129話「日本総理大臣の威力値を見よ!」
オレたちのマンションに、なんと日本総理大臣がやってきていた!!?
なんか黒塗りの高級車と白バイがめっちゃ来てる!
黒服のボディガードを共に、藍双内閣っつー首相がオレたちに用事があるとの事!?
「城路、夕夏、突然の来訪を許せ!」
厳かな顔で会釈。オレたちも緊張しながらも会釈し返す。
なんか誘われて食事会へ直行。高いレストランへ連れて行かれた。そこで藍双内閣と会食を始めた。
スゲー高そうな料理が運ばれて余計緊張する……。
「前に軍勧誘の入隊を断ったそうだが、やはり貴重な人材として惜しいと思い、考えを改めて欲しいと直々に訪問した」
「あ──……」
思い出した!
なんか、手紙みてーなの来てたっけな。何週か前に。
自衛隊廃止に伴って、新たに守衛創作士という新たな軍隊を創設したと書かれてて、入隊するか否かの返送用のハガキが同封されていた。
だがオレは「入隊しません」にチェックして投函したぞ。その件か。
「加速する『空想』に対して銃火器は通用しなくなっていく。故に自衛隊は無用。これからは創作士による自衛隊として守衛創作士というものを創設した。
そこにはお前たちの力が必要だ。なんとしてでも入隊して欲しいと再びの勧誘を許せ」
「はぁ……」
まさか首相と話すなんて、これまでの並行世界含め始めてだぞ。
しかし元いた世界とは事情が違ってるんだな。本来なら藍双内閣は九月頃に辞めて、亜歩山内閣が任命されるんだよな。短命内閣だったけど。
「そういう事は他でもありますか?」
ヤマミが物怖じせず質問する。生徒会長っぽいのは伊達じゃねーな。
「いや。お前たちだけだ」
「それでは理由をお聞かせできないでしょうか?」
「……君らは大変貴重な種族である妖精王。神の力が如しの破壊や攻撃を無効化する力を持つと聞いている。これまで度々の激戦を収めた武勇は聞き及んでいる。そこでお前たちが守衛創作士に入ってくれれば百人力、いや一騎当千。災害など有事の際に主力となろう」
あー、攻撃無効化で地震とか津波とか災害を溶かして大勢の人を助けるって事もできるっけ。
確かに入隊すれば多くの人を助ける事が可能だろう。
だが、その場合……。
「大変恐縮ですが断らせていただきます!」
ヤマミの毅然とした拒否に周囲がざわっとした。オレは思わず萎縮ッとする。
「それは何故かな?」
「こちらにも将来の夢があるからです」
「それはなんと?」
ああ、そっか。オレは異世界へ旅したいって夢があったんだっけ。
……つか、こんな個人的な夢の為に断っていいんだろうか? なんだか悪いな……。
「学院を卒業後、私たちは異世界へ冒険しに行くという夢です!」
ハッキリ首相相手に言っちゃったよ!
向こうさんピクッと眉をはねて不機嫌そうだ! やっべー!
「ほう、個人的な夢も結構だが、我々日本国民を救いたい気持ちはないのかね?」
「それを天秤にかけるのは些か大人気ないでしょう!」
「そうか」
怖気付かないヤマミすげー!
「では城路の意見を聞こうか! 夕夏だけの意見では決められんよ」
「あ……、はい」
オレはおずおずと頭を何度か下げる。
「夢を叶えるんでしょ? はっきり言ってやりなさい!」
ヤマミにボソッと言われて、葛藤が湧き上がる。
「ご、ゴメンなさい! 個人的な夢ですが、前々から叶えたいと思っていました!」
やはり譲られない! どんな嫌われようとも曲げられない!
どんな恐喝をされようとも、自分の夢を曲げてまでやる事じゃねぇ! 師匠だってそうだった!
「そうか……、君もか…………」
すると首相は立ち上がり、スーツを破裂させてムキムキに上半身の筋肉が膨れていった。
重厚なオーラが体表を流動していて、鍛え抜かれているのが分かる。
スラリと引き抜いたブッキーから鋭利な刀身を伸ばし、切っ先を突きつけてくる!
「そんな下らない夢の為に、日本国民などどうでもよいと?」
「下らな……」
逆鱗に触れられた気がした。
「悪いが、そんな見下すようなヤツの誘いには乗れねぇ!!」
「なに……!!?」
「オレはあんたたちの神様でもなんでもねぇ! 一人のただの人間だ!」
立ち上がって毅然と吠える! 後悔する事になるかもしれねーけど!
