162話「開幕篇⑪ 冷静に撤退ァ!!」
これが威力値一〇〇万オーバーの実力! それこそが四首領!!
マジンガたちの総攻撃も虚しく、ダウートによって一瞬にして全滅させられてしまったぞ!
完膚なきまで叩きのめされ、誰一人立ち上がれるものはいない。
シュウウウ……、足元を立ち込める煙幕が風に流されていく……。
オレとリョーコは後方で控えていたので無事だが……。
「そんなっ!! うそ……、これじゃナッセが言ってた通りじゃないっ!?」
「ああ……ぞ」
ここに来る途中でリョーコに話していた。
オレたちが挑んだ四首領ヤミザキ。
確かに善戦していて、最後は奥義で押し切ろうとさえできていた。
それはヤミザキが『運命の鍵』で刻印の力を超パワーアップさせた代償で寝込んでからの病み上がり、しかも同じ四首領であるヘインとぶつかった後の話でしかない。
つまり疲弊している四首領を相手になんとか戦えていただけなのだ。
そもそも最後は想定外な『運命の鍵』のルールで自滅してただけ、と。
「……結局、まだ四首領には遠く及ばない、ぞ!」
「なん…………ですって………………!?」
ブ○ーチっぽくリアクションするリョーコはさておき、オレは大魔王を倒したからって自惚れていたと思い知らされた。
つーかアレも師匠のおかげなんだよな。
本当に偶然が重なり合って、転がってきた好機を拾って勝っただけに過ぎない。
「あ、アクトだってダクライ倒したんじゃないの!!」
「元が老体って事もあり、オレたちと同等の実力者であるシナリ、コハク、モリッカを同時に相手にした後だ。ヤミザキと同じく、かなり戦力は削がれていた。おそらく戦闘力は半減……」
「そ、そんなっ!!」
ダウートは目を細め、こちらを見下ろしてくる。ゾクッとする。
「噂では激情家と聞いていたが、臆病者の間違いだったかァ……?」
「ああ。怖くてブルブル震えてらぁ!」
本当に足が震えているのだ。だが!
「なら話は早いァ……。では、こいつらと一緒に俺の為に働いてもらおうかァ……?」
「さ、採用してくれんのは光栄だけどよ」
「あァ……?」
ギロッと睨んでくる。
身震いしそうだったが、オレは不敵に笑みながら左腕を横へ伸ばす。
「オレたちはまだ在学中だぞ!」
《もし、マジンガたちと一緒にキレて、逆に返り討ちされていたらな……!》
瞬間移動のようにフッと素早くヤマミが降り立ち、オレの左手に手を重ねて『連動』! 二人の妖精王が大地を揺るがすほどフォースを激しく噴き上げた!
白黒の花畑が激しく咲き乱れ続け、花吹雪が荒れ狂う!
《こうしてオレがヤマミと一緒に力を発揮できねーからなッ!!》
察したダウートは「む! 逃がすかァ!」と顔を顰めて、如意棒で構えて駆け出す! 速い!!
そこを阻んでダクライが割り込み、如意棒と聖剣が交差! 四方八方に稲光を迸らせて大地を揺るがすほどの反発を生じさせた!
その迫り合いは拮抗してしまう!
「ぬっ! き、貴様はァ!! “神速の黒執事”ダクライかァ!」
「さようで、ここは一つお手合せ願おうかの?」
「どけァッ!!」
ダウートとダクライが激しい打ち合いの応酬で、絶えぬ地響きを繰り返し、迸る稲光が散乱されていく。同時に吹き荒れる烈風が砂煙を流していった。
まさかの援軍がダクライだと知って、頼もしく思えたぞ。
《そして、みんなを助ける余力と余裕ができるぞ!》
「オサラバだぞ! ダウートさんよぉッ!」
「戦わずに即逃亡とはァ……、とんだ腰抜けだなァ……妖精! 大魔王を倒した英雄と言っても所詮……魔女からおこぼれをもらっただけで勝利者気取りの“臆病者”かァ……?」
「臆病者……?」
オレはヤマミから手を離し、歩みだしてギッとダウートを睨む。
ヤマミは「ナッセッ!」と焦りだす。
リョーコも「やめてッ! ナッセ!! 戻ってッ!」と必死に叫ぶ。
ダクライも杞憂か苦い顔をする。
「今の言葉、取り消せよ! ……と言うとでも? 逃げっぞヤマミ!」
「うん!」
そーゆー挑発には乗るもんか! あっかんべーだぞ!
「ぬう!?」
再びヤマミと手を繋ぐ!
無数の黒い花吹雪が渦を巻いて、横たわっているマジンガたち全員をオレたちもろとも呑み込んでいく。ズズズズズズズ!
ダクライまでも「ほっほ! 残念じゃったの」と吸い込まれていった。
黒い花びらが余韻として緩やかに散って、溶け消えていった。
四首領ダウートだけが一人取り残され、不機嫌そうにチッと舌打ち。
「あの激情家ァ、挑発にも乗らねェ……。思ったより冷静に判断ができるとは、些か侮ったかァ……。やはり評判はアテにならねェなァ……」
如意棒を肩に乗せて、悠々と踵を返していく…………。
霧が立ち込める山地の町。タージリン。
田舎とも言える風景で、自然に囲まれている。住宅地も斜面に並んでいて、ヒラヤマ鉄道SLが煙を吹いて走っている。
その町付近の森林で黒い花びらの渦がズズズズッと現れ、渦の流れに沿ってオレはヤマミと一緒に降り立つ。
そして未だ意識を失っているマジンガたちも転がった。ドサササッ!
緊急ゆえ、乱暴にしててスマンな。
「はぁ……はぁ……はぁ……! た、助かったぞ……」
「うん。肝を冷やしたけどね……」
「はは! ありがとな!」
繋いでいた手を離し、ヤマミに礼を言う。
未だ冷や汗がどっぷりで背中が冷たい。恐怖から解放されたか、へなへなとへたりこんだ。
リョーコも腰を落として安心の一息。
「……なんでオレたちがインドへ行く事を知ってたんだぞ?」
ヤマミはオレを指さす。
するとオレの巻いているマフラーと首元の隙間からニュッと黒い小人が出てきたぞ。これはヤマミの『血脈の覚醒者』による黒い小人だ。
地形を伝播していく能力を持つ『分霊』。その伝播能力で、オレの肌に潜んでいたらしい。そういう事か……。
「太陽系のトップシークレットも?」「もち、ぜーんぶ」
ヤマミは目を細めて小悪魔的に笑ってくる。
……こっそり浮気とかしたら怖いな。しないけど。
「とりあえず、気配を察知されないよう結界を組んでるからダウートは分からないわ」
あらかじめ準備してたって事か……。
さすがだなぁ。




