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157話「開幕篇⑥ 路地会議ァ!」

 明かりもついていない真っ暗な路地は、夜空の星々や三日月の心許ない光で僅かに形状が見える程度だ。

 だが、アクトは目の前の三人の存在感を強く感じ取っていた。


「来てくれてありがてェ……! 元インドラ狂信派の四神エレーシャと四神クリシュナ!」


 象の頭をした灰色のにこやかな顔をするエレーシャ。そして背中に壁をあずけて腕を組むクールな長身の黒髪で長めの前髪二分けのイケメンで黒いコートを着ているのがクリシュナことギンジ。

 二人共堂々とした風貌で、並々ならぬ威圧が漏れている。


「お前があの“黒夜叉”か……」

「情報を聞かせてくれたからには、それ相応の確証はあるんでしょうかね?」


 ド ド ン!(登場擬音)



「そして……! 我が昔からの親友モンハン!」


 アクトが静かに目線を向けた先に、ゴツい鎧を着込み、大剣を肩に担ぐ妙なインド人が立っていた。

 その男は引き締めていた口元をニカッと笑みに緩めたぞ。


「はっはっはっは! 何十年ぶりだォ……! 狩りの誘いを断られてばっかで寂しかったぜォ……」


 ド ン ッ!(登場擬音)



「単刀直入だァ……、恐らく既に四首領(ヨンドン)ダウートの計画は一足先に進んでる。だからこそフェスティバルを開いたのだろうなァ……」

「根拠はなんですかね? 私は結構養子(クロウ)が心配なものですよ」

「…………」


 訝しげなエレーシャ。そして沈黙のクリシュナ。


「思った以上に早ェんだわ。これが」

「おォ……、こうして俺が諜報活動して得た情報には青ざめたもんだぜォ」

「その情報はなんですか?」

「……」


 モンハンは目立つような装備をしている割に、諜報活動でいち早く情報を獲得してアクトに連絡している。

 そして説明された。


 四首領(ヨンドン)ダウートは今になって『六道石(りくドォせき)』を集めていて、それを六個揃えたい意向が確認された。

 その『六道石(りくドォせき)』は、この世で唯一無二(・・・・)の宝石。

 単体では効果はなく、ただの宝石にしか見えない。


「この世で唯一無二、つまり一つしかない『六道石(りくドォせき)』が六個(・・)あるというのは……」

「妙な話ですね。その石について噂程度に聞いておりましたが」

「…………」


 モンハンは話を続けた。


 今まで四首領(ヨンドン)ダウートが動かなかったのは、自分だけでは『六道石(りくドォせき)』を全部揃えられなかったからだ。

 手元に一個転がすしかなかった。

 ……つい先程、逃げ延びたというソロモォーンを叩きのめして二個目を強奪した。


 まさか、この最新の情報までもモンハンは得ていた。

 そんな早さにエレーシャとクリシュナは感嘆する。同時にダウートの動きにも戦慄させられた。

 向こうの動きも計画通りと言わんばかりに滞りない。



「そして俺のこの一個が明らかになった三個目だァ……」


 恐ろしく冷淡な視線のアクトは懐からカレー色の宝石を取り出してみせた。


「それはどこで手に入れたのですか?」

「…………!?」


 アクトは宝石をしまいこんで、(うつむ)きながらクックックと笑う。


「一時期、俺ァ……この世にいなかった」

「どういう事です?」

「あの世……」


 初めて口を利いたクリシュナにアクトは頷く。


「あァ……、俺ァさっきまで“修羅道”へ行ってたからなァ……」

 ド  ン!(衝撃発言擬音)


