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166話「六界篇② これが天道ァ!」

 普通の太陽とは違い、光輪を伴っていて光の帯を放射状に広げている太陽。

 そしてさっきまで霧がかかっていた陰気臭い深緑の森林が覆う山脈だったのが、黄色いタンポポの花畑で明るく広がっていた。木々は桜。上空は青空。


 相変わらずミニ木星が空に!



「なに…………これ…………!?」

「天……国…………ぞ?」


 歩いていけば、池には(はす)がピンクの花を咲かせているのが見えた。

 それになんかポヤポヤ気持ちいい。


「なんか、こう体が溶けるような…………??」


 世界が溶けて、風となって、それが収まったら別世界になっていた。

 そして心身共に軽くなってきて、心地よい空気に撫でられるだけで快感が走る。



《ここは“天道”にょぞ……!》


 ニョキニョキ地面から、黄金の蓮の上に座する天女が生えてきたぞ。

 続いて、いくつもの天女がニョキニョキニョキニョキ。


「なんか生えたっ!?」

《ふふふ! 我らは天女(てんにょ)にょん! 天女だけに天ニョーン!》

「…………!?」


 ふふふ、と自分のダジャレに笑っているようだぞ。

 いずれも白い肌で露出度が高くて薄布で、羽衣を纏っている。後頭部から後光を模した髪飾りが浮いている。顔は浮世絵みたいな感じで目を瞑っている。


「えっと……。ここが天道??」

「ここがどういう所なのか、説明してくれないかしら?」

《……至高の魂をお持ちの方。よろしいにょん》


 にこりと微笑んできて、説明をしてくれたぞ。

 それはいいとして語尾何とかしてくれ。


 どうやら定期的に吹き荒れてくるプラーナによって“六道輪廻”の六界のいずれかに転移されるようだ。

 魂の純度によって行ける世界が変わるらしい。

 純度とは、主に生前の行いによって変動するもの。あまりにも(けが)れていると地獄へ落ちるみたいな感じ。

 インド人は“(ジャーン)”を行う事で、プラーナに流されなくて済む。


 そしてここは『天道』という六界の中でも快楽に満ちた天国。

 永遠の幸福に酔いしれ、寿命を迎える直前までは快楽に浸れる。修行を極めたり、善行を行ったり、などで魂の純度を綺麗にすれば転生できる世界。


 例えプラーナで転移されると言っても、ここだけは別格。

 ほとんどといっていいほど、ここへ流される人は皆無。オレたちが来れたのは妖精王だからだという。

 ……と親身に教えてくれたぞ。


《元々は木星で起きる事象のようですが、最近は地球でも起きるようになったにょーん》


 オレたちはそんな事実を知って、言葉を失う。

 まさか生きたまま六道輪廻を巡るなど、普通は考えられないぞ。


「それはいいとして、元の世界へ帰る方法はないのかぞ?」

《元の世界……。それは“人間道”にょね?》

「ええ。プラーナに巻き込まれて、ここへ飛ばされました。だから帰らないと……」


《おお……! 帰りたいだなんて!》

《そんな不思議な……!》

《ここにいれば、ずっと幸せにょんね……》

《ああ……、嘆かわしや! この“天道”にいたくないって……》

《でも、もういいにょん。ここに慣れれば帰る気も失せるにょーん》


 次々と天女は地面へ引っ込めていく。

 オレは「お、おい! 帰れる方法ねーんか??」と手を差し出して呼び止めるも、次々と引っ込めていく。

 最後に残ったのは、最初に現れた天女。


《帰りたいなどという人はございませんので、私も知らぬにょん》


 少しずつ地面へ沈んでいく。

 オレたちは絶句するしかない。やがて顔だけになると天女は微笑む。


《心の(おもむ)くままに進むにょん。必ずや道が開かれるにょーん》


 そう言うと地面へスポッと沈んでいって、静寂が訪れる。しーん……。

 オレとヤマミは顔を見合わせる。

 その後、言われた通りにアテもなく歩き続けていく事にした。


 ヒマワリの花畑が広がっていたり、桃の実がなっている瑞々(みずみず)しい木々があったり、まるで極楽浄土のようだ。ガチかもしれないけど凄い。

 地蔵のように道の側面で並ぶ本物の仏様もいた。しーん、動かない。


 ぶぼ────っ!!


 なんか突然オナラの音が!? オレとヤマミは「!!?」と振り向く!

 なんかスゲー臭いが漂う……。

 恐らく仏様がこいたと思うが、微動だにしない。


「いま屁をこいたのは……?」

「私じゃないわよ」

「音はあっちだしなぁ」


 オレとヤマミはじ────っと仏様を眺める。

 しばらく動かないが、赤面している仏様が一人微かに震えていた。


「……しゃーねーな。仏様なだけにほっとけ?」


《ぶわっはははははははははははははははははははははははは!!!》

《ぶほほほっほはははははははははははははははははは!!!》

《ぎゃはははははっははははっはあははははは苦しははははは!!》

《わはははははははは腹痛ははははああああはははは死ぬ!!》


 なんと仏様全員が笑い転げて、バンバン地面を叩いている。

 笑いが止まらないぞ。

 まるで笑い茸でも食べたかのような有様だぞ。効きすぎ。


「ふ、ふとんが吹っ飛んだー! ふとんがふっとんだー!!」


《ぶぼっ!!!》


《《《あははははははははははははははははははあははははははははははははははははははあははははははははあはあはあはははははははははははは!!》》》


 更に笑いが悪化したようだ。

 大笑いの大音響が地面を揺るがし、大気を震わせ、仏様は縦横無尽に笑い転げる。

 本気で笑い死にしそうだなぞ。スマンやりすぎた。


「……い、行くかぞ」

「知らないわよ?」


 ジト目するヤマミと一緒に、そそくさと去った。



「オレたちが作った建物やマジンガたちいねーしな」

「人間道に残っていると思いたいけど」

「……今は帰る方法、見つけなきゃな」

「そうね」


 しばらく先を進んでいると、立派な寺みてーなのが建っていた。

 その真ん中の吹き抜けには、アクトが持っていたのと同じカレー色の宝石が堂々と浮いていた。


「まさか! アレが『六道石(りくドォせき)』??」

「確か、アクトが言ってたように六界それぞれに一つ存在しているってたわね!」

「ああ。でもなんか、あっさり見つかるなんて……」


 探そうと思っていないのに、拍子抜けするくらい見つかった。



《その『六道石(りくドォせき)』が欲しいか?》


 声がする方へ見上げると、絶句するくらい大仏が寺の向こうで座禅を組んでいたぞ。

 黄金の肌で、頭上には皿つきのカレー。背中から後光を模した黄金の装飾品。常に目を瞑っている。

 まるで巨人だ。

 呆気に取られていると、大仏は細目を開いて微笑む。


《ならば、(なんじ)にとって大切な人を捧げるがよい。さすれば授けよう》

 ド  ン!


 思わずオレとヤマミは「!!!!」と出してしまった。

 まさかの生け贄要求に絶句するしかない。

 ならば、先手必勝! オレはカッと見開いて駆け出す! そして大声で!


「タルからホタルが出て、思わず表情がタルんだぞ────ッ!!」


 しかし言い切る前に、大仏はババッと手で両耳を塞いだぞ!


《効かぬ!!》ド ン!!

「ナン…………だと…………ぞ!!」


 オレはナンを取り出して驚きのリアクションしたぞ。

 ジト目のヤマミは「なにバカな事やってんの?」と呆れた。


《聞こえなければ恐るるに足らず! ほっほっほ!》




 追伸、地面に書いたら大爆笑してくれました。ちょろい。

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