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203話「大決戦篇⑭ 泣き顔ァ!」

 アーグラ城塞!

 赤い城とも言える広大な遺跡! アマル・シン・ゲート、ジャハーンギール宮殿、ディワニ・アーム、アングリ庭園など見所も多い!


 そこで何故かプロレスで言う所の四角い台の床面に白いキャンバスマットが張られていて、四隅に鉄柱であるコーナーポストを起点に四方を三盆のロープで囲んでいるぞ。

 オレはそのリングの上で、相対するべき相手を見据えている。


「お前が富山県の分家である城路(ジョウジ)ナッセだな! 私はタツサダだ」


 中肉中背ながらもスマートに鍛えられた体格! 何故かタンクトップ! キリッとした顔で黒髪!

 この男こそ、城路(ジョウジ)()本家である八武衆(アート・ディコイト)路裏魂(ロリコン)タツサダ・ジョージ!

 ド  ンッ!



 なんか面倒くさそう。また本家が絡むと思うと気が滅入(めい)るぞ……。


 こんなオレの気持ちに意を介さず、ベラベラ自己紹介してくる。

 タツサダと名乗る男は、セコンドにいる本家のタツロウさまの父にあたるタツゲンさまの弟にあたるとかも言ってたぞ。

 更に数十分ぐらいマシンガントークしてきたぞ。


 要点を抑えると、園児とのロリ(こん)敢行(かんこう)しようとした罪で本家の牢獄に投獄されていたが、兄者に脱獄を(うなが)されて日本を出て行った。

 ダウート率いる組織でインド人の血を輸血してもらってから、常に全盛期の若さを保っている。

 そして園児にストライクゾーンが及ぶ伝説のロリコン(スリー)

 ついでに幼女の素晴らしさ云々(うんぬん)