 驚きの「!!!?」の吹き出しが出る。


 六道とは仏教において衆生による業の結果で輪廻転生する六つの世界を差す。

 それは同時に存在していて表裏一体のように現世の世界と連結している。生きとし生けるものは死の度に、幾度なく六つの世界を巡って転生し続けているのが“六道輪廻”だ。

 修行の果てにたどり着いた至高の者が転生する、天道てんどう

 この現世。様々な四苦八苦と欲が入り乱れる、人間道にんげんどう

 絶えない怒りと苦しみのみで延々と争い続ける、修羅道しゅらどう

 虫や獣として弱肉強食を恐れ苦しむ、畜生道ちくしょうどう

 絶えぬ飢えと渇きに苦しむ、餓鬼道がきどう

 八大地獄で咎人を罰する、地獄道じごくどう


「はっはっはっは! これらは木星での環境の概念だったが、このインドでも同期しているォ」

「なんですって!?」

「仏教を世界に広めた、のは“この概念”を浸透させる為の前準備か……」


 クリシュナの明察で、エレーシャは「なっ!?」と仰天。


 元々、この地球には“六道輪廻”の概念はなかった。

 それを木星人がインドに移住してから広まっていったのだという。


「話が()れたなァ……。前提(ぜんてい)として言うぞ? 『六道石(りくドォせき)』はそのそれぞれ六つの世界に一個ずつ存在している。普通なら集められるはずはねェ……」

「つまり、集める為に……何をしようっていうのですか?」

「ナッセが大魔王を倒して、ヤツはそう確信したはずだァ……。“超新星世代(スーパールーキー)”が表立ってきた今こそ最盛期なのだとなァ!」

 ド  ン!(緊迫擬音)


 エレーシャもクリシュナも「!!!!」と吹き出しを出すほど驚愕。


「加えて『六道石(りくドォせき)』を得るにも安くねォ……代償が要るォ……」

「それを“超新星世代”を生け贄に、ダウートは、その『六道石(りくドォせき)』を六個揃えようというのですか!」


「何の為に『六道石(りくドォせき)』を集める?」


 クールに切り出したクリシュナに、アクトはニッと笑う。

 月が輝く夜空へ指差す。


六道輪廻(りくどうりんね)とオサラバして、未来永劫君臨できる“如来王(ごときおう)”になりたんだろうよ!」


 三度「!!!!!」と驚き表現の吹き出しが出る!

 そしてアクトは笑ったまま「そこでオメェらに協力を頼みてェ!」と申し出たぞ。





 用事を終えたアクトは、事前にチェックインしていたインドカレーホテルのエントランスホールに足を踏み入れた。

 深夜だけあって人気はなく、薄暗く静かだ。


「随分遅かったなぞ。どうしたんだ?」ド ン!


 オレは呆れながらアクトを待っていた。

 そんな意外な様子にアクトは「!!!」と少々驚いてくれたようだ。

(某漫画みたく「ド ン」と「!」が多くなってきたぞ)


「ちょいとトイレでなァ……」

「随分、長い連れション(・・・・・)だなぞ」

「お、気付いてたかァ?」


 オレは全てとまでは行かずとも、なんとなく察せる。

 アクトは非常に頭が回る。事前に工作を仕込む為に協力者を募る事がある。そうやって数々の難関をくぐり抜けてこれたのだ。

 前の並行世界(パラレルワールド)で長らく相棒をやってきたせいか、そういう癖などは手に取るように分かる。

 そしてオレやリョーコを巻き込むまいと置き去りした意向もな。


「世界征服だけでは済まないんだろ? もっと深刻な()()だからこそ……!」

「あァ……、だから言っとく」


 アクトは歩き続け、オレへすれ違う間際に一言。


「明日、何があっても(・・・・・・)逆上するんじゃねェぞ?」

「……分かったぞ」


 互い目を伏せて会話を終えた。


 この忠告がなければ、オレは重大なミスを犯してしまっていたのだろう。それを明日、嫌でも思い知る事になった。

 激情家であるオレの事だからこそ痛感させられるものだったぞ。




 そんなのも知らず、リョーコはヘソを出しながら薄暗い部屋で呑気に寝ていた。


「ぐがー! ぐがー!」ド ン!(強調擬音)

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