149話「闇の交錯⑧ 闇に魅入られた末路」
未だ実戦形式の授業は続いていた。
「ぬうううううううんッ!!!」
重装備アーマーよろしく筋肉もりもりに増強した灰色マッチョが大地を割りながら体当りしてくる!
それに対し、忍者を模したヤンデレ男が奇妙に笑いながら、烏天狗みたいな巨大な偶像化を生み出していく!
彼の両目の瞳に卍の紋様が!
観戦していた生徒は「あ、あれは!?」「卍虚邪輪眼!!」とリアクション。
なにか精神がイクと『邪輪眼』を開眼し、更に精神を病んでしまうと『卍虚邪輪眼』に進化するという設定。
……とか説明してたけど、間違いなく某忍者漫画のアレだろ!
「行くぞォォォ!! 一〇〇割中一〇〇割ィィィィィ!!!」
「本当の夢を叶うまでの間……、お前との闘いを愉しむさ!」ニイィ!
なんと巨大な偶像化による大剣を振り下ろして、灰色マッチョと強烈激突!!
天災レベルの破壊が仮想空間内を蹂躙し破壊し尽くしていく。
ズドオオオオオオオン!!
オレはスピリアと腕を組んだまま観戦だぞ。
その近くの壁でウギンは大の字でめり込んだまま気絶していた。
「一〇〇割って……、誤用してんぞ。ってか、ウギンみたいな小出し男が他にもいたとはな」
「初めて見るような発言が気にかかるが、無理もない。似たようなキャラで創作士をやってるヤツが多い。もちろん私と似たようなのが同じクラスだけでも十五人いる」
見渡せば、スピリアと似たような格好してるのがちらほら。
紋様が走った青いポンチョ、金髪ショート、何故か灯る赤い目、更に手には鎖を繋ぐ指輪をはめている。
「まんまトレジャーのクラ〇カと酷似する絶対ナントカと複数の能力持ちもいる。しかし重すぎて背負いきれず逆に弱体化してるがな」
「あっちにもナントカ賊団っぽいのいるな」
「何故か、漫画の設定に合わせて憎悪し合ってる。別に親とか殺されたワケでもないのだが」
ナントカ賊団とク〇ピカ集団が睨み合ってるのもシュールだぞ。
サス〇ェ集団が腕を組んでいるのもシュールだ。
同キャラ対戦とかできそう。
んああ!? 何故か全く仮想対戦に関係なさそうなマキ〇オーって白馬もいるのね……。
「あひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
何故か白いル〇ィっぽいのが狂ったように笑ってるぞ。
ってかまだ二〇〇九年だろっ! 先取りしすぎィ! 未来人か!?
ジャキガン学院はコスプレ大会でもやってんのかってくらい、好きなキャラになりきって創作士やってる奴らが多すぎんだろ……。
「うぎゃー!!」
対戦であっさり負ける〇ちはイ〇チ見たくなかったぞ……。
莫大な額を投じて整形してまでなりきっても、実力が伴わない超弱いフリー〇様、大魔王バ〇ン、拳王ラ〇ウとか萎えるぞ。
それでも原作に忠実な技を再現しようと無駄に切磋琢磨する人は後を絶たないらしいぞ。
スピリアのように原作再現を半分諦める人もいるけどな。
「万・界!!」
とある対戦で、黒装束を着た男が刀を掲げて叫ぶと派手なエフェクトを発生させ、凄そうな刀に変貌させた。
とてつもなく強そうな雰囲気でドドドドドドドと臨場音が響いてくる。
「更にギヤ2・オン!」ド ン!
黒装束の男は全身から煙を吹き上げて肌が赤くなっていく。ドルンドルン!
「おい、違う漫画同士の設定混ぜてるぞ」
「よくある事だ。それでたいてい失敗する創作士が多い」
「あ、力尽きた」
万界に多くのエネルギーを注いで武器をパワーアップさせた後に、欲張ってムリな身体能力強化を発動した結果、戦う前に力尽きた。
何がしたかったんだ……?
「最初はグー!!」
背の高い青年が拳を引っ込めてオーラを練る。
「ジャンケン・ガン!!」
銃の形に握った拳を突き出し、人差し指から光線を撃つ!
黒いノートを持ってる死神ル〇ークっぽい男が「うぎぇー!」と爆散。
特に孫〇空、ベジ〇タ、ナ〇ト、ル〇ィ、セー〇ーム〇ン、CCさ〇ら、とか人気のあるキャラのコスプレ多い。
髪型と服装だけのヤツや、本格的に整形までするヤツなど色々。
コスプレしてるだけの創作士が大半だが、徹底的に強さを極める猛者がちらほら見かける。
スピリアも短気なのがネックだが、スタメン級の実力者だしな。
更に個人的に酷いと思ったのが…………!
「『刻劉ジャオウ』対『城山ナッツ』 前へ!!」
オレの前に、オレを真似た創作士が出てきたぞ。
普通の身長で銀髪(染め疑惑アリ)でマフラー(両端が浮いていない)や衣服そっくり着込んでいる出っ歯のメガネ男。(顔も頑張って再現して欲しい)
なんと右手の刻印を輝かせて、光の剣を生み出した。
「四首領をも打ち勝ったオレだぞ!! 今の内に降参するがいいぞ!」
「って、オレの前でオレになりきるなぞぉぉぉおッ!! フォ────ルッ!!!」
ガツン!! と思いっきり刀で頭上を強打して地面にめり込ませた!