だがしかし、見下す言い方する人間にロクなのはいねぇ、ってのは元いた世界で嫌というほど知ってる!
見下したり、悪く言ったりするのが自然にできちまう人種も少なくない。
そんな人間はオレたちを便利な道具としか見なさないと思う。
「一人の人間……だと……? 妖精王ごときが?」
首相のオーラが憤怒に合わせて激しさを増し、その威圧で高級レストランを軋ませる。
更に黒服たちも半裸にムキムキになってオーラを噴き上げていく!
グゴゴゴゴゴ……!!
おいおい! 威力値が二万近くまで上昇したぞ! 首相含めなにげに強ぇえ!!
「この私、藍双内閣の威力値は五三〇〇〇だ。だがもちろんフルパワーでお前たちと戦うつもりはない。返答次第だがな……」
え? もうちっと桁足りなくねぇ? それでも強ぇけどさ……。
今度はヤマミが立ち上がる!
「はい! それでも人間として自分の気持ちに向き合って生きたいです!」
「ヤマミ……」
「ナッセ! でしょ?」
「はい!」
首相へ面と向き合ってキッパリ強い意志を誇示するように吐き出す!
「そうか……。我々国民を救う気などないと言う事かッ!?」
「いいえ!」
落胆して激怒しそうな首相に、ヤマミは首を振る。
「ナッセ! 師匠が言ったでしょ? チートに頼るのは人類の為にならないって!」
ああ、そういや言ってたな!
確かに師匠が失敗した通り、神の力に頼り切った人類は自らの成長を放棄してしまった。
なんでも神の力で叶えてもらえばいーや、って……。
「そっか。便利すぎる力に人類は依存しちゃダメなんだよな。きっとオレたちに縋りつくしかできなくなっちまう……」
だから師匠含め、神々は直接手出ししたりはしないのだ。特に権力が絡む政府は避けている。
人類が成長する為には、人類が成せる力だけで解決しなければならない。
「…………分かった。神の力に頼るのはいけない事だったな」
なんと藍双内閣はオーラを引っ込めて、頭を深々と下げてきた。
取り巻きの半裸黒服も動揺が走っている。
「私は目が曇っておったのだな。お主らの力に目がくらんでいた」
「藍双内閣さん……」
「確かにお前たちを軍に引き込めば外国勢からなにか言われかねんしな。特に四首領……。国民をその渦中に巻き込む訳にはいかん」
「悪ぃ……」
藍双内閣は柔らかい笑みを見せる。
「なぜ異世界を冒険したいのか理由を聞かせてよろしいかな?」
オレは未だ見ぬ未知の世界。そこには見た事もない国事情や風習、そして色んな種族。想像つかないような秘宝の数々。雄大で広大な自然風景……。
そこに夢を見て心を躍らずにいられない。目をキラキラさせずにいられない。
「そこにワクワクすっから、オレたちは広い世界へ飛び立ちたい!」
しばし間を置いて、恥ずかしくなって赤面。ペコペコとする。
「ふふふ、ははは、はっはっはっはっはっは!!」
なんか笑われたぞ……。
すると首相は晴れ晴れしててパチパチと拍手してきた。しかも半裸黒服たちも揃ってパチパチ……。
「なんかこう眩しいな……。そうやって純粋に夢を追いかけるのは……、私たちは随分忘れていたよ」
「藍双内閣さん……」
「こうして滅私奉公で政府をやっていると常に打算的に考えていかなければならない。利用できるものは利用してでも日本を守らねばならん、とな」
藍双内閣はペコリとお辞儀する。
「君たちの純粋な夢を壊してまで国を守らせるなど無粋だった。行け。お前たちは自由だ。異世界でもどこへでも自由にな!」
颯爽と首相は半裸のまま去っていってしまった。半裸黒服たちもそれに続く。
オレは「ありがとうございます」とお辞儀。
黒塗りの高級車と白バイはオーラを纏ってバシュバシュッと尾を引きながら(当たり前のよーに)空へ飛んでった。
そして一息ついて気が抜けた。ヤマミと顔を合わせる。はは、と笑う。
「そんじゃ……行くっか!」「ええ!」
自分の夢を叶える為に、オレたちは真っ直ぐに道を突き進むぞ!
高級レストランの人たちは「……食べないで行っちゃった」とポカン。




