき降ろし攻撃!! 一気呵成でジャオウとオオガをぶっ飛ばすァ!!
ズザンッと大地に爪痕を刻み、二人は地面を転がっていくァ!!
ド ン!!
「チッ!」
ジャオウは素早く起き上がり、胸の爪痕に焦燥を帯びる。
オオガも立ち上がり「ぬう!」と唸る。
「行くぞォォォッ!! ぬううううんッ!!」
昂ぶったオオガが吠え、力んだ尻からブボォ────ッと水鉄砲を噴いて大地が爆ぜた! その勢いによって猛スピードでサマァツへ迫る!!
大きな張り手が迫り、サマァツは「!!!」と驚愕に見開く!!
ズガゴゴゴゴゴゴゴゴォン!!
激突の瞬間、周囲に衝撃波が荒れ狂い、岩盤が捲れ上がって粉々と吹き飛ぶ!!
しかしサマァツは片手で張り手を止めていた!
「……確かにスゲェよな」
「なに!?」
「そこいらじゃ歯が立たねぇパワーだ。そんだけだがな」
「舐めやがって!! ぬうううううううううッ!!」
オオガは張り手で突き出している側の肘がメキメキと尖っていって銃口を象る。そこからドッと水鉄砲が噴出ッ!!
その勢いでサマァツを突き飛ばす!!
「グッ!」
「貴様はトコトンなぶってやるッ! ラッシュ乱嵐──ッ!!」
更に両肘の銃口からロケットのように水鉄砲を連射する事で、その超加速された張り手の超絶乱射がサマァツを完膚なきまで襲う!!
しかし同じくしてサマァツも火炎纏う両拳で応戦!!
ズガガガガガガガガガガガガッ!!
属性的に相性悪そうなのに、サマァツは熱血で踏ん張ってオオガの猛連打を捌いていく!!
ジャオウは痺れを切らして「チッ」と駆け出す!
黒き炎を纏った連打でサマァツを襲う!
しかしサマァツは二人の乱打攻撃を捌ききっていくァ!!
数の不利を、負けまいと根性を昂ぶらせて、激情をも力に変えて想像以上の力を捻り出す!
「うおおおおおおおッ!!」
ガガッガガガガッガッガッガガガッガッガッガガガガガガガガ!!
サマァツは思い返す!
四首領ダウートと八武衆たちと一緒に幼少の頃より育ってきた。家族も同然。
先輩のタツサダ、フールニィ、ラジュタの背中を見て、同年代のウェールザとディアルフと揉み合いながら育ってきた思い出がある。
親代わりとなっているダウートは「如来王に俺はなる! 太陽系の争いを止めるためになァ」と自信満々に夢を語り、それが憧れとなっていた。
「だから負けられねぇんだよ!!!」
タツサダが負けた今、覆されるかもしれない戦況にサマァツは奮起!
渾身のパンチがオオガを殴り飛ばす! 続いてジャオウのフックをかわすと回し蹴りでぶっ飛ばす!
床を滑って転がりつつも、クルンと宙返りして踏ん張る二人!
「こ、こいつ……!」
「この野郎ォ!」
サマァツから徐々に力を増しているかのような気配さえ感じた。
本来なら二人を相手に戦えるはずのない実力差だというのに、サマァツという男はそれさえ覆しそうな底力を秘めてそうに思えた。
ジャオウはギッと真剣な顔を見せた!
「邪凶滅殺拳! 獄炎・ニ十頭黒龍装威!!」
上へ向かって黒龍を二〇匹も上空に撃ちだし「ギャオーン!」と吠えながらジャオウへと下降していく!
ドドドドドドドドドドドドッと二十匹もの黒龍を身に受ける!!
「コオオオオオオオオッ!!」
ジャオウの全身から爆ぜるようなエーテルを噴き上げ、更に黒炎の余波が周囲を舞う!
全身から無数の目がギョロッと見開かれ、額にも第三の目が開眼! カッ!
「全身邪気眼モード&二十頭黒龍装威で消す!!」
オオガも体格をドンと膨らませて本気の本気モードで凄まじい威圧を放ったァ!!
大地を揺るがし、大気が震え上がってピリピリ爆ぜている!
普通なら恐ろしい威圧に震え上がりそうなのに、サマァツはニッと不敵に笑む!
「タツサダさんはもっと強ぇえんだ! この程度……なんでもねぇ!!」
ド ン!!