「ギハ……!」
オレは気が滅入ったまま通常空間へ戻ると、なんとナッセを真似た大男がいた。
「よくぞ! 偽物を倒したぞ!! しかしオレこそがホンモノだぞ!!」
「お前も偽物だろっ! 流星進撃────!! 三〇連星ッ!!!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
ここが現実空間だという事を忘れて、ついボコってしまったぞ。
それを見たソージは「ジャオウさんが一番ナッセを再現してますよねー」とケラケラ笑う。
ウミノは「……さてはナッセと憑依合体!」と相変わらず勘違い。死んでねぇ!
マジンガ「フハハッ!! 面白い! 面白い!」と上機嫌だ。
事情を知らないスピリアは怪訝に眉を潜める。
幸い回復装置があったので事なきを得た。普通だと全治二、三ヶ月の重傷らしいな。生きてて良かった。
おかげでジャオウは停学処分を食らった。
職員室でウラババ先生がしょんぼりした顔で「申し訳なかった」と頭を下げてくれたぞ。
あの騒動にいたたまれず、能力を使った張本人が声をかけてくれたのだ。
事情を聞くと、ジャオウ自身が「ヤマミが好きなので入れ替えてくれ」って依頼したかららしい。
「元に戻せねぇ?」
「ああ。できる。いざという時の為にな」
「じゃあ早速やってくれ。スピリアが気付く前にな」
「はいはい。済まなかったねぇ」
ジャオウから預かってもらったナッセの写真をビリッと破る。
媒介を破れば能力は強制解除されるらしい。
ブン、と視界が切り替わったらヤマミが腕を組んで見下ろしていたぞ。
気付けば黒いロープでグルグル巻きにされている上に、自分の影に黒い刃が突き立てられている。動けない。
「え? なんで? いきなり縛られて??」
「あ、ナッセ? 本物の……?」
「ああ。向こうでジャオウになってたぞ」
ヤマミは安堵のため息をついて、闇の呪縛を解いてくれた。
なんでもナッセが急に別人のようになってて、いきなり「同じ闇の眷属同士!! 交わろう!」と襲ってきたからふん縛ったとの事。
色々尋問してたけど、唐突にオレが戻ってきた……って感じ。
「向こうで大変だったわね」
「全くだぞ」
気を取り直して、二人で外食に出かけたぞ。
その一方で、ジャオウは恐怖に引きつっていた。
それもそのはずヤンデレが染み込んだ呪縛の鎖が、ベッド上に乗せたジャオウの手足を引っ張って束縛しているからだ。
停学処分を受けて謹慎中しているのを狙われて、スピリアに誘拐&監禁されたらしい。
ここはスピリアの部屋……。
艶かしいピンクで照らしていて、赤い目玉が入ったビンが多く並ぶ猟奇的なインテリア。
他にも色々ヤバそうなものが並んでいる。
なんとスピリアが据わった目で薄ら笑みを浮かべて、ジャオウに迫っているぞ。
「待て! オレは何も言ってない! ナッセだ! ナッセがやったんだ!!」
「とぼける気か? そうはさせない! 徹底的に私の愛を染みこませてやる!」
もはや逃れられない。
呪うような俯き加減の上目遣いで忍び寄るスピリアに、ジャオウも「ヒッ!」と怯えるしかない。
「愛を誓いあった闇の眷属として……、永遠なる闇夜の下で交わろう……」
ジャオウはこの件を失念してた事を後悔した。
実はスピリアこそが一番苦手な女性だった。
彼女はヤンデレなので重い愛を押し付けてきたり、執念めいた粘着で付き纏う傾向が強い。厄介この上にない。しかし逆にスピリアはジャオウに密かな恋心を抱いていた。ジャオウはそれに気付いていた。
普段なら難なくスピリアのアプローチを避けていたのだが、ナッセに入れ替わった事で付け入る隙を与えてしまった。
「おい! 止せッ!! オレは……ッ!!」
にじり寄るスピリアは衣服を脱いで、下着も剥がして、うっふん迫る。
「ふふ……、今宵は寝かせないからな……」
「……や、やめろ! やめろォ!! 落ち着いて話をs」
ちゅっぱちゅぷちゅぷぺろぺろぐっちゅっぐっちゅっずぱこずぱこ!
「ぎえー!」
愛に飢えたヤンデレの猛獣によって、ジャオウは存分に陵辱されたぞ。
こうして交錯した二人は一生一緒になりましたとさ。
めでたしめでたし!
~闇の交錯編・完~
今更紹介!
ジャキガン学院は日本で一番大きい創作士の名門校。
なんと四年制。約一六〇〇人もの生徒。
二年制である他の学院と合わせる為に、仮想対戦大会は二年のみ参加可能。
クラスは勇敢グリフォン、豪胆バハムート、再起フェニックス、狡猾リバイアサンの四つでそれぞれ百人くらい受け持つ。
ソージ&ウミノ、ウギンはグリフォン。ジャオウ、マジンガ、ヒンケールはバハムート。カイガンはフェニックス。スピリア、ナッツはリバイアサン。
ハリ〇タみたいと言わんといてw
入学してくる生徒は多いが、大抵は厳しさに耐え切れず逃げる人も少なくない。
本当に強くなる為と、コスプレを極める為と、結構分かれてる。
大半が東京コミケに参加している。
新年毎日連載はここまでですw




