141話「ナッセに弟子!? 鬼のトレーニング!」
帰宅していると、大人しそうな高校生が一人声をかけてきたようだった。
「あ、あの! 城路ナッセさん!! 僕を弟子にしてくださいっ!」
「え? 嫌だぞ」
「ええっ!?」
ヤマミと一緒に足を止めてきっぱり断ったぞ。
「僕、至高の領域まで強くなりたいと思って弟子になりたいと思ったんですが、何がいけないんですか!?」
語気を強めて食い下がってくる。
しかしオレは首を振って「すまんけど、アンタを弟子にしたくない」と言い放つ。ヤマミも冷めた目をしている。
「あなたも弱者排除主義者なんですね! なんで平然と断るんですかっ!」
「いや……だって……」
「差別するなよ! そういう差別があるから世界は良くならないんですっ!! 心が痛まないんですか??」
正論を語ってる風な学生に、オレは呆れる。
「ツノ生えてるだろ!」
学生はハッとして額の右ツノを手で覆う。
カルマホーン、それは省みない悪党に生えるツノ。伸びていくと共に体が変質していって魔界オンラインへ強制ログインしてしまう。
まさか高校生にも生えるとは思わなかったけど、この歳で悪人とは笑えない。ツノが悪党センサーになってるのが悲しい。
「また差別しやがって!! やろう、ぶっころしてやる!!」
隠してたナイフで突き殺そうとしてきたが、素手で刀身を掴んで握り潰した。
学生は絶句してたが「くそ……!」と睨んできた。
妖精王になって、生成した浄化の鈴を鳴らした。柔らかい音色が波紋となって周囲に光輪が広がっていった。
素っ頓狂になった学生の背中から黒いドロドロしたものが噴き出てきて虚空へ消えていく。それに伴ってツノもパラパラと虚空へ流れて消えていった。
あちこちで黒いの出てる人いたけど気にしないでおこう。
「ああっ!! すみませんすみません!! なんかとんでもない事してしまいましたっ!!」
学生は涙を潤ませて土下座して頭をペコペコ上下させてきた。
あまりの罪悪感で「ごめんなさああああああいいい!!」と、こっちが引くレベルで謝り倒してきたぞ。
「なんで弟子になろうと思ったんだよ?」
「あ、いえ……。ナッセさんに取り入って強くなってきたら用済みで殺して、この日本を牛耳ろうと考えていたんです! その変身と三大奥義さえ獲得できれば無敵っすからね!」
「妖精王の変身は種族特有だから真似できんぞ」
「そうっすよね……」
ってか、そんな悪い事考えていたのか……。
弟子になったフリして強くなってきたら師匠を殺して日本征服って、今でこそ笑えるけど酷いな。尊敬も何もねぇ……。
カルマホーン出てたからこれだけど、大人しそうな風貌がブラフとかやべぇ。
「実際、僕たちは鬼候補の“鬼惨党”の残党っすからね」
「鬼惨党?」
「……知ってるわ。世界各地で暗躍していた中華系の極悪組織よ。黒幕は夜しか活動できないけど不老不死の鬼って聞いている。党の名前もそこから来ているわ」
鬼??? 鬼惨?? どっかで聞いたようなキャラだなぞ?
鬼はともかく、元いた世界でもそういうのがあったなー。
確かに極悪だった。深夜連続殺人事件、リア充爆殺事件、コンクリート殺人事件もヤツらが関与してたらしい。それでも氷山の一角だけど。
今は魔界オンラインの強制ログインによって壊滅してる。
「あと海に嫌われているから永遠にカナヅチらしいわ」
「待って! 違う設定入ってない!?」
そこは藤の花だろ!
「僕みたいな残党はカルマホーンで苦しんでいるけど自業自得っすね。全滅するのも時間の問題だと思います」
「あ、ああ……」
目をキラキラしている学生さん、人格変わりすぎ。
「僕は碧座ナラカです。弟子にしてくれますか?」
「うん。いいよ」
「やったぁ!!」
あっさり弟子にした。それにしても既視感ある名前ェ……。
帰宅後にヤマミの特有空間でオレはナラカさんを鍛えてやったぞ。
ちなみに空間は陸上競技場バージョンだぞ。
「ひいいいいあああああああああ!!! やっぱ辞めます辞めます!!!」
「まだ残り八セットあるんだが……?」
体操服のオレとブルマ着用のヤマミは困惑してたぞ。
剣の素振り一〇〇〇回、一〇〇m短距離走り込み一〇〇〇回、バックステップ一〇〇〇回、反複横跳び一〇〇〇回、宙返り一〇〇〇回を一〇セットで行う。
今のオレたちはこれで一時間済ませている。速すぎって言われるけど遅い方だぞ。師匠クッキーは音を置き去りに五分で全部済ますし。
すげぇ衝撃波撒き散らすけど、本人は片手間だってさ。
筋肉痛は周囲からエネルギーを集める高レベル回復魔法で治すから、連続でトレーニング続けられる。メキメキ筋力上がるのが分かるぞ。
師匠は回復魔法得意だから、それでシゴかれたぞ。
休日は最初軽めに一〇〇kmのジョギングして体を温める事から始まる。
本当は師匠みたいに一〇〇〇〇kmやりてぇけど、日本狭いし、水魔法なしで海上走りきれるほど持久力ないしなぁ。
関係ないけど、師匠と一緒にいた時はもっと色んなトレーニングさせられてたなぁ。
さっきまでは肉体を鍛える系だが、魔法力を鍛える系もある。
トレーニング後は実戦形式で素手の格闘戦とチャンバラで日々研鑽。
「かるーくポンと強くしてもらうとかないんですかああああ!?」
「無いよ」
「ええええええ!? どっか噂で聞いてたのにいいい!?」
「実際はこれを毎日で数年の積み重ねだからなぁ。基礎能力が上がってれば、自然と威力値もグングン上がる」
「そんな~!」
「何もしねぇで強くなれたら誰だって苦労しないぞ。さ、続き続き」
オレが近づくと、涙目でブルブル震えだしたぞ。
「ひいいい!! 鬼っす! マジモンの鬼っす!! 鬼惨様も真っ青の鬼っす!」
ひいひい夜道へ逃げ帰るナラカさんの背中を見送って、気の毒そうに思ったぞ。
「どの道、音を上げて辞めてたんじゃないかしら?」
「それは言えてるかも」
苦笑いした。
と、このように実はこんな風に弟子入りがたまにあったりするのだ。
全員音を上げて辞めていくけど何故なんだろう……?




