198話「大決戦篇⑨ 真の友ァ!」
カレー・マハルへ時空間転移で侵入したが、分断されて八局の戦いを余儀なくされてしまったぞ。
外の戦場は敵味方の創作士による激突で、更なる激化。
アクトは右手首の腕時計をチラッと見る。
秒針が二、三倍ぐらい速く動いている。チッチッチというよりはチチチチ!
「っち! こういう事かァ……」
頭が切れるアクトは察した。
元々は持ち主しか作用しない『六道石』を『時計塔』により世界に作用するよう全体化された。
確かにこれなら止められる。歴史上何度でも繰り返す愚かな争いがなァ……。
思えば敵を殲滅するだけならダウート自身が戦えば済む事。
わざわざカレー・マハルへ侵入したヤツらに八局の戦いを強いる必要性は皆無。
つまり目的は……!
「時間稼ぎかァ……!」
「ほぉ……、察するのが早い。さすがはアクトよ」
目の前で対峙する旗雷鬼ラジュタはニッと笑む。
アクトは不機嫌そうに睨む。
それに構わずラジュタは鞘から刀を引き抜く。ギラリと反射光が刀身を走る。
「否応なしに戯れるしかないワケだ。つもる話でもするか?」
「っち!」
アクトも鞘から刀を抜く。
ここは仮想戦場でインド最大の都市ムンバイでのインド門前だ。凱旋門とも思える巨大な建造物が聳えている。
瞬時に二人は刀を交差させて、ドンと爆ぜた空気が吹き荒れて床のタイルが剥がれ飛ぶ!
ギリギリギギギ、と鍔迫り合い!
そのまま殺意を乗せた剣戟を披露し、幾重もの軌跡が弧を描き続ける!
ガガッキィンガガガッギギィンギギギガガガ!!
様子見ではあるが、素人目では真剣な殺し合いにも思える。
二人は互いに後方へ飛び、足元に煙幕を呼ぶ。
「あの頃よりもキレが良い……。蒼天心剣流などと極めたと言ってるらしいな」
「この世界でオメェと面識ねェわ」
「そうだろうな…………」
アクトは怪訝に眉を潜める。
「まさか?」
そんなはずはないとアクトは疑心に駆られた。
確かにラジュタとは知り合いだ。それはあくまで消え去ってしまった前の並行世界での話。星獣が暴れ回って手に負えないのをナッセが『運命の鍵』で仕留めた世界。
結局滅んで、人類の誰もいなくなってしまった。
「六道輪廻の人間道から避難していたからな。その頃はまだ『木星大境門』の開発中で、プラーナの事象は限定的だった。やむを得ず緊急避難に使ったからな。しばらく戻れなかった」
「ダウートと一緒にか?」
「……私だけ退避しても仕方ない。だが驚いだぞ、まさか人間道が復活しているとは思わなかったからな。そして嬉しい事にお前も生きていた!」
ラジュタは嬉しそうに白い歯を見せる。ニッ!
アクトは「全く嬉しかねェな」と不機嫌。
「ここは前の世界とは全く違う同一世界。違うアクトがいてもおかしくなかった。だが、この通り私を知っている貴様がいてくれたのだ!」
その真相は知っている。
ナッセの師匠である魔女クッキーが、因子の増大を軽減する為に重ねた並行世界同士の連結。今は大魔王討伐に伴って解除されている。
アクトはナッセによって逃されて無様に生き残り、もう一人の魔女アリエルの通気口ダンジョンを通って異世界でしばらく生きていた。そして新しい並行世界で転生したナッセと再会。
それで生還できた。
「貴様も六道輪廻に逃れていたか?」
「さァな」
「それぐらい話してくれても良いだろう……。馴染み同士としてな」
「ダウートに心酔して印英組抜けた裏切りモンにゃ話したかねェわ!」
「まだ根に持っているのか……?」
「持つわァ!」
『印英組』
インドバージョンの新選組。
アクトたちが形成した労士隊。主に治安維持活動。そこは日本と変わらない。
一番隊長オーウデーンは破天荒な人でメチャクチャだったが人望があった。二番隊長はアクト。三番隊長はガトゥーチ。四番隊長がラジュタ。五番隊長以下略。
インド一番の牙と恐れられていたが、ダウートにより壊滅。四ヶ月で解散。
「あのオーウデーンもダウートさまには勝てなかった。煮られて終わった。だからこそ正義は勝つものの方だと思い知らされた」
「あァ……、オーウデーンを騙して負けさせたヤツァに言われてもな」
ラジュタはピクッと眉を跳ねた。
「強い方へ寝返る卑怯な性格だ。前から裏切ってて情報を流して壊滅ァ促しただろう」
「なんの事かな」
シラを切るように首を振るラジュタ。笑ってさえいる。
「……クソみてぇなオメェと俺だけ生き残って胸糞悪りィわ!」
「そういうな。こちらにつかないか? 他に分散された味方はこちらの状況を知らん。今なら他のヤツらを騙し討ちできるぞ」
「まーたソレかよァ?」
「馴染みの仲間はそこにいない。いるのは私だけだ。小さい頃からの仲だろう。他の馴染みは死んだ。私たち二人だけだ。共にダウートさまと正義を成さないか?」
アクトは目を細める。
「アクト! 矮小な日本になど肩を持ってどうなる?」
「テメェが裏切ったオーウデーンは俺たちァ引っ張ってきたカリスマ的存在だっただろうが!」
「私にとっては目障りだった。お山の大将で調子乗っているバカとしてな!」
アクトは大地を爆発させ『万覇羅』を発動して、斬りかかったァ!!
同時に同じく『万覇羅』を発動させたラジュタは刀をかざして防ぐ!!
ドオンッ!!
周囲の岩盤がタイルごと捲れ上がって周囲へ烈風と共に吹き飛ぶ!
「テメェもダウートの野郎も、俺には目障りなんだァ!!」
「分からないのだな! 昔からの馴染みだというのに!」
「一寸たりとも分かりたかねェわ!!」
マッハの速度で縦横無尽に駆けて、激しく剣戟を重ね合い続けていく!
ガギォンガンィガガガギュオオオオガギォオンガギォンッ!!
「もはや貴様に私以外の友などいない! 大人しくダウートさまの軍門にくだれァ!」
ド ン!
「!!!」
ラジュタは憤怒の一太刀を浴びせて、アクトを吹っ飛ばしてインド門へ激突させた!
分厚い壁に風穴を空けて、なおも数十メートル吹っ飛んで後方の床を滑って横たわる。ピクリともしない。
刀を下ろすラジュタは一息をつく。
「確かに私は卑屈だ。無駄に自信満々なオーウデーンに振り回されてばっかだった。それにアクトと何度も言い争って、だがしかし妙に気が合った。罵り合ってても互いを認めていた」
「うっせェわ……!」
アクトはムクリと立ち上がり、額から血筋が流れてなおも冷静な表情を見せる。
寝起きから目を覚ましたと言わんばかりだ。
「認めてたのは、オメェの切り替えの速さと天才的剣技だけだァ! 人格まで認めちゃいねェよ!」
「何かすれ違ってたのかな?」
「すれ違いも何も全然掠らねェからな? そうでなきゃ日本へ飛ばねェよ!」
「む……」
訝しげで不機嫌なラジュタ。
「オメェを本当に馴染みで友だって思ってんなら、まーだインドにいたさァ!」
「なに……!?」
アクトはナッセとリョーコが脳裏に浮かび、感慨が沸く。
そして自然と笑みがこぼれる。
「日本に“友”がいるからなァ! それで俺ァ充分よ!」ニッ!