 ごめん。激烈すぎて半分頭に入らなかった。

 とりあえず、そんな理由でダウートの傘下に入ってる事は分かったぞ。



 するとセコンドのアッキーがキャンバスに腕を乗せて、生意気そうに笑んでくる。


「やい! また会ったな分家! これからタツサダさまと戦う前に“賭け”をしようじゃないか?」

「……また?」


 オレはジト目で呆れるしかねぇ……。全く懲りねぇなぞ。


「おまえが負けたら腹を切って()びろ! 本家につばを吐く無礼を許せると思うなよ!」

「なんでだよ? オレに死ねって事か?」

「あったりまえだろ!! バカだな、おまえ!」


 つか後方にいるヤマミが恐ろしい威圧を発し始めたぞ……。


 するとタツサダはアッキーへ「おい!」と見下ろす。

 思わずアッキーは(かしこ)まる。


「ええ! これで分家はおしまいでしょう! やっちゃってください!」

「……私が負けたら、こっちが腹を切るのか?」

「え? い、いや! 腹を切るのはあの分家だけですっ!」


 オレを指さしてくる。


「分かった!」


 こちらを見てきて、緊張が走る。

 するとタツサダは少し手を挙げて「選手交代だ」と言い出す。


「んん? まだ他にいんのか?」

「ああ」


 タツサダはアッキーへ見やりつつ、親指で指す。


「これからタツアキがお前と試合する。もちろん負けた方が腹を切る。これで賭けとしては等しいだろう?」

「ええええええええっ!!?」


 驚きの声を上げるアッキー。


「そ、そんなっ!? 突然何をっ!?」

「お前が勝手に提案した事だ。責任を持って自分で取り組め! 他人に()いておいて、自分だけ安全地帯で高みの見物をするなど許さん!」

「いやいや! 負けたら俺腹切らないといけねーじゃん!」

「当たり前だ! 一方的に相手に腹を切れと強制しといて、自分はなにもないのは如何(いかが)なものか?」


 アッキーは「うぐ!」と言葉に詰まる。

 構わずタツサダはアッキーをグイと引き上げてリングに立たせ、代わりにリングを降りる。そして腕を組む。


「さぁ! 負けたら腹を切る命懸けの試合(デスマッチ)だ!」


 リングでポツンと立たされたアッキーは呆ける。

 タツサダは厳しい視線を向けたまま。タツロウさまはため息をつく。誰も助け舟を出さないみてーだ。

 今度はオレに恐る恐る振り向いてきた。プルプル怯えている。


「……しょうがねぇな。やるしかないぞ」


 オレは星光の剣(スターライトセイバー)を形成。

 セコンドにいるヤマミも冷たい視線で成り行きを見守っている。

 アッキーは震えたまま刀を抜こうともしない。


「さぁタツアキ! 本家の誇りを胸に、闘志を示す刀を抜け!」


 腕を組むタツサダに厳しく言われ、アッキーは顔面蒼白で腰を抜かしていく。

 前に威力値比べでカンストしたオレの実力は見ている。敵うかどうか戦わなくとも分かる。

 そんで負けたら腹を切るという自分で出した賭け。

 床に腰を下ろしたまま意気消沈してガクガク震えるのみ。


「タツアキ!」


 父であるタツロウさまの言葉にビクッと竦む。


「何度繰り返せば気が済むんだ? 分家は見下す為にあるものではない。同じ家族として、血を絶やさない為にだ。安易に一方的な欲求を押し付けるでない!」

「……ッッ!!」


 次第に(うつむ)いていく。


「つーか、そもそも前にやったオレとの賭け忘れてねぇ?」

「……?」

「オレが勝ったら二度とふざけた戯言(たわごと)を言わないでもらいたい、だよな? オレは負けた事になってんのか?」


 腰を抜かしたままのアッキーはオレを見上げて見開く。


「今度はその身に三大奥義を叩き込むぞ?」


 アッキーは強張(こわば)ってガクガクガクガク身震いして、ジョロロ~と失禁していく。

 これで懲りて欲しい。



「選手交代だ」


 なんとタツサダが手を挙げてきたぞ。オレは頷く。

 代わりにタツサダがリングに立って、アッキーを引きずり下ろし「これで懲りればいいが」と後ろのセコンドを見やる。

 懲らしめる為に()()()やったみてーだな。


「タツアキ! そうでもしなければ、そこの女が怖いぞ。見たところナッセと同等の実力者。ボロ雑巾(ゾーキン)で済めば御の字か」

「うぅ……!」


 オレの後ろにいるヤマミの事である。

 アッキーが賭けを提案してから、暗殺者並みの凄まじい殺意をビンビン放ち始めていたからな。某スパイ家族のヒロインみたく。

 ルール無用と襲いかかりかねん。


「謝らんか!」


 タツロウさまに厳しく言われ、アッキーは泣きながら立ち上がる。


「ず、ずみまちぇんでしだッ! 生ぎたいッ!!」


 某海賊漫画並にオーバーリアクションな泣き顔だぞ。

 タツサダは「……って事だ。迷惑をかけたな」と、タツロウさまと一緒に殊勝に頭を下げてくる。相手が分家であろうとも、自分の不手際を()びる教養は持ち合わせているようだ。

 つーワケで“賭け”はなかった事になったぞ。


 なんと息子の不始末だからと、タツロウさまがキャンバスの汚れを拭き取っていく。

 申し訳なさが顔に表れている。苦労してんなぁ……。


 終わった後、オレはリング上でタツサダと相まみえる。


「さて本題に入ろうか!」

「ああ」


 タツサダはスラリと剣を手に反射光を刀身に走らせた。

 刃や柄に装飾を施されたもので、(つば)近くの刀身は赤く煌めいている美しい剣。

 彼が言うに『ガンダ』と呼ばれるインドの剣だそうだぞ。


「園児までロリ(こん)ができる社会を創るべき、私は命を懸ける所存である!」

「いや、それ普通にダメだろ……」

「な、なんだと────ッ!? 同じ城路(ジョウジ)家でありながらもロリコンの血統を否定するなどと──────ッ!!」


 握った拳を震わせてムキになるタツサダ。

 なんか()えてしまったぞ……。

 さっきまでの高潔さと教養とはなんだったのか?


「うわー……」


 セコンドのヤマミもジト目でドン引きだ。

あとがき


 ロリ(こん)なんて単語は存在しませんw 造語ですw

 実際は『早婚(そうこん)』と『年の差婚』を合体させたヤツなのでw

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