163話「開幕篇⑫ 怪異の種ァ!?」
宗教の神殿にも見える、とある大きな建物。派手な色が塗られている。
アクトはサングラスをかけて悠々と出入り口を通ろうとする。
すると左右にいたターバン巻いた警備兵が「待て!」と阻んできた。
「コンドリオン王子さまと会う約束してんだがなァ……」
「インドの“英雄”ダウードさまの命令で誰も通すな、との事だァ! 去れ!」
「王子さまの意を汲まねェのかよ?」
「お引取r……!!」
手練か、警備兵はアクトの威圧を察して三日月刀を引き抜く。
「心剣流・剛牙・紅蓮斬!」
アクトは紅蓮纏う刀を振るって二人の警備兵を横薙ぎ一閃でバゴーン吹き飛ばして、奥行きの壁にめり込ませた。メゴォ……!
やはり剣を極めた彼の方が圧倒的だ。
本気を出さずとも、これくらいの手練れなど敵ではない。
「さァて……、ナッセたちが頑張ってる間に王子さまを救出しねェとなァ」
異変を察知して、ぞろぞろとターバン警備兵が殺気立って群がってきた。
既にインド特有のオーラ『心髄』を纏っている。
「ちょい用事済ませとかんとなァ……、万覇羅!!!」
アクトはサングラスを放り、ギラつく鋭い視線を見せながら叫ぶ。すると全身の血管が赤く浮かび、風船のようにアクトの体がボンッと破裂しそうなほどに膨張。
ドクンドクン脈動を鳴らせ、徐々に湯気が吹き出ていく。
そんな奇妙な様子に、ターバン警備兵たちは見開き「なん……だと……!?」とおののく。
ボフンと元通りに縮むと、その反動で周囲に煙幕の渦が吹き荒れる。威圧混じりにシュボボボボボと噴出音のように鳴り響いてきた。これはアクトの湯気だ……。
「そうだったァ~!! アクトは『万覇羅』の使い手だァ!!」
「えええ~~~~!?」
「こっちまだ『心髄』しかないやん!」
「ああ! 俺らの攻撃特化の『剛牙』と防御特化の『柔鱗』では、アレに対抗できねェ!!」
そしてアクトの風貌は別人のように変わっていた。天然パーマの黒髪さえ逆立ち、歌舞伎で言う隈取のように目の周りを含め表情の筋が赤く煌く。全身のムキムキに膨れた筋肉のラインに沿って赤く煌めき、黒く染まった刀の輪郭が赤く輝く。
常にシュボボボッと全身を纏うように湯気が立ち込め続けていて、アクト自身は少し地面から浮いていた。
思わずゾッとさせられる異形の姿。
「行くぜァ?」
不敵に笑うアクトに、ターバン警備兵たちは竦んでいく。
ガガン!!
広く豪勢な部屋。
立派な壁画と彫刻の柱。大きなベッド。豪勢なテーブルやイス。風呂や手洗い、テレビソファーと、いくつかの部屋で完備されている。
引きこもっても充分暮らせる設備だ。
「はぁ……」
一人の男はイスに腰掛けて項垂れていた。
真面目そうな人相で、額に赤い点。短めのボサボサのベリーショート。カレー色のベストに白いズボンと簡易な服だぞ。
コンコン! ノックの音にビクッとする。
「コンドリオン王子さまァ……、面会に来たぜァ!」
「ああ! アクトさん!?」
ガチャガチャするからに、ドアは固められている。
外側からも内側からも開けられない妙なドア。ダウードでしか開けられない頑丈なドアだ。
「がああああっ!! 心剣流・螺旋翔」
螺旋状に亀裂がバキバキ走り、ぶ厚いドアすら木っ端微塵に吹き飛んだ。竦むコンドリオンに、踏み込んできたアクトがニッと笑ってくる。
「……父上が済みません」
「あァ……、気にすんなァ。さて長くはいられねェ……。来るか?」
「もちろんですよ!」
するとアクトの背後に黒いターバンの暗殺者がフッと現れた!!
これにも気付いていて刀を────……。
「危ないっ!! 象のォ~~」
コンドリオンは右腕が象の鼻と化して、ミョ──ンと急激に伸びたァ!!
「長鼻拳!!」 ドゴォン!!
長く伸びた象の鼻が暗殺者を「!!!」と突き飛ばし、後方の壁を貫通していって外へ吹っ飛んだァ!!
これにはアクトも唖然とさせられた。
そう、実は木星より持ち込まれた奇跡Dランクの『怪異の種』の能力者だったのだから……。
コンドリオン王子のニョロニョロする象の鼻は、徐々に腕へ戻っていく。
妙にポジティブにニカッと笑い始める。
「……にひひひっ! さァ冒険に行こうぜ!!」ドン!
「能力を得られるだけではなく、容姿と人格に著しく変化を及ぼす悪魔の『種』……! ダウードの野郎ァ!」
アクトはそんな衝撃的な変化に憤慨していく。
そしてこれから起きるであろう最悪なシナリオに底知れない不安を覚える。頬を汗が伝う。
「こうなると話が変わってくるァ……!!」
とある倉庫。ターバン雑兵たちが悪辣な笑みで「ヒヒヒ」と笑う。
積まれた箱に『怪異の種』がたくさん入っている。木星から密輸されていたのだぞ。ドン!(強調擬音)
「インド人にしか効かないからなァ……」
「だからこそ、全人類をインド人化させる必要があったのだ」
「そうすれば、我々インドの勢力は更に強くなって、太陽系を支配できるのだァ!」
「太陽系をインド化させるァァァァァァァ!!」
「カレハハハハハハハァ!!」
ド ン!(強調擬音)




